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結果とプロセス、どちらが大事?

投稿日:2016/05/19更新日:2019/04/09

働いていくうえで、「結果を出すこと」と「プロセスをつくること」のどちらが大事か――これは難しい問題です。

ビジネスの世界で結果を出すことは利益獲得に直結しており、事業と組織を拡大させるための源になります。また、結果は人を自信づけ、歓喜をもたらしてくれます。成果主義のもとでは報酬的にも満足度が増します。しかし、結果への固執は人を惑わしたり陥れたりもします。

その一方、好ましい結果を出すために何が不可欠かといえば、それはプロセスをきちんとつくることです。プロセスをいい加減にして、たまたまよい結果が出たとしても、それはまぐれであって再現性・持続性がありません。しかし、だからといって、プロセスづくりだけに執着している人はどこかに惰性や逃避があるかもしれません。結果が出なければ事業・会社は存続できないことを脇に置いている可能性もあります。

一般社員は「プロセス」重視意識、管理職は「結果重視」意識

さて、私が行っている企業内研修のサービスの中で、「キャリアMQ」という個々の従業員の働くマインドや価値観を診断するツールがあります。そこに次のような問いがあります。さて、AとBにつき、あなたはどちらの考え方に近いでしょうか?

A: 多少の無理や違和感があっても、組織と合意して決めた業務目標をクリアするところに働き手の成長がある

B: 仕事はやりがいや納得感を最優先に設計されれば、結果は後から付いてくるものだ。無理な目標設定はかえって働き手のモチベーションを下げてしまう

Aは「形ある成果を出すこと」を上位に考え(=結果重視)、Bは「きちんとプロセス(過程)を整えること」を上位に考えるもの(=プロセス重視)といえます。さて、このAとBの回答割合はどうなっているのか。私の顧客企業の範囲に限りますが集計してみました。

図のとおり、一般社員では人数のうえで、ほぼ7割(68%)が「プロセス重視」です。中間管理職においては意識が逆転し、「結果重視」(52%)に振れています。これは経営側に寄っていけばいくほど、「結果=利益」を出さなければ、会社が回っていかないことの責任意識が強くなるためと考えられます。あるいは、若い者をヘタに甘やかしてはだめだ、試練をもって成長させなければならない、といった年配者独自の考え方があるのかもしれません。

しかし結果重視とはいえ、中間管理職のなかで「プロセス重視」とする人数の割合は48%であり、半数に近いとも見ることができます。これはおそらく、彼らもまた組織のなかでは上司を持つ身であり、「結果を出せ」のプレッシャー下にある身だからかもしれません。

結果はウソをつくときがあるが、プロセスはウソをつかない

結果が大事か、プロセスが大事か。このあたり、プロスポーツの世界で生き抜くイチロー選手の語録には深く噛みしめるべき内容があるので、いくつか紹介しましょう。

「結果とプロセスは優劣つけられるものではない。結果が大事というのはこの世界で無視してはいけない。野球を続けるのに必要だから。プロセスが必要なのは野球選手としてではなく、人間をつくるうえで必要と思う」。

これは一般のサラリーパーソンについてもまったく同様です。会社員であれば組織から与えられた事業目標、業務目標があり、それを成果として個々が達成することで、会社が存続でき、給料ももらうことができます。また、自分の能力よりも少し上の目標を立て、それを達成することで自分は成長できます。存続・成長のために私たちは結果を出さねばなりません。

ただ、そうした結果を出すことが絶対化すると、周囲との調和を図らない働き方や不正な手段を用いた達成方法を生み出す温床となります。また、働く側にとっては、それが続くと、早晩、消耗してしまいます。そのように結果至上主義は多くの問題をはらんでいます。さらに、イチロー選手はこうも言います。

「負けには理由がありますからね。たまたま勝つことはあっても、たまたま負けることはない」。

「本当の力が備わっていないと思われる状況で何かを成し遂げたときの気持ちと、しっかり力を蓄えて結果を出したときの気持ちは違う」。

これはつまり、結果が出た(=勝った・記録を残した)からといって有頂天になるな、結果はウソを言うときがあるぞ、というイチロー選手独自の自戒の言葉です。

プロセスが準備不足であったり、多少甘かったりしたときでも、何かしら結果が出てしまうときがよくあります。そうしたときの結果は要注意です。そこで天狗になってしまうと、次に思わぬ落とし穴にはまってしまうことが往々にして起こります。結果におごることなく、足らなかったプロセス、甘かったプロセスを見直し、次に向け気を引き締めてスタートすることが必要です。つまり、「結果はウソをつくときがあるが、プロセスはウソをつかない」ということです。

こう考えてくると、「結果」をめぐる問題点が2つ見えてきました。1つは、「結果を出せ!」とか「結果を出さなくてはならない」といった強要や自縛がはたらくと、結果主義はマイナスの面が強く出ること。もう1つは、たまたま「結果が出てしまう」ことで、本人に慢心が起こること。この点に気をつければ、「結果を出すこと」は働くうえで重要な意識になるでしょう。むしろ、結果を求めないプロセスは、惰性や無責任を生みます。また、結果が出ることによってこそ、それまでのプロセスが真に報われることにもなります。

要は、結果とプロセスはクルマの両輪であって、どちらを欠いてもうまく前に進むことはできません。結果を出そうとすることは前輪(努力する方向感を出す)となり、プロセスは後輪(日々進んでいく駆動力)となる。

補足:豊かな木の実を得るには何が必要か

私は管理職向けの研修で次のようなことも話に加えます。

(部下に成果を求める管理職に対し)成果とはその字のごとく「果(木の実)を結ぶこと」である。果を得るには、木の根・幹・葉が丈夫であってこそ。

根・幹・葉に必要なものは、太陽であり、水であり、土である。あなたのチームにとって、太陽とは何だろう?水とは?土とは?……。その太陽、水、土を整え、強化するのは管理職の仕事。太陽、水、土というプロセスを豊かに整えれば、木の実は無理なく生る。

 

  • 村山 昇

    キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

    人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)をはじめ、管理職研修、キャリア開発研修、思考技術研修などの分野で企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。 GCC(グロービス・キャリア・クラブ)主催セミナーにて登壇も多数。 1986年慶應義塾大学・経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。94-95年イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。 著書に、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『個と組織を強くする部課長の対話力』『いい仕事ができる人の考え方』『働き方の哲学』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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