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コンセプトが「伝わる」か!?スープカフェの試練

投稿日:2010/01/15更新日:2019/04/09

マーケティング観察眼を鍛える

マーケティングセンスを高めるために必要なことは何かと聞かれれば、その一つは間違いなく「観察力を高めること」だといえる。さらに、観察したものを自分なりに「解釈する」。そんな練習がオススメだ。

まずは「ネタ探し」。常に「アンテナ」を立ててそこに何かが引っかかる状態にしておく。そして街を歩いてみるのもいい。もしくは店舗内を観察するのもいいだろう。

コンビニエンスストアのイートインコーナーで飲食をしている消費者の姿に注目しよう。ランチタイムで賑わっている。どんなものを食べている人が多いだろうか。オフィス街のコンビニで筆者が気になったのは、カップスープとおにぎり、総菜、サラダなどを組み合わせて食べている来店客の姿だ。若年層、中年、男女問わず幅広い客層がそんなメニューをランチにしている姿が見受けられた。

まずは商品価格に注目だ。「カップスープとおにぎり、総菜、サラダなどの組み合わせ」は、価格的にはほぼ確実に500円、ワンコインを下回る。カップスープ約150円、おにぎり約120円、サラダ約150円。計420円也。昼食予算の削減を図る傾向が強い消費者にとっては頼もしい存在だ。コンビニのイ—トインコーナーが最近増加しているのも、こうした安価な組みわせで昼ご飯を済ます消費者を、取り込もうという意図だろうか。

他に理由は考えられないだろうか。「価格」以外に明確な要素。例えば、同じ数値的なものを考えるなら、各商品の「カロリー数」。「ダイエットのために低カロリーな“そば”にしようと思ったけど、つい、“天ぷらそば”を食べちゃった!」なんて経験、ないだろうか?で、それは何キロカロリーあるかご存じだろうか?意外とわからないだろう。実は約480kcalである。コンビニ棚の商品には、ほぼ間違いなくカロリー数表示がされている。カップスープ約100kcal、おにぎり約90kcal、サラダ約90kcal。計280kcal。ちょっと低カロリーすぎる気もするが、わかりやすいカロリー数でダイエットに最適だ。メタボ検診が義務化されて以降、女性だけではなく、男性の顧客にもこうした動きが広がっているのではないか。

街歩きで見かけたコンビニの変化。そしてそこで昼食を摂る人々とそのメニュー、商品。その「観察」から「解釈」をしてみた一例だ。「こじつけ」「屁理屈」と思われるかもしれない。しかし、これは「練習」なのだ。

今回は、筆者自身がコンビニを歩いて気になった商品を紹介する。製品コンセプトが「伝わる」、「伝わらない」で見え方が全く異なってしまう象徴的な例を見つけた。

そのフタ、何のため?

発売は昨年11月なので少し前になるが、アサヒフードアンドヘルスケアの「スープカフェ」というカップスープ商品がある。ラインナップはコーンポタージュ、ホットショコラ、クラムチャウダーの3種。商品の特徴は「フタが付いていること」。そう、スタバやタリーズ、その他カフェのテイクアウトでおなじみの、フタの一部が開いてそこから飲むというスタイルだ。

筆者だけなのかもしれないが、この商品をコンビニの店頭などで見ても、全く響かなかった。「フタ付きだと何がうれしいの?“カフェ”ってオシャレッぽいってこと?」。さらに、「スープなのにココアがラインナップされているってどういうこと?」と理解不能。以来、店頭で見かけても手に取ることなく、ほとんど気にもとめない存在になっていた。

ところが、店頭に導入されたPOPを見ると、この商品のコンセプトが分かってきた。「フタ付きだから、片手で飲める」。まだ伝わらない。POPの側面に「デスクで便利、片手で飲める!」と書いてある。さらにPOP上部に書いてあるコピーも読む。「フタ付きだから、冷めにくく、においが広がらない」。

やっと分かった。この商品はオフィスのデスクで、昼食時以外の小腹が空いた時、「コーヒーの代替」として、仕事の片手間に飲むスープなのだ。コーヒーを飲みすぎておなかがじゃぶじゃぶにならないし、カフェインで空きっ腹の胃が痛む事もない。また、人から見られても、いかにも「なにか食べてます!」という風情ではなく飲みものを飲んでいるだけのような様子で食べられる。

小腹を満たす需要なら、ココアのラインナップも納得がいく。コーヒーはおなかはふくれないけど、ココアはおなかがふくれる。「おなかすいたけど、塩味じゃないんだな〜」という時に、ココアはミルクも入ってて、チョコも入ってて、小腹が満たされる。

フタの重要性は、さらに用いられるタイミングが問題だ。昼食時なら昨今デスクで弁当を広げる人も多いため、においを気にする必要はない。しかし、他の人が仕事をしている時に食事っぽいニオイがしてきたらたまらない。それが防げるのだ。

今のタイミングでPOPを投入し、商品コンセプトの浸透を図ったのは、季節的な要因もあるのだろう。厳冬の朝、ぬくぬく毛布の誘惑に負けて寝坊した始業時間、おかずの匂いをさせずに暖かくおなかを満たす事ができたなら、とても幸せだ。そんな利用シーンを想像させる。

コンセプトを整理するためには、5W1H的な考え方が意外とわかりやすい。スープカフェの場合は以下のような感じになるだろう。

・Who?(誰が)=オフィスワーカーが

・When?(いつ)=ランチ以外の小腹が空いた時に

・where?(どこで)=自分の席で

・How?(どのように用いる)=仕事の片手間に、片手で持ってすする

・Benefit?(どんないいことがあるのか)=人目やニオイの拡散を気にすることなく小腹が満たせる

・Why?(なぜ、その便益が享受できるのか)=フタ付きの片手で持てるカップサイズのスープだから

以上がPOPを見て解釈できた、「スープカフェ」のコンセプトだ。

確かにニーズはありそうだ。だがコンセプトがいまいち伝わっていない気がする。POPだけでは弱い。さらにヒットを狙うのであれば、「どんな時に、どんなふうに食べるといいよ!」と明示できれば良いのではないか。もしかすると、「スープカフェ」というネーミングも、利用シーンを想起させるものに変更した方が良いかもしれない。例えば「オフィスDEスープ」とか。

こんな風に、発想も広がる。

“マーケティング観察眼”を働かせて、「屁理屈でもいいから理屈をこねてみる」。そんな練習を繰り返すと、いつか、いつもと違った景色が見えてくる。何気ない街歩きでも、学ぶことが出来るのだ。

  • 金森 努

    グロービス経営大学院 教員

    東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道四半世紀以上。コンサルティング事務所、広告を経て、2005年独立起業。 青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。著書「図解 よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)「”いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)。共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。監修「実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則」(TAC出版)。雑誌への連載、講演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。

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