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フルーガル・イノベーションとは?新興国発の「シンプルだけど革新的」なものづくりの秘密

投稿日:2025/07/21更新日:2025/08/18タイマーのアイコン 読了時間 6分

フルーガル・イノベーションとは、新興国やBOP市場で生まれた「少ない資源で最大の価値を生み出す」革新的な発想です。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

フルーガル・イノベーションとは - 新興国が生み出したシンプル革命

フルーガル・イノベーション(Frugal Innovation)とは、直訳すると「質素なイノベーション」や「倹約イノベーション」を意味する言葉です。

この考え方の核心は、製品やサービスから余計な装飾や機能を思い切って取り除き、本当に必要な機能だけに集中するというアプローチにあります。特に新興国やBOP(Base of the Pyramid:所得ピラミッドの底辺)市場の人々のニーズを満たすために生まれた発想で、「少ない資源で最大の価値を生み出す」ことを目指しています。

先進国の製品開発では、似たような機能を次々と追加して差別化を図ろうとする「差別化の罠」に陥りがちですが、フルーガル・イノベーションでは、そうした行為は無駄と考えます。代わりに、ユーザーが本当に求めているものは何かを徹底的に見つめ直し、シンプルで手に入りやすい解決策を提供するのです。

なぜフルーガル・イノベーションが重要なのか - 世界市場の新たな可能性

フルーガル・イノベーションが注目される理由は、単にコストを下げるだけでなく、まったく新しい市場の扉を開く力を持っているからです。

①巨大な新興国市場への対応が急務

世界の人口の大部分は新興国に住んでおり、これらの地域では従来の先進国向け製品は価格が高すぎて手が届きません。しかし、彼らにも確実にニーズは存在しています。フルーガル・イノベーションは、こうした巨大な潜在市場に対する現実的な解決策を提供します。

②持続可能性への貢献

資源を無駄遣いせず、環境への負荷を最小限に抑えながらイノベーションを起こすこのアプローチは、持続可能な発展という現代の重要課題とも合致しています。少ない材料とエネルギーで、より多くの人々に価値を届けることができるのです。

フルーガル・イノベーションの詳しい解説 - 革新の仕組みを理解する

フルーガル・イノベーションを深く理解するために、その特徴と実践方法を詳しく見ていきましょう。

①従来製品との根本的な違い

先進国の製品開発では、「より多機能に」「より高性能に」という方向性が一般的です。しかし、フルーガル・イノベーションでは逆のアプローチを取ります。既存の製品や工程を一から見直し、不必要なコストを徹底的にカットすることから始めます。

例えば、従来の自動車が100の機能を持っているとすれば、フルーガル・イノベーションでは「実際に必要なのは20の機能だけ」と割り切り、その20の機能を最高品質で、かつ手頃な価格で提供することを目指します。これは単なるコストダウンではなく、価値の本質を見極める作業なのです。

②タタモーターズの革新事例

この概念を最もわかりやすく実現したのが、インドの自動車メーカーのタタモーターズです。同社は「世界一安い自動車」として話題になった「ナノ」を開発しました。

タタは、インドの多くの人々にとって「自動車に本当に必要な機能とは何か」を徹底的に考え抜きました。エアコンや豪華な内装、複雑な電子機器などを削ぎ落とし、「安全に移動できる」という自動車の本質的価値に集中したのです。結果として、従来の自動車の10分の1程度の価格を実現し、それまで自動車を持てなかった層に新しい選択肢を提供しました。

③リバース・イノベーションとの違い

フルーガル・イノベーションと混同されがちなのが「リバース・イノベーション」です。しかし、両者には重要な違いがあります。

リバース・イノベーションは、先進国の企業が主導して新興国向けの製品を開発し、それを後に先進国に逆輸入するというアプローチです。一方、フルーガル・イノベーションは、現地のローカル企業が自国の事情を深く理解した上で生み出すイノベーションです。

この違いは重要で、フルーガル・イノベーションを実現した現地企業は、自国では圧倒的な優位性を築けますが、その技術や製品を先進国に輸出しようとすると、ブランド力の不足、販売チャネルの確保、規制への対応といった様々な参入障壁に直面することが多いのです。

フルーガル・イノベーションを実務で活かす方法 - 実践的アプローチの提案

フルーガル・イノベーションの考え方は、新興国企業だけでなく、先進国の企業にとっても有効な戦略となりえます。

①コスト構造の根本的見直し

まず取り組むべきは、既存製品のコスト構造を一から見直すことです。「この機能は本当に必要か?」「顧客は実際にこの機能を使っているか?」といった基本的な問いから始めましょう。

多くの企業では、競合他社との差別化を図ろうとして、顧客が求めていない機能まで追加してしまうことがあります。しかし、フルーガル・イノベーションの視点では、そうした「過剰品質」は無駄なコストの源泉と考えます。顧客調査や市場分析を通じて、本当に価値のある機能だけを残し、それ以外は大胆にカットする勇気が必要です。

②新興国市場への参入戦略

グローバル企業にとって、フルーガル・イノベーションは新興国市場への効果的な参入手段となります。ただし、単純に既存製品の機能を減らすだけでは成功しません。

重要なのは、現地の文化、生活習慣、インフラ状況を深く理解することです。例えば、電力供給が不安定な地域では省電力機能が重要になりますし、メンテナンス体制が整っていない地域では故障しにくい設計が求められます。現地のパートナー企業と協力し、現地の声に耳を傾けながら製品開発を進めることが成功の鍵となるでしょう。

また、フルーガル・イノベーションで開発した製品が成功すれば、それを先進国市場にも展開できる可能性があります。近年、先進国でも「シンプルで手頃な価格の製品」への需要が高まっており、新興国で培ったノウハウを活かせる場面が増えているのです。

参考ページ

MBA経営辞書「フルーガル・イノベーション」

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