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【個人と会社の幸せの両立 #3】コロナ禍で在宅勤務に成功した会社・苦戦した会社

投稿日:2021/01/07更新日:2022/07/09

前回までは、働き方改革の進捗と「ローカルルール」について述べてきたが、働き方改革の中でも新型コロナウイルスの影響で一気に拡大したことといえば、在宅勤務であろう。本章以降は特にこの在宅勤務について掘り下げていく。急速な変化の中で、見えてきた課題は何か?

新型コロナ流行後に、在宅勤務を導入していなかった会社と新型コロナ以前から在宅勤務を導入していた会社に話を聞いた。複数社インタビュー調査をした中で、印象的だった4社を以下で紹介する。

■雰囲気が悪化した組織--在宅勤務で加点評価から減点評価に

Ⅾ社は、コロナ禍の中で在宅勤務を開始した。在宅勤務制度は新型コロナ以前からあったが、社内には浸透していなかった。そのためインフラの整備が間に合わず、開始当初は通信容量2ギガの携帯を支給するのみだった。その後、自宅で使用できるPCが支給されたものの、他社とのオンラインミーティングができない仕様になっており、満足に業務を進めることができない日々が続いた。

また、E社は、社内のコミュニケーションに課題を感じていた。オフィス勤務ならば同僚にいつでも話しかけられるが、在宅勤務だと勝手が違う。あらかじめオンラインミーティングを設定しないとコミュニケーションが取れないことがもどかしく、疲労感につながった。さらに、在宅勤務は部下への評価もシビアにさせた。対面で仕事をしていたときは、基本は加点方式で庶務的な業務ができているかを含めて評価をしていたが、在宅勤務になるとアウトプットと生産性を軸に評価するため減点方式になる。その結果、以前よりもクオリティの高いアウトプットが求められ、評価の基準が変わってしまい、不満を持つ社員もいた。

■在宅勤務が円滑に進んだ組織--新型コロナ以前から柔軟な働き方に取り組んでいた

一方で、新型コロナ以前から在宅勤務が実質的に機能していた会社は、上記2社と比較すると、課題を感じずに過ごしている様子だった。

B社は新型コロナ以前から在宅勤務が普及していたが、2020年4月の緊急事態宣言を受けて、IT環境を整えて原則全従業員が在宅勤務ができるようになった。在宅勤務に必要なWi-Fiやデスクなどの購入費用は、会社が負担してくれるため、作業環境に困ることはなかった。また、全社的にオンライン飲み会が推奨され、会社からお酒やおつまみ代の補助金が支給された。

F社は、在宅勤務によって分断された会社の一体感を維持するため、月1~2回執行役員からビデオメッセージが配信されている。在宅勤務では、労働時間の管理が課題としてあげられる。一般的には怠けがちになると言われている在宅勤務だが、私たちのインタビュー調査では、通勤時間が無いため仕事とプライベートの切り替えができずに、就業時間を超えても業務をしたり、休憩時間を取らずに働いてしまったりと、長時間労働になってしまうという声が多い。同社は、以前からスーパーフレックス制度を導入しており、22:00までなら働く時間を自分の裁量で決めることができ、プライベートのオンオフや働きすぎの問題は生じていないようだった。

つまり、在宅勤務になると、リアルで抱えていた問題がより深刻化する傾向があった。一方で、在宅勤務を以前から導入していた企業では、普段からマネジメントが機能しており、仕事の役割分担が明確であったため、在宅で仕事をする場合でも自律的に業務に取り組んでいた。

■柔軟な働き方と役割の明確化がカギ

先に紹介した課題を踏まえて、インタビュー調査から在宅勤務の課題を5つのカテゴリーに分類した。(表2参照)

課題を整理してみると、どの企業も同様の課題に直面すると想定できる。しかし、より多くの課題を感じている企業とそうでない企業の差は何だろうか。それは、大前提として、社内制度の取り組みが影響していると考えられる。

新型コロナ以前から在宅勤務を導入している企業は、既に全社的にインフラ整備ができており、スムーズにほぼ全ての従業員が在宅勤務に移行できていた。また、作業環境の整備、コミュニケーションの活性化のための補助金、愛社精神や理念を伝えるための役員メッセージなどがあった。

一方、コロナ禍で在宅勤務を始めた企業は、社内制度自体が整備されておらず、付け焼刃のような状態で移行したことから、課題が散見されたと考えられる。

また、物理的なインフラ整備だけでなく、仕事の役割の明確化ができていること、マネジメントが行き届いている組織であるということが在宅勤務のうまくいく要因になるだろう。

■全体的なルールでは解決できない課題が残る

上記で挙げたような社内制度で、在宅勤務による課題の解決を図っているものの、全社的な取り組みだけでは不十分な側面もある。

上記でも社内制度でオンライン飲み会の補助金を出す事例を紹介したが、コミュニケーションの場として業務外での機会提供をしている企業は多い。ただし、実際は業務時間内でのコミュニケーションの量と質に課題を感じている場合がある。オフィスだと自然に交わしていた雑談がなくなり、部署やチームでのコミュニケーションが不足し、他のメンバーに仕事を頼みにくいといった声も聞こえる。

また、社内制度としてPCのログオフなどで労働時間の管理は徹底されているが、先に述べたとおり、在宅勤務だと仕事とプライベートのオンオフがつきづらく、「だらだらしてしまう」「ついやりすぎてしまう」という傾向が改善されていないという企業もある。

インタビュー調査を進めると、一見、在宅勤務がうまくいっているように見える企業にも社内制度で埋まらない課題があり、その課題を解決するためにローカルルールで対応していることがわかった。

次章では、このローカルルール対応についてさらに掘り下げてみたい。

  • 近藤 遥佳/白井 啓子/高橋 美喜/松本 千恵/林川 真理子

    近藤 遥佳:グロービス経営大学院2020年卒業。日系SIerの営業マネージャーとして、運輸業界へのソリューション提案、チームマネジメントを担当。

    白井 啓子:グロービス経営大学院2020年卒業。広告会社の営業統括部署にて、新規顧客開発の為の調査、営業力強化の為の情報発信などの業務を担当。

    高橋 美喜:グロービス経営大学院2020年卒業。フリーランスの組織・キャリアコンサルタントとして、企業や大学で研修講師、ベンチャー企業の採用支援、個人のキャリアカウンセリングに従事

    松本 千恵:グロービス経営大学院2020年卒業。新卒で日系企業に就職。大学院在学中に第一子を出産、子育てと仕事に奮闘中。

    林川 真理子:グロービス経営大学院2020年卒業。新卒で日系企業に就職後、外資系物流会社に転職。カスタマーサービスとして国内外の顧客の物流業務のサポートにあたる。

監修

  • 舞田 竜宣

    グロービス経営大学院 教員

    東京大学経済学部卒業(学位:経済学士) 世界最大級の組織人事コンサルタント、ヒューイット・アソシエイツの日本代表(社長)を経て、2008年にHRビジネスパートナー社を創業し現在に至る。著書は、「MBB:「思い」のマネジメント実践ハンドブック」(東洋経済新報社)、「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(日本経済新聞出版社)、「行動分析学マネジメント」(同)、「社員が惚れる会社のつくり方」(日本実業出版社)、「10年後の人事」(日本経団連出版)、「18歳から読む就『勝』本」(C&R研究所)、「24時間の使い方で人生が決まる」(ファーストプレス)、「A&R優秀人材の囲い込み戦略」(東洋経済新報社)、「技術開発部門を活性化させ、創造力を高める『技術人材の開発とマネジメント』」(企業研究会)など多数。

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