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節税効果とは?負債を味方につけて企業価値を高める賢い戦略

投稿日:2025/07/08更新日:2025/08/06タイマーのアイコン 読了時間 4分

節税効果とは、利子費用の税控除により企業価値を高めるファイナンス上の効果です。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

節税効果とは

節税効果(Tax Shield、タックスシールド)とは、企業が負債を活用することで利子費用が税控除の対象となり、結果として企業の経済的価値が向上する効果のことです。

この効果は、まさに「税の盾」という名前の通り、税負担を軽減することで企業価値を守り、さらに高める働きをします。ファイナンス理論において極めて重要な概念として位置づけられており、多くの企業が戦略的に活用している仕組みです。

なぜ節税効果が重要なのか - 企業価値向上の隠れた武器

節税効果が重要視される理由は、企業の資金調達方法によって実質的な価値が変わるという、一見不思議に思える現象を説明できるからです。

①投資家全体のリターンを増やす仕組み

無借金経営と負債を活用した経営を比較すると、負債を活用した方が投資家全体(株主と債権者を合わせた)のリターンが大きくなります。これは、利子費用が税控除の対象となることで、本来国に支払うはずだった税金の一部を投資家が受け取れるためです。

②資本コストの最適化につながる

企業は株主資本と負債のバランスを適切に保つことで、全体の資本コストを下げることができます。節税効果により、負債による資金調達のメリットが明確になり、最適な資本構成を見つける指針となります。

節税効果の詳しい解説 - 数字で見る価値創造の仕組み

節税効果がどのように企業価値を高めるのか、具体的な数値例を用いて詳しく見ていきましょう。

①無借金企業の場合との比較

まず、無借金で事業を行う企業の例を考えてみます。営業利益が100、税率が40%の場合、以下のような収支になります。

  • 営業利益:100
  • 税金(40%):40
  • フリーキャッシュフロー:60

この60がそのまま株主のリターンとなります。

次に、同じ企業が負債を活用し、利子費用が20発生するケースを見てみましょう。

  • 営業利益:100
  • 利子費用:20
  • 税前利益:80
  • 税金(40%):32
  • 株主へのフリーキャッシュフロー:48

②投資家全体でのメリット計算

一見すると株主のリターンは60から48へと12減少したように見えます。しかし、債権者が受け取る利子20を加えると、投資家全体では68(48+20)のリターンを得ることになります。

無借金の場合と比べて8(68-60)も多くのリターンを得られているのです。この8こそが節税効果による価値創造です。計算式で表すと「利子費用×税率」(20×40%=8)となります。

③節税効果が生まれる理由

この価値創造が可能になる理由は、利子費用が税控除の対象となることです。無借金の場合は営業利益100に対して40の税金を支払いますが、負債を活用すると税前利益80に対して32の税金しか支払わなくて済みます。

この8の差額(40-32)が、本来国に支払うはずだった税金から投資家に流れることになり、企業価値の向上につながるのです。

節税効果を実務で活かす方法 - 戦略的な負債活用のポイント

節税効果を実際のビジネスで活用するには、適切な理解と慎重な判断が必要です。

①配当政策や自社株買いへの活用

近年、日本企業でも節税効果を意識した経営が浸透してきています。具体的には、借入れを行い、その資金を配当の増額や自社株買いに充てる企業が増えています。

これにより、株主により多くの価値を還元しながら、同時に節税効果による企業価値の向上も実現できます。特に、内部留保が豊富で成長投資機会が限られている成熟企業において、この戦略は有効とされています。

②適切な負債水準の見極め

ただし、節税効果を追求するあまり過度な負債を抱えることは危険です。負債が増えすぎると以下のようなリスクが生じます。

利払い負担の増大: 毎期の利子支払いが経営を圧迫し、本業への投資や事業運営に支障をきたす可能性があります。

投資の柔軟性の低下: 負債による制約により、新たな成長機会に迅速に対応できなくなる恐れがあります。

財務リスクの増大: 業績悪化時に債務不履行のリスクが高まり、かえって企業価値を毀損する可能性があります。

そのため、業界特性や事業の安定性、将来の成長戦略などを総合的に考慮して、最適な負債水準を見極めることが重要です。多くの企業では、格付けを一定水準に保ちながら節税効果を享受できる負債比率を模索しています。

節税効果は確実に企業価値を高める効果がある一方で、その活用には慎重なバランス感覚が求められる、まさに経営の醍醐味と言える領域なのです。

参考ページ

MBA経営辞書「節税効果」

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