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任天堂の「WiiU」は血みどろの戦いを覚悟したのか?

投稿日:2011/06/17更新日:2019/04/09

タッチスクリーン搭載のコントローラー

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後継機「WiiU」と2006年に発売された現行の「Wii」の違いは、その姿を見ればすぐにわかる(任天堂ホームページ内関連記事を見て欲しい)。

コントローラーの形状が決定的に違う。大きな携帯型ゲーム機かタブレットPCを思わせる6.2型のタッチパネルが鎮座しているのだ。7日、米ロサンゼルスで開幕した世界最大級のゲーム見本市「E3」での発表において、『(任天堂の)岩田聡社長は7日の発表会で、「初代のWiiよりも幅広い層にアピールできる」と述べた』(YOMIURION-LINE)という。

例えば、「ゴルフゲームでは、テレビ画面にグリーンやカップ、床に置いたコントローラーにはボールが映し出される。Wiiのリモコンを握ってスイングすれば、コントローラーのボールがテレビ画面を飛んでいく仕組みで、実際のプレーにより近い感覚を体験できる」(同)という。

今日の任天堂があるのは、失敗の上に立って「立ち止まって俯瞰してみたこと」である。

1960年にセオドア・レビット教授がハーバード・ビジネス・レビューで発表した論文にある「マーケティング近視眼」に陥らなかったことだ。米国の鉄道事業は自らを輸送産業と定義せずに、鉄道会社同士の競争にあけくれた結果、自動車産業や航空産業に破れ衰退した。そうした近視眼的な経営を「マーケティング・マイオピア(近視眼)」と呼んだのである。

任天堂も近視眼に陥り、2度も続けて痛い思いをした。スーパーファミコンと、NINTENDO64である。ハードウェアは独自の高度な規格にこだわり、ソフトも高度な開発ができるサードパーティーを厳選、子供のおもちゃ的なゲーム機のイメージ脱却を狙ったが、プレイステーション(PS)、PS2に破れることとなった。また、次世代のニンテンドーゲームキューブもPS2に一矢報いることはできなかった。

そこで、任天堂は「ブルーオーシャン」を見つけることにしたのだ。ブルーオーシャン戦略は戦わない。新たな市場を創り出す。「コアなターゲット」などのような、特定のセグメントを狙わない。新たな市場において、今までターゲットになっていなかった層を丸ごと取り込む。そして、新たな価値を訴求して、今まで持っていた付加価値からいらないものをどんどん捨てていく。任天堂はWiiを開発し、これまでゲームを手に取ったことのない人でも楽しめる、学べる、運動できる道具を提供するというブルーオーシャンを開拓したのだ。

Wiiは大勝利を収めた。VGchartzという家庭用ゲーム機やゲームソフトの売上データを収集し公開しているウェブサイトによれば、「Wii」の累計販売台数は約8700万台と頭一つ抜けている。Xboxは約5400万台、PS3は約5000万台だ(VGchartzの数字の信憑性問題もあるので、あくまで概要として捉えておきたい)。

しかし、ライバルも黙って指を加えているわけではない。6月11日付日本経済新聞の記事によれば、「マイクロソフトやソニー・コンピュータエンタテインメントも体感型の機能を搭載したゲームで攻勢をかける。Wiiは独自性を発揮できなくなり、10年度の世界販売は1508万台と前の年度に比べ27%減った」という。

もはや任天堂とWiiUの前に広がっているのは「ブルーオーシャン」ではなくなってしまった。競合と血みどろの戦いを繰り広げる「レッドオーシャン」である。

3つ巴のレッドオーシャンとなった市場で勝ち抜くためには…

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気になるのは、WiiUには、ターゲットやポジショニングのぶれが垣間見えることだ。

6月9日付日本経済新聞に「戦略分析」という記事で、任天堂・岩田聡社長のインタビューが掲載されている。サブタイトルに「高性能で巻き返し」とある。記事中ではYOMIURION-LINE同様に、「幅広い顧客層の獲得を目指す」とある一方、『「Wii」は家族が主な顧客層だったが、新型機は高画質な映像などで、熱心なゲームファンを引きつけたい考えだ』ともある。

実際、「MS(マイクロソフト)やSCE(ソニー・コンピュータエンターテインメント)のゲーム機に比べ見劣りしていた画像の表示性能も高める」とある。WiiのポジショニングかつUSP(UniqueSellingProposition=自社独自の提供価値)は、映像の美しさではなく、「体感」できること、それを用いて「家族や仲間とワイワイ楽しめる」ということだ。

恐らく開発陣も頭を悩ませたのが、その「体感」がもはやUSPとはなり得ていない現状だろう。昨年11月に発売されたマイクロソフトの「キネクト」。Wiiがリモコンを通じて身体の動きをゲーム機本体に伝えるのに対し、ゲーム機Xboxにプレイヤーの身振り手振りや音声を検知して操作を可能にする入力端末が「Kinect」だ。「発売してから販売台数1000万台を超えた」(6月9日付日本経済新聞)という。任天堂はWiiの性能を高め、WiiUに進化させることで、競合とのガチンコ勝負に戻ってしまった。

任天堂「WiiU」がレッドオーシャンを戦い抜く、もしくはそこから抜けてブルーオーシャンを見つけるためには、高性能なゲーム機のプラットフォームの上で動く良質なソフトで、「誰に」「どのような体験」を提供すればいいのかを、今一度立ち止まって考えてみることが求められる。

まだ未発売なので、そこにどれだけの未知の可能性がつまっているハードウェアなのか、まだ判断がつかない部分もある。任天堂VSマイクロソフトVSソニー・コンピュータエンターテインメントの3つ巴の戦いの行方を追うだけでも、頭の体操になる。

あなたが、任天堂の指揮官だったら、誰にどんな価値を提供するだろうか。

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