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引当金とは?会計処理の謎を解く「未来への準備」の仕組み

投稿日:2025/09/01更新日:2025/09/26タイマーのアイコン 読了時間 6分

引当金とは、将来の費用や損失に備え、発生の可能性と金額を見積もって計上する会計処理です。グロービス経営大学院の教員が執筆した記事をもとに解説します。

引当金とは - 未来に備える会計の「貯金箱」

引当金とは、将来発生することが予想される費用や損失に備えて、あらかじめ計上しておく会計処理のことです。まだ実際にはお金の支払いが発生していないものの、その理由となる事実が既に起こっている場合に、将来の支払いに備えて「準備」をするという意味があります。

「引き当てる」という言葉には「準備をする」という意味が含まれています。例えば、得意先からの注文を受けて商品の出荷準備をすることを「在庫を引き当てる」と表現しますが、会計でも同じように、将来の支払いに備えて準備をすることを「引当金を設定する」と言います。

この仕組みにより、企業は将来の支払い義務を現時点の財務状況に正しく反映させることができ、より正確な経営状況の把握が可能になります。

なぜ引当金が重要なのか - 正確な経営判断を支える基盤

①企業の真の財務状況を明らかにする

引当金は、企業の本当の財務状況を正確に把握するために欠かせません。将来の支払い義務を無視して利益を計算すると、実際よりも良い業績に見えてしまいます。

例えば、従業員への賞与支払いが予定されているのに、それを考慮せずに利益を計算したらどうでしょうか。実際には賞与の支払い義務があるため、その分を差し引いて考えなければ正確な利益とは言えません。引当金の計上により、このような「隠れた負債」を明らかにできます。

②投資家や取引先への信頼性を高める

引当金を適切に計上することで、企業の財務諸表の信頼性が向上します。投資家や取引先は、将来のリスクも考慮された財務情報を基に、より正確な判断を下すことができます。

このような透明性の高い会計処理は、企業の信用度向上にもつながり、資金調達や取引関係の構築において有利に働きます。

引当金の詳しい解説 - 計上条件と実務のポイント

①引当金計上の3つの必須条件

引当金を計上するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

条件1:将来の費用(損失)の理由が既に発生している まず、将来支払うことになる費用や損失の原因となる事実が、既に起こっている必要があります。何の理由もなく、単に「将来お金がかかりそう」というだけでは引当金は計上できません。

条件2:将来の費用(損失)の発生の可能性が高い その費用や損失が実際に発生する可能性が高いことも重要な条件です。過去の実績や現在の状況から判断して、高い確率で支払いが発生すると予想される場合に限ります。

条件3:将来の費用(損失)の金額の合理的見積りが可能 さらに、支払うことになる金額を合理的に見積もることができなければなりません。大まかな金額であっても、根拠に基づいて計算できることが求められます。

②賞与引当金の具体例で理解する

3月末決算の会社を例に、賞与引当金の仕組みを見てみましょう。

この会社では、12月1日から5月30日までの勤務に対して7月15日に賞与を支払い、6月1日から11月30日までの勤務に対して12月15日に賞与を支払うと社内規程で定められています。

3月31日の決算日時点で考えてみると、従業員は12月1日から3月31日まで働いており、この期間の労働に対する賞与支払いの理由は既に発生しています(条件1)。過去の実績から賞与の支払いが継続されていれば、次回の支払いも高い確率で行われると判断できます(条件2)。そして、賞与が基本給の何か月分と決まっていれば、個人別の支給額も合理的に計算できます(条件3)。

③会計処理の実際の流れ

賞与の総額が100万円で、そのうち当期分(1月1日から3月31日)が50万円と見積もられた場合の会計処理は以下のようになります。

当期末(3月31日)の処理:

借方)賞与(引当金繰入額)50万円 貸方)賞与引当金 50万円

この処理により、「賞与引当金」という負債を計上すると同時に、「賞与」という費用も計上されます。まだ支払っていない賞与を費用として計上するため、当期の利益は50万円減少します。

翌期の賞与支払時(7月15日)の処理:

借方)賞与 50万円      貸方)現金及び預金 100万円
借方)賞与引当金 50万円

実際の支払い時には、準備しておいた引当金50万円を取り崩すため、支払い時の費用は50万円となります。結果として、当期と翌期の費用の合計が100万円となり、実際の支払額と一致します。

引当金を実務で活かす方法 - 経営管理の重要なツール

①様々な場面での引当金活用

引当金は賞与以外にも多くの場面で活用されています。

退職給付引当金は、将来の退職金支払いに備えるものです。従業員が働いている期間中に、退職金の原資を少しずつ積み立てていく考え方です。これにより、退職者が多い年度に一気に費用が発生することを避けられます。

貸倒引当金は、売掛金や貸付金が回収できなくなるリスクに備える引当金です。過去の貸倒実績を基に、一定の割合で引当金を設定します。これにより、取引先の経営悪化による損失を事前に織り込むことができます。

製品保証引当金は、販売した製品の修理や交換費用に備えるものです。家電メーカーなどでは、販売後の保証サービスに要する費用を見積もって計上します。

②経営判断における引当金の重要性

引当金は、単なる会計処理にとどまらず、経営判断にも重要な影響を与えます。

適切な引当金の設定により、企業は将来のキャッシュフローをより正確に予測できます。賞与引当金があれば、賞与支払い時期に必要な資金を事前に把握し、資金繰りの計画を立てることができます。

また、引当金の増減を分析することで、企業のリスク状況の変化を把握できます。貸倒引当金が増加している場合は、取引先の信用状況が悪化している可能性があり、営業政策の見直しが必要かもしれません。

さらに、引当金の適切な管理は、税務上の効果も期待できます。法定の要件を満たす引当金は損金として認められるため、税務戦略の観点からも重要です。

経営者にとって引当金は、将来のリスクを可視化し、適切な経営判断を下すための重要な情報源となります。「まだ支払っていないお金」に対する準備をすることで、より安定した経営基盤を築くことができるのです。

参考ページ

引当金とは?賞与を例に解説

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