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バンダイが放つ「のだめ化粧品」の狙いは何だ?

投稿日:2010/10/29更新日:2019/04/09

バンダイが化粧品のワケ

記事のタイトルは、「不慣れでも使いやすくバンダイ化粧品新シリーズ」とある。「メークに不慣れでも使いやすい点をアピール」とキャプションが添えられた商品パッケージ写真に描かれているのは、まごう事なき「のだめ」だ。上野樹里と玉木宏が主演し、テレビドラマから後に映画化までされて大人気になった『のだめカンタービレ』。二ノ宮知子が描く原作漫画の天然ボケの主人公「のだめ」こと「野田恵」と、作品中にのだめ手製の着ぐるみとして登場する「マングース」の絵が描かれている。

日経MJの記事はバンダイが19日にリリース(リンク:http://tinyurl.com/24ruszo)した内容が元になっている。リリースでは、「『お悩み解消コスメシリーズ』は、女性がもつメークへの様々な悩みを解消する新しいコスメシリーズです。人気マンガ『のだめカンタービレ』の主人公である野田恵(通称:のだめ)をイメージキャラクターとして、のだめのようにお化粧に慣れない女性や苦手な女性でも簡単に、上手にメークが出来るように開発された商品です」としている。商品の第一弾は、昨今のメークのキモであるアイメークには欠かせないながら、失敗すると痛い目を見るアイライナーとマスカラの使い勝手と仕上がりの良さを高めた商品だという。

「何でバンダイが?」と思うところだが、リリースにあるように、バンダイには「クレアボーテ(CreerBeaute)(リンク:http://www.creerbeaute.co.jp/)」という化粧品ブランドが存在する。ラインナップはメーク品と入浴剤、リップクリームやハンドクリームで、何らかのキャラクターとコラボしている。特に注目は11月15日発売予定の「お悩み解消シリーズ」に先行して販売されている2つの有名キャラクターシリーズだ。

10月15日から発売されているのが「峰不二子コスメ」。いわずと知れた『ルパン三世』の永遠のヒロインがキャラクターとなっている。ブランドのコピーには「強さ・美しさをコンセプトに、機能性と不二子のイメージを融合。使うたびに、不二子から強さと美しさをもらえるコスメシリーズです」とある。2種のマスカラ、アイライナー、2種のリップグロスがラインナップされている。

「クレアボーテ」は2006年夏に設置され、F1層(20代〜30代前半女性)ターゲットの化粧品を開発してきた歴史がある。そして、コスメのクチコミサイトでも何度もNo1.を獲得している「ベルサイユのばら」シリーズを3年前に世に送り出した。

「ベルサイユのばら」シリーズの商品には、現在はアイライナーとマスカラ、スキンケアマスクと入浴剤がある。特にマスカラ、アイライナーは、お姉様フェミニン系の「Ray」、大人オトメ系の「bea’sup」、ギャル系の「小悪魔ageha」と現在でも幅広いファッション誌で紹介されている。

同シリーズの特徴は何といっても商品パッケージで。「ベルばら」の通称で女子ならば誰でも知っている漫画・アニメのキャラクターがデカデカと描いてある。池田理代子の描く人物の特徴である、誇張されたまつげや目元、強い目力(めぢから)が、マスカラやアイライナーの威力を無言で訴えかけてくるのだ。

そもそもバンダイを含む大手玩具各社は、女児の関心が玩具からアクセサリーやファッションに映ってきたここ10年で、次々と女児向け化粧品を打ちだしてきた。現在は10歳前後で化粧に関心を持ち始めるといわれており、さらなる低年齢化も進んでいて、玩具店には、おもちゃと並んで化粧品が置かれている。

バンダイも早くから、「セーラームーン」のキャラクターを使った化粧品や、子供服大手のナルミヤと組んで人気アパレルブランド「メゾピアノ」の化粧品を出すなど、キャラクターなどを使って女児の心をわしづかみにするマーケティングや販売のノウハウを蓄積してきている。

「ベルばら」「不二子」「のだめ」は、そのナレッジを生かして、本来キャラクターとは縁の薄い、20代-30代女子の心もつかんでしまおうという革新的な試みであるのだ。

少し毛色は違うが、市場を見渡すと、競合もいる。

なぜ「のだめ」なのか

文政8年(1825年)以来の歴史を持つ老舗、「株式会社伊勢半」の「ヒロインメイク」シリーズだ。「ベルばら」同様、目元を強調し、金髪巻き毛などの懐かしき昭和の少女漫画のヒロインを彷彿とさせるキャラクターが全面に押し出されている。有名キャラクターではないものの、商品のキャッチコピーがキャラクターと同じくらいに目立ち、効果を挙げている。

「もっと天まで届け!マスカラ」は、化粧品口コミサイト「@コスメ」の2009年ベストコスメ大賞マスカラ部門を受賞。ほかにも、「泣き顔美しいアイライナー」「唇よ咲け!リキッドルージュ」「揺るがぬ美肌マット化粧下地」…などなど。ラインナップはアイメークを中心にメークアップ用品とベースメークまでと幅広い。同社社史を見ると、発売は2005年からというから、ほぼ同時期に展開された競合ではあるが最古参であるようだ。

競合環境が激しい、目元ぱっちり少女漫画キャラクター化粧品。ドラッグストアやコンビニで、手に取らせるインパクトが重要なため、見た目も似てきてしまっている。そこで、バンダイは今回、ターゲットをずらすことを狙ったのだと思われる。

今回の「のだめ」では、あえて、「ベルサイユのばら」という作品名や、「峰不二子」というキャラクター名を全面に押し出していない。「のだめカンタービレ」がそれらほどメジャーでなかったり、「のだめ」のキャラクターのインパクトが弱かったりということではないだろう。作品やキャラクターへの思い入れや同一化以上に、「お悩み解消」という消費者に課題解決を訴えたかったのだろう。

確かに作品中で主人公の、のだめこと、野田恵が化粧をしてひどい仕上がりになるシーンがある。しかし、そのいわれを知らなくとも、化粧に自信のない層や、まだ慣れていない若年層などはターゲットになり得る。

リリースによると、「クレアボーテのホームページでは、動画でメイク方法をご覧いただけます」(現在は準備中)とあり、至れり尽くせりの構えを見せている。うまくターゲットを顧客化し、ファン化できれば、さらなるラインナップを拡充してクロスセリングを図ることも大いに期待できる、なぜなら、「ベルばら」や競合商品のターゲットは、もともとメークに関心があり、より効果的に(しかも安価に)仕上げたいと願う人々だ。「のだめ」のターゲットは自信がなかったり、慣れていなかったりする人であるため、囲い込みがしやすい。

ただでさえ、女児向け玩具市場は急速な縮小をしており、加えて少子化というファクターも重くのしかかり、国内玩具市場は期待できない。バンダイがもう一段飛躍するためには、キャラクターやコンテンツを活用するというノウハウの集積にレバレッジを効かせ、新たな領域のビジネスを展開することが欠かせないのである。今回のキャラ化粧品が、どれだけ成功するのか、今後にも注目してみたい。

  • 金森 努

    グロービス経営大学院 教員

    東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道四半世紀以上。コンサルティング事務所、広告を経て、2005年独立起業。 青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。著書「図解 よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)「”いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)。共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。監修「実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則」(TAC出版)。雑誌への連載、講演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。

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