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虚業とは?虚業がぼろ儲けする構造を理解していますか?

投稿日:2016/07/26更新日:2021/08/14

長期的視点に立った「投資」で儲けるのは良いが、短期的視点の「投機」マネーが社会を混乱させながら儲けるのはいかがなものか――日本人の多くはそう思っているのではないでしょうか。しかしそういう善良な存在が、かえってマネーゲームで儲かる社会作りに貢献してしまっているのではないか。これが今回取り上げるトピックです。

1990年代後半からリーマンショックの2008年までの日本市場では、「外資系投資銀行」「投資ファンド」が存在感を増し、「M&A」「デリバティブ」「証券化」といった手法を駆使して大儲けしていました。その後、リーマンショックで大損をしたかもしれませんが、ちゃっかり勝ち逃げした投資家も多いことでしょう。額に汗して働く者の生活が苦しくなる中で「虚業の金融のプロ」がぼろ儲けする構図は、まさに「価値創造と金儲けがズレている」典型事例です。彼らの儲けの構造を理解し、問題の本質がどこにあるのか見ていきましょう。

デフレなのにバブルな市場環境

この時期の日本市場は、1990年のバブル崩壊からの「失われた10年、20年」です。銀行は不良債権処理に追われ、不動産市況も長く低迷、明るい未来が描きにくい空気が世の中を覆っていました。同時に、景気を支えるために金融緩和政策がとられ、カネを借りようと思えば低金利で借りられる環境でもありました。つまり、不動産価格も株価もパッとしない一方でカネは余っていたのです。

いつの世も、どこの国でも、カネ余りはバブルを産む温床です。低金利環境下で、少しでも高い運用利回りを求めて余ったカネが右往左往すると、「ネット株」「グローバルソブリン債」「ワンルームマンション投資」といったブームが起こりバブルになって弾けます。

ファイナンス知識を持ち適正価格のモノサシを持つ人の目には、こういう市場はサヤ取りで大儲けするチャンスです。株や不動産を安値で放置する人がいる一方で、老後資産の蓄えを持ったカネ余り投資家がたくさんいる――リスクを嫌い皆が同じ方向に動く習性をもった「善良なる庶民」的日本市場は、「カモがねぎをしょって泳ぎ回る池」のように見えたことでしょう。

価格ギャップに目をつける賢い投資家のアクション

彼らは運用難で困っている人のカネを預かったりして「ファンド」を作り、低金利で銀行から借金をして「レバレッジ」をかけ、例えば次の2つの方法でさや抜きして儲けるのです。

1.  敵対的TOBによるM&A
集めた資金で割安に放置されている上場会社の株を買い集めM&Aを仕掛けます。会社を悪者から守る「ホワイト・ナイト(白馬の騎士)」が現れれば、そこに買い集めた株をプレミアム付価格で買い取ってもらう、そうでなければ会社が蓄積したキャッシュを配当や自社株買いで株主還元することを求めます。村上ファンドやスティール・パートナーズが有名です。

2.  バルク買いと証券化
銀行などから不良債権や担保処分で競売にかかるような不動産を底値でまとめ(バルク)買いします。1件1件を審査・精査する手間をかけずに買い漁るので玉石混淆になるのですが、それをリパッケージして「REITという新しい投資信託商品です」「証券化商品でダブルAの格付がついています」と売り出せば、運用利回りの欲しいカネ余り投資家がまた食いつくわけです。外資系投資銀行の多くはこのような商品を組成して手数料や差益で稼ぎました。

高度な金融工学の知識や剛腕ぶりが取り沙汰されがちですが、彼らがやっていることは「安く仕入れて高く売る」という商売の基本そのままです。そこに詐欺やインサイダー取引がからめばもちろん犯罪ですが、ほとんどのケースは、安く売った人も高く買った人も「自己責任」で判断した結果です。安く売って高く買う側に回ってしまう人達は誰なのでしょうか。それが日本にありがちな善良かつ安定・安全志向で付和雷同的な投資家だとしたら、社会としてどう対応すればよいのでしょうか。「マネーゲームで金儲けするのは邪道だ」と言っている人が、「邪道」の手口をちゃんと理解してカモにならないようにするしかない、これが私の長年の問題意識です。

【参考】

バリュエーションの教科書

〈グロービス経営大学院の講座「ファイナンス基礎」では、財務諸表を通じ、企業の現状や戦略を読み解く力を身に着けることを目標としています〉

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