生成AIは、あらゆる業界を破壊する
本松氏は新卒でソニーへ入社しWalkmanなどのAV製品における商品企画などを担当。その後、楽天やソフトバンクグループで、グローバル事業や新規事業を牽引してきました。
現在の生成AIの衝撃は、ソニー在籍時代に経験したiPodの登場に重なると言います。
「iPodは2000年代に登場してまたたくまに市場を席巻した。カセットプレイヤーに始まり、何十年とやってきたソニーのポータブルオーディオプレーヤーの地位があっという間に揺らいだわけですよね。世界が変わる衝撃、ディスラプトを目の当たりにしました」
さらに、生成AIのインパクトは「一つの業界にとどまらない」と本松氏は指摘します。
「私がソニーで経験したディスラプトやイノベーションのジレンマをあらゆる業界が経験することになります。近い将来、人類は初めて人間より賢い存在を目にするのは間違いありません。想像できないぐらいの社会的なインパクトが起きていると思っています」
キャリア戦略の鍵は「ワクワク」――成長市場へ自ら飛び込む

これまでの常識は生成AIによって塗り替えられていくと言われています。ここで悲観することなく、前向きにキャリアを描いていくにはどうしたらいいでしょうか。
本松氏のキャリアの出発点はソニーでした。小学生のころ、父親が買ってきたウォークマンを着けて「まるで脳の中で音楽が鳴っているようだ」と衝撃を受けて以来、大好きな会社になったと言います。
そんな思い入れのある会社を離れ、IT業界へ転身した理由を本松氏はこう語ります。
「自分がワクワクする方向に意志を持って動きました。誰かにキャリアを委ねるのではなく、自分のキャリアは自分で選ぶ、という意識を改めて持ったからです」
自分はビジネスパーソンとして、人生をかけて何を成し遂げたいのか――。
東日本大震災や、当時学生として通っていたグロービス経営大学院での出会いをきっかけに、自らの志について深く考え抜いた結果、「日本のサービスや商品を海外へ発信していくこと」への強い思いに気づいたといいます。さらに、成長しているIT業界に「挑戦したい」という気持ちも決断を後押ししました。
「今後広がっていく魅力的な市場に身を置くことがとても大事。キャリアを戦略と捉えるなら、自分自身もこれから伸びていくところで汗をかいた方がいい。ワクワクする場所に、自ら進んで動けるようにすることが重要だと考えています。」
「実は、私のこうしたキャリアへの挑戦は、グロービスでの出会いがきっかけにもなっているんです。イノベーションは掛け合わせによって生まれるものであり、一人では成し遂げられません。新規事業開発に携わる中でも、自分のキャリアを築くうえでも、知らない人と積極的に話し、新しいアイデアやコラボレーションを生み出す場に身を置くことが大切だと感じています」
PDCAはもう古い?生成AI時代に求められる「Try and learn」の思考
新規事業など不確実な領域で意思決定を繰り返してきた本松氏。
AIの発展で不透明感が増す現在、ますます重要になるのは、「本当に自分のやりたいことや、自分の価値観を常に言語化し、アップデートしていくことだ」と指摘します。
「情報を集めることはAIに任せられるとしても、そもそも何をしたいのか、何を調べたいのかは人が考えないといけない。そうした思考ができる人こそが、これからの組織で価値を発揮していくでしょう」
AI時代には、仕事の進め方にも変化が現れていくと言います。
「変化のスピードが非常に速いため、PDCAのPlan(計画)に時間を費やしている間に環境が変わってしまう。実際にDo(実行)をすることで初めて、お客様や市場、あるいはプロダクトからの反応を得て、新たな気づきを得ることも少なくありません。『走りながら考える』つまり、試行と修正を高速で繰り返す思考法が、これからの時代にはより重要になっていくのです」
そうした中で、本松氏が大切にしているのは「Try and error(トライアンドエラー)」ではなく「Try and learn(トライアンドラーン)」の姿勢です。
「個人的には、“エラー”という言葉にネガティブな印象があるため、あまり好きではありません。トライして初めて分かることがあり、分かったことから学んで、改善していくことが大事です。まずは世の中に出してみる――その姿勢が今後より重要になると思います」
AIは仕事を奪う?「知識」から「実践知」への昇華が鍵

本松氏が登壇するグロービス経営大学院のナノ単科は、ライブ授業、ケーススタディ、グループワークを組み合わせた6週間の短期集中プログラムです。
本松氏は「AIに聞けば多くの答えが返ってくるため、知識そのものの価値は下がっていく。一方で、AIを『どう使うか』という視点はますます大事になってきている」と指摘します。
「生成AI時代のビジネス実践入門」では、オンライン講座でイメージされがちなインプット中心の学びではなく、アウトプットを重視。
ライブ授業やグループワークを通じて、教員や多様なバックグラウンドを持つ仲間とのコミュニケーションから、実践に近い気づきを得られるのが特長です。単なるAIの使い方を学ぶではなく、AIを活用して新たな価値や成果を出す方法を実践的に身につけることを目指します。

本松氏は「(受講生には)AIが自分の仕事や会社、自分自身にどのような影響をもたらすのかというビジョンを、自分なりに持ってほしい。その上で自分は何をしようかという一歩を踏み出すことを、講義を通して体感していただきたいと思っています」と話します。
AIは仕事を奪う存在なのでしょうか?
「AIをうまく活用できれば、社会はより素晴らしいものになるはずです。あらゆる業界にAIが影響を及ぼすからこそ、逆に言えば無数のチャンスが出てくると思います。立ちすくむのではなく、このチャンスをうまくつかむことがとても大事です。一歩を踏み出すことで、きっと明るい未来が見えてくると信じています」

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