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マーケット・リスクプレミアムとは?投資判断を左右する重要な指標の読み解き方

投稿日:2025/07/08更新日:2025/08/05タイマーのアイコン 読了時間 6分

マーケット・リスクプレミアムとは、市場投資でリスクを取る見返りとして期待される超過リターンのことです。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

マーケット・リスクプレミアムとは

マーケット・リスクプレミアム(Market Risk Premium)とは、市場全体への投資で期待されるリターンから、リスクのない資産の利回りを差し引いた値のことです。

簡単に言うと、「株式市場に投資することで、安全な国債投資よりもどれだけ多くの利益を期待できるか」を示す数値です。この指標は「E(rM) - rf」という式で表され、E(rM)は市場ポートフォリオの期待リターン、rfはリスクフリーレート(通常は国債の利回り)を意味します。

投資にはリスクが付きものですが、そのリスクを取ることで得られる追加的な利益の期待値こそが、マーケット・リスクプレミアムなのです。この概念を理解することで、投資判断や企業の資本コスト計算において、より合理的な意思決定を行うことができるようになります。

なぜマーケット・リスクプレミアムが重要なのか - 投資の世界の基本原理

マーケット・リスクプレミアムは、現代ファイナンス理論の中核を成す概念として、あらゆる投資判断の基準となる極めて重要な指標です。

①投資判断の合理的な基準となる

投資家が株式に投資する際、なぜリスクのない国債ではなく、値動きの激しい株式を選ぶのでしょうか。それは、リスクを取ることでより高いリターンを期待できるからです。マーケット・リスクプレミアムは、この期待の大きさを数値化したものであり、投資判断の合理的な基準を提供します。

たとえば、国債の利回りが2%の時に、株式市場全体の期待リターンが8%であれば、マーケット・リスクプレミアムは6%となります。この6%が、株式投資のリスクに見合う対価として妥当かどうかを判断する材料となるのです。

②企業価値評価の土台を支える

企業の価値を評価する際に広く用いられるCAPM(資本資産価格モデル)では、マーケット・リスクプレミアムが中核的な要素として使われます。企業の資本コストを計算し、将来のキャッシュフローを適切な割引率で現在価値に換算するために、この指標は欠かせません。

正確なマーケット・リスクプレミアムの推定ができれば、企業価値の評価精度が向上し、投資判断やM&A(企業買収)における価格交渉において、より説得力のある根拠を示すことができます。

マーケット・リスクプレミアムの詳しい解説 - 理論から実務まで

マーケット・リスクプレミアムを深く理解するためには、その計算方法、地域差、そして実務での活用法について詳しく知る必要があります。

①実際の計算方法と数値の目安

マーケット・リスクプレミアムを推定する際は、過去の実績データを基に計算する方法が一般的です。日本では東証株価指数(TOPIX)、アメリカではS&P500のような市場全体を代表する指数の過去のリターンと、同期間の国債利回りとの差を計算します。

具体的な数値として、アメリカの証券市場では歴史的に6%から8%程度、日本の証券市場では4%から6%程度とされています。ただし、これらの数値は計算に使用する期間によって大きく変動します。短期間のデータを使えば景気変動の影響を強く受け、長期間のデータを使えば過去の市場構造の変化の影響を受けるためです。

②地域や時期による違いの背景

マーケット・リスクプレミアムが地域によって異なる理由には、各国の経済構造や市場の成熟度が関係しています。アメリカのプレミアムが日本より高い傾向にあるのは、アメリカ市場の方が歴史的により高いリターンを実現してきたことや、市場の流動性の違いなどが影響しています。

また、経済情勢の変化によってもプレミアムは変動します。金融危機後は投資家のリスク回避志向が強まり、一時的にプレミアムが上昇する傾向が見られました。このように、マーケット・リスクプレミアムは固定的な値ではなく、市場環境に応じて変化する動的な指標なのです。

③理論値と実際の使い方のギャップ

投資家が本当に知りたいのは将来のマーケット・リスクプレミアムですが、未来を正確に予測することは不可能です。そのため実務では、過去の実績値を将来の予測値として代用するのが一般的です。

この方法には限界があることを理解した上で使用することが重要です。市場環境が大きく変化した場合や、過去とは異なる経済構造になった場合には、過去のデータが将来の予測にそぐわない可能性があります。そのため、複数の期間のデータを比較検討したり、他の手法と組み合わせて使用したりする工夫が求められます。

マーケット・リスクプレミアムを実務で活かす方法 - 投資と経営への応用

マーケット・リスクプレミアムは、理論的な概念にとどまらず、実際のビジネスシーンで幅広く活用される実践的なツールです。

①投資判断における具体的な活用場面

個人投資家や機関投資家にとって、マーケット・リスクプレミアムはポートフォリオ構築の重要な指針となります。たとえば、現在のマーケット・リスクプレミアムが歴史的な平均値より低い場合、株式市場が割高である可能性を示唆しているかもしれません。逆に平均値より高い場合は、株式投資の魅力が相対的に高まっていると判断できます。

また、個別株式の評価においても、その企業のベータ値(市場全体に対する感応度)とマーケット・リスクプレミアムを掛け合わせることで、その株式固有のリスクプレミアムを算出できます。これにより、投資すべき株式の優先順位を合理的に決定することが可能になります。

②企業経営における資本コスト計算への応用

企業の財務担当者や経営陣にとって、マーケット・リスクプレミアムは資本コストの算定に不可欠な要素です。新規事業への投資や設備投資の意思決定において、投資案件の収益性を評価する際の割引率(ハードルレート)を決定するために使用されます。

具体的には、WACC(加重平均資本コスト)の計算において、株主資本コストを求める際にマーケット・リスクプレミアムが使われます。正確な資本コストの算定により、価値を創造する投資案件と価値を毀損する投資案件を適切に区別でき、企業価値の向上につながる意思決定を行うことができます。

さらに、M&Aや企業価値評価の場面でも、DCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)法による企業価値算定において、適切な割引率を設定するためにマーケット・リスクプレミアムが活用されます。買収価格の妥当性を検証したり、株式公開時の価格設定の参考にしたりする際にも重要な役割を果たします。

参考ページ

MBA経営辞書「マーケット・リスクプレミアム」

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