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キャズム越えへ!掃除ロボット「ルンバ」の挑戦!

投稿日:2010/07/09更新日:2019/04/09

ルンバの大躍進

6月30日付日経の家電&eビジネス欄に『掃除ロボ「ルンバ」日本での販売まだ伸びる』との記事が掲載された。メーカーである家庭用ロボット開発の米アイロボット社、コリン・アングルCEO(最高経営責任者)のインタビュー記事である。世界中で激売れしているアップルのiPadを掲げるスティーブ・ジョブズの記事となりというのが、また何とも暗示的だ。

同記事によれば、日本での販売量は毎年2ケタ増のペースといい、さらに2009年11月13日付日経MJの記事によれば、09年3月期は前期比1.5倍の3万2155台、そして、2010年3月期売り上げが前期比2倍というから、まさに右肩上がりの売れ行きとなっている。約5万円〜約8万円という掃除機としては高級な値段を考えても、その伸びは素晴らしい。

インタビュー記事によると、「売れる理由」は、同社がモデルチェンジ毎に改良を重ねているほか、その改良点が日本からの意見を取り入れたものであることも指摘している。その「お客様の声」の収集は、同社の日本における総代理店で宣伝から顧客サポートまでも担当しているセールス・オンデマンド社の功績が大きいようだ。海外製のハイテク製品は故障対応や修理などの不安がつきまとう。その窓口を一元的に運営し、フィードバック情報をアイロボット社に提供して、より日本市場に適合した製品に仕上げているのだ。

インタビュー記事でコリン氏は、日本市場での拡大の理由の一つを、「ほかの国ではロボットに抵抗を示す消費者も多いが、日本はアニメなどで慣れ親しんでいるためか、ロボットが生活に入り込むことを受入れている」と指摘している。しかし、それでは一部のメカオタク層のおもちゃで終わってしまう。例えば、ソニーの犬型愛玩ロボット「AIBO(アイボ)」。AIBOは1999年6月1日、価格25万円のERS-110型が発売され、あっという間に完売した。購入者の多くは画期的な動作をするロボットとしての魅力に惹かれたメカマニアであったという。

ルンバは誰が、どんな理由で買っているのだろうか。セールス・オンデマンド社に聞いてみた。

「“ロボット”という言い方を封印したところからヒットが加速し始めたんですよ」と同社の役員は意外な話を明かしてくれた。

「掃除をしてくれるロボット」という今まで見たことも聞いたこともない概念を、人はにわかには受入れられない。また、ロボットは日本人にとって古くは「鉄腕アトム」であり、「ドラえもん」であり、「ガンダム」だ。まだ、世に出ていないもの。空想の産物。そして、それらが形になっているとしたら、それは「おもちゃ」だ。確かに上記「アイボ」はおもちゃだ。実用化されている二足歩行ロボットのホンダ「アシモ」もあるが、とても一般家庭に導入できる価格ではない。

故に、一般家庭では「使える道具」というポジショニングにリセットする必要があった。ルンバは洗濯機や食器洗い機などの「家電の仲間」なのだと。掃除機も食洗機も全自動。掃除も全自動でやってくれる家電があってもいいじゃないか。そんなアプローチだ。

「おもちゃ」ではなく、「使える家電」であるという認識さえ形成できれば、結果としてそれがロボットの機能を搭載して家の中を動き回っても、日本人的には嫌悪するような感情を持つものではない。それが、アイロボット社CEOの解説の真意のようだ。

主婦層惹きつけたルンバ

そんな背景をもって、ルンバは「自動掃除機」というキャッチフレーズに変更された。そして、2004年から明らかにユーザー層が変わっていったという。それまで同様のマニアな層は一定数存在するものの、家庭において主に家事を担っている女性層が購入意思決定をするようになった。最近では70代の高齢者や30代共働き世帯に裾野が広がっている。まさに、単なる興味ではなく、実利を重んじる層が動き出しているのだ。70代は掃除機の上げ下ろしやコードのセットなど、肉体的負担からの解放を。30代共働き世帯は家事の時間短縮という効用を求めての購入だ。

「掃除は汚れや散らかりというマイナスの状態をゼロに戻す作業でしかない。それを自動化することによって、空いた時間をもっと創造的な仕事をしてもらえるようにする」ということが、ルンバのある生活としての提案であると、同社役員は言う。

パナソニック電工のシャワートイレ「アラウーノ」。同製品は便器の素材に汚れがつきにくい有機ガラス系の新素材を使用。家庭用の市販の中性洗剤を本体にセットしておけば、「トイレがトイレをアラウーノ」というキャッチフレーズどおり「自動洗浄」してくれて、煩わしい日々のトイレ掃除から解放してくれる。新築やリフォームの際には指名買いされるというトイレの便器としては未曾有の大ヒットを記録した商品だ。

花王の液体洗剤「アタックNEO」。液体洗剤を従来の2.5倍という高濃度に圧縮し、少量でも、抜群の洗浄力を発揮。さらに繊維が残りにくく、すばやく泡切れするという新洗浄成分の特徴を活かし、従来すすぎを2回していた洗濯のしかたを、すすぎ1回ですむようにした。キャッチフレーズは「節水・節電・節時間」。すすぎ1回、10分間という時間短縮で家事の負荷軽減を実現したのである。

マニア=イノベーターなユーザーから、「使える家電」としての効用・実利を評価して購入するアーリーアダプターである、先進的な主婦層に購入層を広げた「ルンバ」。

大ヒット商品である「アラウーノ」と「アタックNEO」が、掃除や洗濯というマイナスをゼロに戻す家事の負担軽減、節時間に対するニーズを証明している。その効用をもう一歩認知させることができれば、「キャズム」を超えてさらなる大ヒットにつながるだろう。

  • 金森 努

    グロービス経営大学院 教員

    東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道四半世紀以上。コンサルティング事務所、広告を経て、2005年独立起業。 青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。著書「図解 よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)「”いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)。共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。監修「実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則」(TAC出版)。雑誌への連載、講演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。

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