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顧客維持と収益性向上の関係: 利益が増える4つの理由

投稿日:2016/03/19更新日:2021/10/23

『グロービスMBAマーケティング』の第12章から「顧客維持と収益性向上の関係」を紹介します。

「顧客維持は最も効率のいいマーケティングである」ということが言われて久しいものがあります。実際に、顧客維持率を5%改善すると利益が25%改善するという経験則もあります(5-25の法則)。ただし、そうしたことが生じるメカニズムまで理解し、説明できる人は必ずしも多くありません。メカニズムには大きく分けて4つの要素が関わっており、それを理解した上で効率的に顧客をつなぎとめる努力をすることが必要です。また、往々にして顧客維持にのみ目がいく経営者もいますが、これは好ましいことではありません。将来の利益をもたらす新規顧客の開拓にも一定のエネルギーを割くことが、長い目で見てバランス良く、大きな収益性を実現することを忘れてはいけません。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

顧客維持と収益性向上の関係

アメリカの経営コンサルタントのフレデリック・ライクヘルドとハーバード・ビジネススクール教授のW・アール・サッサーJr.の研究によると、既存顧客を維持することが収益性の向上につながるのは、次の要素が関係してくるからだという。1) 購買・残高増利益、2) 営業費削減利益、3) 紹介利益、4) 価格プレミアム利益、5) 基礎利益(通常の営業活動から得られる利益)である。

ここでは、1~4の要素について簡単に紹介しよう。

1) 購買・残高増利益

その製品の価値に満足している顧客は、1年目よりは2年目、そして2年目よりは3年目というように利用の度合いが増す傾向がある。購入頻度が増えたり、関連製品も購入するようになるからだ。業種によって異なるが、5年目には1年目の2倍以上の購入額になるとの調査結果もある。実際、ある会員制の通信販売では、入会5年目の顧客の年間購入額は入会1年目の顧客に比較して80%ほど多かったという。

2) 営業費削減利益

既存顧客の維持にかかる営業コストは、認知してもらうところから始める新規顧客獲得のコストに比べて少ない。顧客はすでに自社の製品を購買しているので、2度目の購買に対する心理的ハードルは低くなる。

サービス業の場合、1回目のサービス提供の場で別のサービスの紹介をすることもできる。経営コンサルティング業務は、その典型例である。顧客は、決して安くないコンサルティング・フィーを未知の会社に支払うことに不安を持つ。また、コンサルティング会社のほうも、当初は顧客のどこに解決すべき問題があるのかわからず、試行錯誤しなければならない。しかし2回目以降は、両者の間に実績に基づく信頼関係があるので、顧客はそれほど抵抗感なくフィーを支払う。一方、コンサルティング会社も顧客がよくわかっているため、新たな調査・インタビューなどの営業努力が大幅に軽減される。

3) 紹介利益

顧客が自発的に周囲の人にその製品の宣伝や推奨をする、いわゆるクチコミによる紹介のことである。クチコミの効果については、どこまでが純粋なクチコミ効果で、どこからが通常のマーケティング活動の効果なのかを判別することが難しいため、正確には定量化できない。しかし、製品が高価になるにつれ、あるいは購買者にとっての重要度が増すにつれ、クチコミの効果は大きくなると言われている。

最近は特に、インターネットや電子メールの普及で個人が情報を発信しやすくなっていることから、クチコミが思いがけない効果をもたらすこともある。そのため、オピニオンリーダーを取り込んだり、クチコミを誘発しやすい仕掛けをつくるなどして、クチコミを積極的に活用しようとするバズ・マーケティング(バズは人々が噂話でざわめいている様子)などの手法が注目されている。

4) 価格プレミアム利益

先の3つの利益に比べてインパクトは小さいものの、価格プレミアムの効果も無視できない。これは、自社のサービスを長く利用し、慣れ親しんだ顧客に対しては高価格を提示できるというものである。特定の売り手と良好な関係を築いた顧客は、よほどのことがないかぎり、競合企業にスイッチして、それまでの学習関係をあえで反故にするというリスクを冒そうとはしない。また、そうした強い信頼関係ができてしまえば顧客は新規顧客がなかなか利用しないような売り手の製品ラインの中で比較的高価なものに対しても興味を抱くようになる。

次回は、『グロービスMBAマーケティング』から「価値を生み出す『ソリューション』」を紹介します。

https://globis.jp/article/4131

◆グロービス出版

 

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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