海外駐在員よ!あなたから作ろう「ホンシャ」との追い風コミュニケーション【世界で勝つ戦略思考術】 

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前回は、海外拠点における大きな悩みの1つである、「日本本社との軋轢」が起きるメカニズムについて説明しました。今回は、それをどう解決すればよいのか、またどうすれば海外事業にとって本社(既存事業)の存在が向かい風ではなく追い風のようになるのか、解説したいと思います。

大きいものに最適化される組織のメカニズムに、海外拠点はどう対応したら良いのか――最も重要なのはコミュニケーションの回数を増やし、コミュニケーションのタイミングや内容を変えることです。この方法に目新しさはないのですが、しっかりと実行できている方は意外と少ないのではないでしょうか。物理的距離があってなかなか伝わりにくい、現場感がない人に分かってもらえない、面倒なことを本社から言われたくない、現地の仕事が忙しすぎて本社とコミュニケーションしている時間はない等の理由で、コミュニケーションを必要最低限にとどめている駐在員は多々いるでしょう。

その気持ちは痛いほど理解できますが、それでは何も変わらないもの事実です。海外の現場を経験した事がない人には、現場のことはわかりにくいのは当然です。だからこそ、海外事業を率いるリーダーはコミュニケーションをしっかりと取るという重要なミッションの優先順位を上げなければいけないのだと思います。

「関係の質」を上げることが「結果の質」の向上につながる

ダニエル・キム教授の提唱した「組織の成功循環モデル」をご存知でしょうか。


 

通常、組織では「結果」が問われます。したがって、「結果」やそれを生み出す「行動の質」だけに意識が向きがちです。「結果」が全ての組織活動の起点となると、組織の結果が悪くなった場合、組織の中での関係の質も悪くなり、組織や組織構成員の思考の質も悪くなる(例えば思考停止など)というバッドサイクルを生み出します。しかし、関係の質を向上させることを起点に考えると、関係の質の向上が組織や組織構成員の思考の質を上げ、行動の質にも良い影響を及ぼし、結果の質の向上にもつながるとこのモデルは説明しています。これに照らし合わせると、関係の質を向上させるコミュニケーションの活性化は、良い結果を生み出すために必要なこととなります。

駐在員によく知られた言葉に「OKY」というのがあります。「おまえが、ここにきて、やってみろ」という言葉で、駐在員が抱く「そこまでいうなら、あなたがここにきてやってみたらどうですか(たぶんできないですよ)」という気持ちを代弁していると言われています。しかし、よく考えてみると、このOKYとは的を得た言葉で、海外の現場に本社の人が来るという行動は、現場への理解が増し、関係の質の向上に役立つことでしょう。逆もしかりで、様々な困難を抱える駐在員にとっては、結果の質を上げるために本社とのコミュニケーションの量と質を上げ、関係の質を上げていくことは理にかなっています。

ちなみに本社から報告を求められる数値や内容に関してレポートしているのはコミュニケーションではありません。それは報告です。コミュニケーションは、あくまでも、相手にこういう状態になってもらいたいというゴールを描くことから始まります。そのビジョンのために、だれに、どのタイミングで、何をどういう順番で伝えていくかを計画して実行します。

また、コミュニケーションをとっても、1度伝えただけでは相手はすぐに忘れてしまうでしょう。たとえ全社戦略で重要戦略の中に海外事業拡大が掲げられていても、物理的距離が心理的距離にも反映されているのか、多くの社員にとって海外事業へのマインドシェアは意外と小さいものです。その前提に立つと、コミュニケーションは何度も何度も繰り返さないといけません。1回言ったから伝わっていると思うのは、「自分は」理解しているからで、海外駐在にとって海外事業に関する事項のマインドシェアが100%だからです。

さらに、グローバルリーダーとして相手を変えたいと思ったら、まずは自分から変わることも大事です。相手を変えることは困難ですが、自分の行動を変えることは可能だと思います。ダメな理由を考えるのではなくて、できる理由を考える。自分の行動を変えてみること、できることから始めることが、様々な困難を抱えるグローバルリーダーにとって最終的に結果の質を向上することにもつながるのではないでしょうか。

最後に、海外駐在での経験は、日本本社に戻った後にこそ役立てて欲しいと思っています。多くの海外駐在員が、日本本社に戻った後、日本本社での現状に落胆し退職をしてしまうという話もよく耳にします。海外駐在経験者だからこそ理解できる世界を、ぜひ日本本社に戻ってからこそ活かし、一緒に変革を導いていきましょう。

 

【参考リンク】
グロービス アジアパシフィック/グロービス タイランド
アジアで活躍する企業・ビジネスパーソンの支援をすべく、日本語・英語に対応した「グローバル研修」をご提供するとともに、日本で8万人以上の方に受講いただいている「グロービス・マネジメント・スクール」をシンガポールとバンコクで開講しています。

アジアでビジネスを創る―シンガポール通信(連載コラム)

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