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お金に振り回されないためにファイナンスを学ぼう

投稿日:2016/06/09更新日:2019/04/09

「企業価値・M&Aの本質と実務」――これは最近出版した拙著『バリュエーションの教科書』(東洋経済新報社)につけた副題です。「自分の業務に直接関係しないし、敷居が高そうだな」とスルーする人が多いかもしれません。

他方、大切なのはわかるが理解して使いこなせるようになかなかなれない、その道の「専門家」の言っていることが腹落ちしないのだがうまく言い返せない、社内で案件を通す場面やグローバルな交渉の場で相手に言い負かされるといったように危機感を持っている人も多いのではないでしょうか。

そこで、本コラムではアカウンティングやファイナンスが意外に身近なトピックで、世の中を良くするために役立ち、頼もしい味方になることを、新刊本の内容と最新の時事トピックを交えながらお伝えしていきます。

第1回は、ファイナンスと付き合うにあたり私が重要だと考える2つの視点を取り上げます。

1.  ファイナンスとは、お金に振り回されないための座標軸である

「俺は親父のような生き方はまっぴら御免です。お金に振り回されて、もみくちゃになって。お金は使うものですよ、お金に使われるようになったら人間終わりでしょ」

これはNHKドラマ「ハゲタカ」第一話で経営破綻した旅館のひとり息子・西野治が、ハゲタカファンドの鷲津鷹彦に向かってぶつけたセリフです。あなたは、お金(数字)に振り回されていませんか。

「投資銀行の世界で成功する秘訣は?」という問いに対して「正しい時期に正しい場所にいること」と答えた同僚がいました。その通り、市場は多くの場合上にも下にも過剰反応します。その波をサーフィンの如く乗りこなす者は成功し、ブームに遅れて乗ったり「あつものに懲りてなますを吹く」者は損をします。

ファイナンスの知識はその波の状況を判断する「物差し」の役割を果たすはずです。市場が過熱し「バブル」状態にあるのか、逆に皆が「リスク回避的」になって株式市場から資金を引き揚げる結果、成長性ある健全経営会社の株価までが引きずられて下がりすぎていないか。それを判断するには「座標軸」が必要です。ファイナンスとは、お金に振り回されないための座標軸なのです。

2. ファイナンスとは、経営者と投資家のコミュニケーションツールである

2つめは、その座標軸を手に入れ、共有するための心構えについてです。

「カネが無ければ始まらない、それが貴方の言う資本の論理でしょ」

これもハゲタカドラマのセリフです。

社会に価値を生む事業を立ち上げるために起業家精神、高い志やリーダーシップが大切なのはわかりますが、資金を集める力なしに綺麗事を言っても始まりません。「やりたいことはあるがカネがない起業家・経営者」はたくさんいます。「カネはあるがやりたいことが見つからない投資家」もたくさんいます。両者のコミュニケーションのためのツールがファイナンスであるとも言えます。数字という世界共通言語を使って、経営者が投資家と建設的に議論するための方法を学ぶことが、ファイナンスを学ぶ意味なのです。

アカウンティングやファイナンスは、それ専門の仕事をしている人の領域ではありません。英語や論理思考力と同様に、ビジネスパーソンの普遍的スキルとして位置づければ、ファイナンスに対するハードルが少しは下がるのではないかと思います。ブームやパニックに振り回されがちな市場をより建設的な場にするための第一歩だと私は考えています。
 

  • 森生 明

    グロービス経営大学院教員

    ハーバード大学ロースクールLL.M.プログラム修了(学位:Master of Laws)/1987年~1994年にかけ日本興業銀行、ゴールドマン・サックスにてM&Aアドバイザー業務に従事。その後米国上場メーカーのアジア事業開発担当、日本企業の経営企画・IR担当を経て独立。著書に『MBAバリュエーション』(日経BP)、『会社の値段』(ちくま新書)、『バリュエーションの教科書』(東洋経済新報社)がある。NHKドラマおよび映画「ハゲタカ」の監修を担当。

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