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「決意」が人をもっとも元気にする

投稿日:2015/10/29更新日:2019/04/09

なにかとストレスが重くのしかかる昨今の仕事生活にあって、私たちはよく、「癒されたい」と願います。そして「癒し」をうたう商品・サービスも花盛りです。そうした癒しによって、多少の英気を養い、また明日からの仕事に向かいます。

しかし、考えてみたいのは、「癒し」は病気や傷を治すことであり、あくまでマイナスの状態をゼロに戻す手当てでしかないことです。癒しに“やまいだれ”が付く字であるのはそういうことです。いくら「癒し」のものにお金をかけても、プラスゾーンで働き続けるほどのエネルギーは得られません。通常のストレス負荷にさらされれば、すぐまた、マイナスゾーンで消耗戦になります。

もちろん、疲れた心身に癒しは必要です。私自身もおいしい料理やお酒の時間、小旅行、趣味の活動、家族との団らんに助けられています。けれど中長期にわたって、本当に元気になっていくためになにが必要か、そこを考えなければ、いつまでも「ストレス負荷→癒し・憂さ晴らし→ストレス負荷」のサイクルをマイナスゾーンでぐるぐる回る生活を続けることになってしまう。

では、本当に元気になるために必要なものとはなんでしょう───それは「決意」することです。意味を見つけ、そこに肚(はら)を決めて行動することが、人が一番元気になることなのです。

「人間にとって第一に必要なものは平衡あるいは生物学でいう『ホメオスタシス』、つまり緊張のない状態であるという仮定は、精神衛生上の誤った、危険な考え方だと思います。人間が本当に必要としているものは緊張のない状態ではなく、彼にふさわしい目標のために努力し苦闘することなのです」(『意味による癒し-ロゴセラピー入門-』より)

こう主張するのは、オーストリア・ウィーンの精神科医、ヴィクトール・フランクルです。フランクルは、私も研修プログラムの中で頻繁に引用する人物で、「生きる意味」「意味が人間に与える力」を語らせれば、彼以上に説得力を持つ人はいません。なぜなら彼は、第二次世界大戦下、あのアウシュヴィッツの強制収容所から奇跡的に生還したユダヤ人学者だからです。あの絶望するしかない状況の中で、フランクルは生きる意味を自分に問いかけ、周囲にも問いかけ、生き続ける闘いを貫きました。

フランクルがたどり着いた結論は、人間の幸福はなにも緊張がない穏やかな状態に身を浸すことではなく、意味に向かって奮闘している状態だということです。文豪であり一国の宰相を務めたゲーテも次のように書き残しています。

「われわれが不幸または自分の誤りによって陥る心の悩みを、知性は全く癒すことができない。理性もほとんどできない。これにひきかえ、固い決意の活動は一切を癒すことができる」(『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』より)

夢や志、使命、目的といった意味的なものに向かって、それを成し遂げようと「決意する」とき、人は元気になる。元気とは、その字のごとく、その人の元のところから湧き起こってくる気です。移ろいやすい感情的な高揚とは違います。その人が本来の自分になるための図太いエネルギーです。

たしかに、肚を決めて行動するにもストレス負荷は生じます。しかし、それは「よいストレス」です。学術的には、ストレスには2種類あり、なにか建設的な目的に向かうときのストレスは「ユーストレス(eustress)=よいストレス」であり、やらされ感のあるときのストレスは「ディストレス(distress)=わるいストレス」となります。

また、行動を仕掛ければ、その分、失敗や挫折もあるでしょう。けれど、それは不健全な落ち込みではありません。自分を真に蘇生させる価値あるプロセスになります。苦しみのどん底にあっても、決意をした人間は「誓い」を立て、明日を望み、強く踏ん張れるからです。

「決意のある人生」と「決意のない人生」を図で表してみました。

「決意のある人生/ない人生」 のメンタル・ダイナミズム

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© Noboru Murayama | Career Portrait Consulting

「決意のない人生」(左側)は、主に疲弊ゾーンでこぢんまりと回り、たまに元気ゾーンに上がるだけです。他方、「決意のある人生」(右側)は、元気ゾーンの住人となり躍動して回っていくこととなります。ときに、ネガティブゾーンに入っていきますが、それも人生の醍醐味の一つとして、乗りきっていけるほどの力強さを持つでしょう。もちろんその力は意味から湧かせています。

作家の村上龍さんは『無趣味のすすめ』のなかで次のように書きます。───「趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。心を震わせ、精神をエクスパンドするような、失望も歓喜も興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクを伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している」。

こう書いてくると、仕事に冷めている人にとっては、「こういうのはどうせ“働き好き人間”の論理だから」となるかもしれません。が、そうではありません。もしあなたが、いまの仕事に興味も持てず、疲れるだけの毎日を送っているとすれば、問題はたまたまその仕事内容とか仕事との関わり方とかにあるだけです。それとはまったく別次元の問題として次の真実が厳然とあることに気を留めてください。つまり、この世にはあなたでしかできない仕事があり、そこに決意をして取り組めば必ずや無尽蔵のエネルギーを得て、真に元気になるという可能性がきちんと100%確保されていることです。

ポジティブゾーンで大きな喜びも大きな苦しみも抱え込んでダイナミックに生きるか。それとも、ネガティブゾーンでこぢんまり生きるか。それは、ひとえに「決意するか/決意しないか」による。そのとき、自分が決意する先、決意する内容や方法を人にたずねてはなりません。それを探そうともがくこと自体が、すでに決意することの一部になっていて、それこそが自分の生き様の表明だからです。

  • 村山 昇

    キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

    人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)をはじめ、管理職研修、キャリア開発研修、思考技術研修などの分野で企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。 GCC(グロービス・キャリア・クラブ)主催セミナーにて登壇も多数。 1986年慶應義塾大学・経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。94-95年イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。 著書に、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『個と組織を強くする部課長の対話力』『いい仕事ができる人の考え方』『働き方の哲学』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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