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相手の興味を徹底分析

投稿日:2014/10/31更新日:2021/10/23

前回は検討結果などをわかりやすく、効果的に伝えるために、相手に寄り添った「伝える柱」を作る話をした。今回は少し別の角度からわかりやすく伝える方法論をみていこう。

人の話やプレゼンテーションを真剣に聞くのはどんな時か。そう、トピックに興味を持っている時だろう。「人は興味、強い関心がないと真剣に話を聞かない」を前提にプレゼンや話を構築しなければならず聞き手の興味を徹底的に考え分析する必要がある。

書いてしまえば当たり前の話だが、実際には「自分の言いたいこと」のプレゼン資料作成に時間をとられ、聞き手のことを考える時間がほとんどない場合が多い。プレゼン目的にもよるが、必要以上に表計算ソフトをこねくりまわし、細部にこだわった資料を作成しても効果は大きくないことが多い。

それよりも主要な聞き手=意思決定者は普段どんなことに興味を持っているのか。どんな判断軸で考えるのか。組織上のポジション・責任は。今回の件との関係性は。聞き手のメリット、デメリットは。自分は本件を伝える人として適正であると相手に認識されるか、などを考えるのだ。

この聞き手の分析なしには、相手にとって価値のあるプレゼン、話をすることは難しい。できればこの分析から、まず「この話はあなたに強い関係があるのですよ」ということを強いメッセージとして、できるだけ早いタイミングで伝えることが肝要だ。

大人数に話をする場合でも同様だ。私も百人超を対象に話す機会がしばしばあるが、できるだけ早いタイミングで参加してくださる人の年齢、性別、勤め先、職種などの情報を入手し、最大限話の内容をアレンジするようにしている。

聞き手の分析をしたら次にすることはその聞き手が興味を持ちそうなこと、疑問に思いそうなことを想定する。理想としては「なるほど、それで」「次はどうなる」「なぜそうなる」「で、どうしたいの?」というように相手の頭の中で生まれる連続的な問いにプレゼンで答えていきたい。

そのためにやるべきことは素朴に相手が持ちそうな疑問を考えてみることだ。1つ例を挙げてみよう。通販会社の物流を取り仕切る課に勤務するあなたは創業来つきあいのある物流会社に配達ミスが多いことに困っている。時間をかけ物流会社に改善を求めコミュニケーションしてきたが、改善がみられずついに委託先を変更したいと思った。

新しい委託先については、様々な調査の結果、配達ミスなどは極めて少ないものの、1個あたりのコストが3%程度上がることが分かっている。こんな時、いきなり委託先を変更したい、とだけ上司に進言したとしたらどうなるだろう。

そこで、聞き手(=この場合は上司)が持ちそうな疑問を素朴に考えてみるのだ。「(聞き手の疑問1)委託先を変えたいという話は分かったが、そもそも、どんなことがどの程度の頻度でどこの地域で起きているのか」「なるほど、現状はわかった」「(疑問2)なぜ、その問題は今の委託会社の中で修正できないのか」「なるほど、問題発生の理由も分かった」「(疑問3)問題解決のための、具体的な方法論に関する選択肢には何があるのか」

話には、常に流れがある。プレゼンの教科書などにはストーリーラインという言葉で表現されることが多いが、相手が抱く疑問を想定しつつ、思考を導く、ストーリーをイメージすることにチャレンジしてみていただきたい。

 

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※この記事は日本経済新聞2013年10月16日に掲載されたものです。
(Coverphoto:shutterstock/Ismagilov)

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  • 田久保 善彦

    グロービス経営大学院 副学長

    慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業、中央省庁(経済産業省、文部科学省他)、自治体などを中心に調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールにて企画・運営業務・研究等を行なう傍ら、グロービス経営大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。経済同友会幹事、経済同友会教育問題委員会副委員長(2012年)、経済同友会教育改革委員会副委員長(2013年度)、ベンチャー企業社外取締役、顧問、NPO法人の理事等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』、『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社)、『日本型「無私」の経営力』(光文社)、『21世紀日本のデザイン』(日本経済新聞社)、『MBAクリティカル・シンキングコミュニケーション編』、『日本の営業2010』『全予測環境&ビジネス』(以上ダイヤモンド社)、『東北発10人の新リーダー 復興にかける志』(河北新報出版センター)、訳書に「信念に生きる~ネルソン・マンデラの行動哲学」(英治出版)等がある。

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