Q: 感情的にカーッとなり、後で後悔することが多々あります。どうしたらよいでしょうか?
ビジネスパーソンなら誰でも、突発的に感情がこみ上げてきてしまう経験をお持ちでしょう。そのようなときには、すかさず、おだやかな呼吸を3分間行うと良いでしょう。難しいことはなにもありませんが、少しだけコツがあります。
【手順】
1. ゆっくりと息を吸い、そしてゆっくりと吐きます
2. 鼻孔に触れる息の流れを感じます
3. いろんな感情や考えが頭をよぎることでしょう。怒っている自分を感じたら、「ああ、自分は怒ってるなぁ」と心の中でつぶやきます
4. そして、また鼻孔を通る空気を感じます。この繰り返し
さまざまな感情や考えが頭をよぎるのは良くないと思われるかもしれませんが、そのようなことはありませんのでご心配なく。また、深呼吸のように2,3回でやめないのがコツです。3分ほどおだやかな呼吸をしていますと、びっくりするくらい心がおだやかになっている自分に気づくでしょう。
ビジネスに役立つワンポイント
おだやかな呼吸はなぜ効果があるのでしょう。
交感神経と副交感神経という2つの自律神経について、聞いたことのある方もいるでしょう。交感神経が働いてくると興奮し、副交感神経が働いてくるとリラックスできます。おだやかな呼吸は、この副交感神経に働きかけ、興奮をしずめてくれるのです。
ところが、忙しいビジネスパーソンであればあるほど、残念ながらおだやかな呼吸をしていません。ビジネスでは、おだやかな呼吸の真逆が求められるからです。
マサチューセッツ大学医学大学院のジョン・カバット・ジン教授によれば、おだやかな呼吸でやっていることはといいますと、(1)今、この瞬間に注意を向け、(2)判断をしないことです。今、この瞬間の息の流れに注意を向け、たとえネガティブな感情を感じても、「ああ、今怒っている自分がいるなぁ」と、どこかのんきに構えて、それが良いとか、悪いとか判断はしません。これがリラクゼーションに効くのです。
一方で、ビジネスでは、過去と未来について思いを巡らすことは多いですが、「今、この瞬間」に意識を向けることが少ないのです。例を挙げますと、ビジネスでは、過去の分析を行いますし、未来の計画はしますが、「今」がありません。過去をいつも後悔し、未来に不安を感じ、「今」ここに意識がない方も多いかもしれません。
判断をしないことについてはどうでしょう。すでにお察しのとおり、ビジネスパーソンは、いつも判断に迫られていますね。「良いのか、悪いのか」「いいのか、悪いのか」「オプションAでいくのか、オプションBでいくのか」「データから何がいえるのか」「お前の意見はなんだ」。こんな問いを日々突きつけられているわけです。
なにごともバランスです。もちろん、過去も未来も大事ですが、「今、この瞬間」も同じように大事です。判断することはとても重要ですが、判断しないときも、それと同じくらい必要というわけです。おだやかな呼吸をすることにより、このバランスを取りもどすことができるでしょう。
ついでながら、もう少し話をすすめてみます。
おだやかな呼吸の良さは、おだやかな心が得られるだけではありません。おだやかな呼吸は、いわゆる瞑想と呼ばれる類のひとつですが、数千年前に書かれたヨガの経典「ヨガスートラ」を開いてみますと、瞑想の効能として次のように記されてあります。瞑想により、賢者から知恵を授けられ、人の心も読めるようになり、とてつもなく強い体を得られるというのです。つまり、全知全能、すなわちスーパーマンになれるというのです。
「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが、あながちウソではないことが近年の科学的研究により明らかになってきています。いにしえの書と近代科学の接近をここに見ることができるのは何とも興味深いことです。
上記の効能を科学的な言葉におきかえてみると、以下のようになります。
・知能、記憶力、創造力、集中力があがる(賢者から知恵を授かる)
・人により共感できるようになる(人の心が読める)
・免疫力がアップし、ストレスからの回復も早くなる(強い体を得る)
おだやかな呼吸は、まるで特効薬のような効能をもちながら、コストはゼロ。加えて、呼吸はもちろんポータブルですから利便性も高い。ビジネス的にいえば、費用対効果が高いといえるでしょう。
ということでしたら、怒りがこみ上げてきたときだけに限らず、おだやかな呼吸をいつでもどこでも、普段の生活に無理の範囲内で取り込むのはいかがでしょう。たとえば、通勤時の電車の中、踏切を待つ間など、ちょっとしたすきま時間があるとき、おだやかな呼吸をすることで、はるかに有効な時間の使い方をすることができるでしょう。
おだやかな呼吸が日常生活に根づいたころには、きっと、感情的になるなんてことすらなくなるかもしれません。
今日もおだやかな呼吸をどうぞ。
ナマステ。