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ダイバーシティは目的か手段か結果か?

投稿日:2016/08/23更新日:2019/04/09

近年、ダイバーシティに関する議論が盛んです。そもそもダイバーシティは目的なのか手段なのか、それとも別の目的の結果なのか、そしてそれは誰にとっての話なのかといった点を再確認しながらこのテーマについて考えてみたいと思います。

まずは旗振り役となっている国の立場に立って考えてみましょう。すでに財政が逼迫している上に、少子高齢化が進む中、税収の確保や社会保障費の削減は避けては通れない重要課題です。そのためには極力働く人を増やすことが必要です。こう考えると、国にとっては国家財政を維持したり国力を維持する上で、働く人間を増すことが主目的であり、結果的にダイバーシティが生じると考えられそうです。

企業にとってはどうでしょうか?特に内需型の企業にとっては、人口減は市場の縮小にもつながるため、それまで労働市場に出てこなかった人々が収入を得て購買力が増えるのは望ましいことでしょう。それ以外の企業にとっても、若年労働者人口が先細っていく中で、それを補う人材が増えることは望ましいことと言えるでしょう。この観点からは、労働者の確保がまずは目的として存在しており、ダイバーシティはその結果と言えます。

しかし、それが単純に結果かといえばそうでもないのが難しい点です。たとえば、現在ものすごい勢いでグローバル化が進んでいますが、そうした中ではダイバーシティ、特に国籍や性別に関するダイバーシティを正しくマネジメントすることは、優秀な人材を獲得しビジネスで成果を生むための手段と言えます。ここでは多様性は手段でもあり、結果でもあります。

企業の競争力の観点に立てば、ダイバーシティは別の観点からも競争力につながる手段となります。いろいろな研究によって、偏ったものの見方の人間しかいない集団よりも、多様なものの見方のできる人間が集まった集団の方が、効果的に問題解決をしたり、イノベーティブなビジネスを生み出せる可能性が高いことが示されています。ここでも、ダイバーシティは手段でもあり、結果でもあると言えそうです。比重はやや手段寄りでしょうか。

働く人々にとってはどうでしょうか?特にこれまでなかなか活躍の機会に恵まれなかった女性などにとっては、多様性が増すことは望ましい状況であり、目的の意味合いが比較的強そうです。

こうして見てくると、ダイバーシティは、当事者が変われば、目的にも手段にもなりますし、また結果として生じるものにもなります。こうした位置づけの差異が、さまざまなすれ違いを生んでいる可能性は否定できません。

もう一つ話をややこしくする要素に、企業の競争力を増すダイバーシティの質の違いがあります。企業の競争力を増すダイバーシティは、本質的には視点やスキルの多様性です。これは必ずしも性別などの属性の多様性とは一致しません。

たとえば、管理職に圧倒的に男性が多い職場に女性管理職が来たとしても、その視点やスキルが男性的なものであれば、実質的な競争力強化にはあまりつながらないということです。真に望ましいのは、企業経営の在り方や社会構造そのものが、それぞれの属性の「らしさ」を出しながら活躍できる状態となることでしょう。

国にとっては、労働力や税収が増えるということも重要ですが、それ以上に、それぞれの属性の人々がイキイキと働き、高い生産性を実現しながら、生活の満足度も高めている。そして企業にとっては、多様性がまさに武器になって競争力が増す状況が生まれている。個人、特にそれまでマイノリティだった人々も、肩ひじ張らずに、また過度な自己変革を強いなくても組織の中で活躍できる状況になっている――理想論ではありますが、こうした状況が実現できる国や企業は強くなるはずです。

翻って現在の状況を見ると、たとえば女性の管理職比率30%といった目標に代表されるように、まずは外形を満たすところから入っている感があります。もちろん、形から入ることが一定の成果をもたらすことはありますが、真の目的は何かということや、そこから生じる結果がどの程度望ましいものであるかということの議論が不十分なまま物事が進んでいる感があります。

また、視座を高め、ダイバーシティマネジメントというテーマを越えた、新時代の企業経営の在り方を模索することも必要でしょう。ダイバーシティマネジメント先進国でさえ、その鍵となるインクルージョン(多様性の包含などの意味)にまで成功している企業は一部とされます。また、属性に紐付くバイアスは国の文化や歴史を反映するものであるため、そう簡単には変わりません。

個人的には、マジョリティと言われる人間の意識改革こそが最大の鍵になると思います。そして新時代の企業経営の在り方を模索した結果、これまでのMBA教育そのものが否定されてしまう可能性もあると感じます。それを乗り越えるには長い努力と年月が必要でしょう。

いずれにせよ、これは小手先の施策で解決する問題ではありません。まさに社会変革を伴う可能性が高いものです。だからこそ、さまざまな立場の人間が、それぞれの立場から考え抜き、まさにダイバーシティを活用してビジョンを打ち出し筋道をつけることが必要なのではないでしょうか。
 

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