キャンペーン終了まで

割引情報をチェック!

ものごとの「とらえ方」が自分の生きる世界を決める

投稿日:2015/08/20更新日:2019/04/09

この連載コラムを開始するにあたって、最初に選んだテーマは、ものごとの「とらえ方」です。人生で遭遇する無数の出来事をどうとらえるかというのは、ひょっとすると、自分がどんな知識や技術を持つかよりも大事かもしれません。なぜなら、ものごとのとらえ方というのは、知識や技術よりも根底のレベルにあって、自分をどんな知識や技術習得に向かわせるかを決めてしまうはたらきをもっているからです。そして結果的に自分のキャリアや人生の運・不運にまで影響を与えていく。ともかく、それほど重要なテーマです。

そこで今日の概念図は、米国の臨床心理学者アルバート・エリスの「ABC理論」です。この理論は、ものごとの「とらえ方」が自分の感情をつくり、ひいては自分が生きる世界を決めていくということを説明するものです。

53dbd2169a73be2cf8a7ff9ffc298d4f

「ABC理論」でいうABCとは、次の3つを意味します。

・A(Activating Event)=出来事
・B(Belief)=観念・解釈・思い込みといったものごとのとらえ方
・C(Consequence)=結果として表れた感情・気持ちなど

私たちは、何か自分の身に降りかかった出来事に対し、「よかった」とか「悔しい」とか感情を持ちます。そのため私たちは単純に、このときの因果関係を〈A〉→〈C〉であるかのように思いがちです。

ところが実際は、その感情〈C〉を引き起こしているのは、出来事〈A〉ではなく、その出来事をどうとらえたか〈B〉によるというのがこの理論の肝です。すなわち、因果関係は〈A〉→〈B〉→〈C〉と表されます。

これを理解するために次の具体例で考えてみましょう。

職場の同僚である織田さんと伊刈さんは、昼食のために定食屋に入りました。2人は同じメニューを注文して待っていたところ、アルバイトらしき店員が間違った品を持ってきました。そのとき、伊刈さんは「オーダーと違うじゃないか。いますぐ作りなおして持ってきてくれ」と、厳しく当たる対応をしました。

他方、織田さんは「まぁ昼食時だし、間違いも時にはあるさ。店員がまだ慣れてないのかもしれないし。ぼくはおなかがいっぱいになればいいからそのメニューでいいよ」と、穏やかな対応をしました。このように2人は同じ出来事に遭遇しました。しかし、結果として持った感情はまったく異なっています。これはなぜでしょう……。

それは、その出来事に対する各々の「とらえ方」が異なっていたからです。

82463dd240591be01279c50fa6684a19

私たちは生きていく途上で実にさまざまな出来事に遭遇していくが、それをを100%コントロールすることはできない。しかし、それをどうとらえるかは、自分の意思のもとにあり、ある程度、コントロールができる。それによって、自分の感情や気持ちを好ましいほうへもっていくことができる。その積み重なりは、長い目で見れば、自分の生き方や運命を意思的に変えていくことにつながっている―

6ff3ba757968dc4aeeb873f54964b488

ですから、ものごとの「とらえ方」というのは、平安に力強く生きていくためにとても大事なものです。

さて本連載では、文章とともに、ものごとの本質をとらえる概念図をさまざま紹介してまいります。まさに概念図は、「ABC理論」でいうところの〈B〉にあたります。1枚の強い概念イメージをヘソの奥に据えることで、あなたの仕事が変わり、キャリアコースが変わっていくことは十分に起こりえるのです。

最後に、今回のテーマに関連する箴言を2つ。

「人はものごとをではなく、それをどう見るかに思いわずらうのである」。
───エピクテトス(古代ギリシャ・ストア派の哲学者)

「事柄に怒ってはならぬ。事柄はわれわれがいくら怒っても意に介しない」。
───モンテーニュ(フランスの哲学者)

  • 村山 昇

    キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

    人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)をはじめ、管理職研修、キャリア開発研修、思考技術研修などの分野で企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。 GCC(グロービス・キャリア・クラブ)主催セミナーにて登壇も多数。 1986年慶應義塾大学・経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。94-95年イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。 著書に、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『個と組織を強くする部課長の対話力』『いい仕事ができる人の考え方』『働き方の哲学』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

関連動画

学びを深くする

記事に関連する、一緒に学ぶべき動画学習コースをまとめました。

関連記事

合わせて読みたい

一緒に読みたい、関連するトピックをまとめました。

サブスクリプション

学ぶ習慣が、
あなたを強くする

スキマ時間を使った動画学習で、効率的に仕事スキルをアップデート。

17,800本以上の
ビジネス動画が見放題

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

利用者の97%以上から
好評価をいただきました

スマホを眺める5分
学びの時間に。

まずは7日間無料
体験してみよう!!

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

新着記事

新着動画コース

10分以内の動画コース

再生回数の多い動画コース

コメントの多い動画コース