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ユニクロUJの恐るべき破壊力

投稿日:2010/02/26更新日:2019/04/09

54型、毎月新デザイン

2月17日、ユニクロは新ジーンズブランド「UJ」を発表した。ユニクロがジーンズを発売というと、あまりに当たり前に感じてしまうのか大手メディアではあまり大きな扱いの記事にはなっていない。だが、その詳細を知るに、驚いた。ファッション関連の専門サイトFashionsnap.comが詳しく伝えている。

記事は次のように始まる。「UNIQLO(ユニクロ)」のジーンズが生まれ変わり、新ジーンズブランド「UJ」が誕生した。2010年春は54型を揃え、1,990円〜3,990円の3プライス制を導入。「ジーンズを変えていく。」をコンセプトに、世界一のジーンズブランドを目指す。加えて、ユニクロ取締役COO大苫直樹氏のコメントも掲載している。「グローバル戦略商品であるUJをユニクロの代表的ブランドとして育て、世界で一番売れているジーンズブランドになるのが究極の目標。」とのことで、これまでのユニクロのジーンズの年間販売数である1,000万本を大幅に越える規模の販売を狙うことを示唆した、という。

UJの登場は、ジーンズ製品を扱うすべてのアパレルメーカーを震撼せしめたことだろう。ユニクロを持つファーストリテイリングには、傘下にジーユーがある。昨年3月に990円ジーンズとして市場に登場し、9カ月100万本の販売実績をたたき出した。日経MJのヒット商品番付でも西の横綱に輝いたことも記憶に新しい。UJのラインナップが加わり、グループで1000円〜4000円の価格レンジが揃うことになる。しかもUJは54の型番を持っているのだ。恐ろしいまでの「面」を押さえる戦略だ。

さらに、定番デザインに加え、いま最旬のデザインジーンズを毎月5〜7型リリース(Fashionsnap.com)するというから、時間軸でみれば面ではなく奥行きも持っていることになる。あらゆる人が自分の一本を見つけることができるだろう(同)と伝えているが、ユニクロの戦略は顧客に複数購入させる「アップセ

ユニクロはジーンズ市場を制するか

UJのインパクトはそのポリシーにある。

"UJ"は、3つの「F」を追求する本当に良いジーンズに欠くことのできない「FIT」、「FABRIC」、「FINISH」、という3つの「F」を追求しつつ、歴史や伝統に縛られない新しいジーンズを創造していきます。FIT:あらゆる人が自分にとって最高の一本を選べる豊かなフィットバリエーションFABRIC:厳選された生地と糸が生み出す、世界中のジーンズ好きが驚くほどの素材FINISH:日本生まれの高度な技術を用いた縫製と加工(同社ホームページのニュースリリース)

ユニクロとしての気合いがひしひしと伝わってくる。

かつてロードサイド店だった頃、価格が安く品質はそこそこだったユニクロは、SPA方式の採用とともに品質向上に全力を挙げて「品質だけで勝負したらどこも敵わない」と大手アパレルメーカー幹部が口にするまでに一気になった。次にヒートテックやブラトップ、新しいところでは姿勢矯正下着のスタイルアップインナーなどの「機能性」を高めた。さらに、デザイナーのジル・サンダーと契約し「+J」ブランドを上市しただけでなく、デザイン監修契約によってデザイン性の向上も図っている。

「価格」は人によって安く感じたり高く感じたりするが、金額だけは絶対値だ。安く感じるか否かは、人の金銭感覚だけではなく価格に対していかに「価値」が高いかによる。ユニクロはその「価値」を高め続けているのだ。

「バリューライン」で考えてみよう。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取ると、「安くてそれなりの価値のもの」から「高くて価値の高いもの」という比例した関係が出来上がる。それがバリューラインで、世間の相場だ。アパレル市場、もしくはカジュアルウェア市場でユニクロ全体としては、低価格なのに高価格のものと同等の価値である「スーパーバリュー」のポジションを取る戦略である。

では、UJがジーンズ市場に与えるインパクトを考えてみよう。ジーユーの990円ジーンズからUJのプレミアムラインである3,990円で、バリューラインの価格レンジはすべて押さえたことになる。「ユニクロとしての価格に見合った品質」に従った、「ユニクロとしてのバリューライン上のラインナップ」である。すると、何が起こるか。ほとんどの、いや、全てと言っていいかもしれない。競合となる他社ジーンズは、ユニクロの作ったバリューラインを下回る構図ができあがるのだ。

競合の価値が低いのではない。しかし、価格と価値の二軸で考えれば、金額の絶対値が高くなるためバリューラインの下にポジションされてしまうことになるのである。

今回のUJのインパクトは、スーパーバリューのポジションを取りに行くのではなく、自らのラインナップを「標準」として、競合を全てバリューラインの水面下に撃沈させるという戦略であるということだ。「どうしても特定のジーンズブランドが好き」とか、「ずっとご指名の型番をはいている」とかでなく、こだわりがなければUJ以外のジーンズを購入するのは不合理であることになる。

もちろん、人は経済合理性だけでモノを買うわけではない。筆者のご指名はエドウィン503ZZだ。しかし、もう一本となったら、UJで十分かな?と思ってしまう。昨今の消費者の購買行動はどんどん合理的になっているのだから。

ジーンズ市場はもはや勝負あった感が強い。ユニクロのジーンズは世界にどこまで広がっていくのだろうか。次に狙うのはどの市場か。そしてアパレル市場をユニクロが席巻していく先に、どんな風景が待っているのだろうか……。

  • 金森 努

    グロービス経営大学院 教員

    東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道四半世紀以上。コンサルティング事務所、広告を経て、2005年独立起業。 青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。著書「図解 よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)「”いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)。共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。監修「実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則」(TAC出版)。雑誌への連載、講演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。

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