優れたマネジャーは都合よく解釈する技を持っている

前回までに、マネジャーに必要な力として、3つの力(組織で成果を出す力、仕事への思いの力、その思い故に生じるギャップを埋める力)をご紹介しました。今回は、具体的にこの3つの力をどう取り込んでいけばよいのかについてお話しします。

例えば、何か新しいスキルを身につけなければならないような状況が生じた時に、何もしなくても大丈夫だろうと、何も努力をしない人と、そこでしっかりと自分と向き合って新しい能力を作りあげていこうとする人が出てきます。

極めて当たり前のことですが、能力を身につけている人の共通点は、今自分が置かれている状況がどういう状況なのか、自分が今までに培ってきたスキルでどこまで通用するのか、といったことを考えて、自己認識を深めている点です。世の中の変化に対して、自分の能力がどの程度通用するものなのかを認識しなければ、新しい能力を身につけようとは思いません。

自分の現状を知ることにより、ネガティブになる人もいます。例えば、「私はどうせ英語できないから」とか、最近はテクノロジーや人工知能が話題になっていますが、「私は文系でソフトも書けないし辛いな」などと言って、いじけてしまうわけです。

一方で優れたマネジャーの皆さんは、その状況を自分に都合良く解釈する技を持っています。今回インタビューをした方々の中に、自分は典型的な文系だったのに、ひょんなことから技術関係の部署のリーダーになった方がいました。若手メンバー達はほとんど理系で、バリバリのエンジニアばかりという状況でした。高校以来数学なんて見たこともなかったその方は、最初は話している言葉もわからず自分は役に立たないのではないかという葛藤が当然ありましたが、その中で自分が置かれた状況を深め、自己認識を深めて考察をしました。

すると、メンバーは自分の好きなエンジニアリングのことはよくわかっているけれど、マーケットが何を求めているのか考えたり、お客さんとコミュニケーションすることがないことに気付いたのです。そして、自分はこのチームのリーダーとして、お客さんとエンジニアの接点となり、お客さんから情報を集めてフィードバックし、よりよい技術をつくるためのハブになれるのではないかと考えました。これが先ほど述べた「都合よく解釈する」という技です。今から大の苦手の数学を無理矢理勉強するよりも、自分の強みを生かす方法があると都合の良い解釈をして、非常に重宝がられるリーダーになっていったのです。

優れたマネジャーの皆さんのインタビューでは、最終的にこの「都合の良い解釈」を「持論」にしていく人が多く見られました。「持論」とは何かというと、●●が自分の人生にとって非常に大事になるというような、自分なりのロジックを作りあげて、それを明確に言葉にするということです。自分の考えをしっかりとした言葉にすることで、その後の自分の思考の方法や方向性を作り上げていくのです。

私もグロービス経営大学院という大学院の説明会で、年に何十回もスピーチをしますが、何度も何度も話をしている間に、自分の学校の理念などが、自分の腹に落ちてくるという実感を強く持っています。

「3つのスキル」を獲得し、それをいい状況で持ち続けている人は、何か必要性に駆られたときに、しっかり自己認識を深めることができます。そして、3つの中のどの力でも良いのですが、自己認識を踏まえた上で自分にとって非常に都合の良い解釈をし、そしてその都合の良い解釈を持論と呼べるようなレベルの言葉にして、自分の心を強くしていく。そんなプロセスを意識してみてはいかがでしょうか。

(本記事は、FM FUKUOKAのラジオ番組「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容をGLOBIS知見録用に再構成したものです)

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