新型コロナウイルスの影響により、多くの会社が前期や予算に比べて収入が減少しています。新型コロナウイルスのように、予期せぬ突発的な事態の発生により収入が大幅に減少した場合、その影響は損益計算書(P/L)では特別損失に計上するのでしょうか。
特別損失とは?
特別損失は、経常的に行われる会社の営業活動や金融活動以外から発生した臨時的な損失の内、会社の企業規模等から勘案して金額的規模の大きな損失を言います(参照:特別損失とは?通常の「費用」や特別利益との違い)。
会計ルールでは、特別損益に属する項目として以下を例示しています。
【臨時損失】
・固定資産売却損益
・転売以外の目的で取得した有価証券の売却損益
・災害による損失
なお、以前は過年度における引当金の過不足修正額などの前期損益修正に関する損失も特別損失として取り扱われましたが、現在は対象外となっています(企業会計原則六、企業会計原則注解12より)。
新型コロナウイルスの影響の取り扱いは?
多くの会社にとって新型コロナウイルスを原因とする収入の減少は臨時的であり、その金額的な影響が著しい会社にとっては一見、特別損失の要件を満たすかのように思われます。
■新型コロナウイルスによる収入減の取扱い
新型コロナウイルスによる収入の減少は予算や前期に比較しての減少分、言わば機会損失に相当する損失であり、実際に発生した損失ではありません。P/Lには実際に発生、あるいは近い将来発生することが見込まれる損失のみが計上され、機会損失のように実際に発生していない損失は計上されません。したがって、新型コロナウイルスの影響による収入減少の金額は特別損失に計上することはできません。
■稼働率低下による営業損失の取扱い
収入は減少したものの人件費、家賃、減価償却費等の固定費を収入の減少に応じて機動的に削減することができなかった場合、営業損失が発生することがあります。
この場合の営業損失については、新型コロナウイルスという臨時的な要因による損失であるため、多額に上る場合は特別損失に計上することが考えられます。しかし、営業損失の内、新型コロナウイルスの影響による営業損失の金額を客観的に区分把握することは難しいため、従来、実務上はこのような営業損失を特別損失として計上することはなかったと思われます。
■新型コロナウイルス対応措置
これに対して、日本公認会計士協会が公表した「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項」によれば、政府や地方自治体による要請等を受け、営業停止期間中に発生した固定費、イベント開催の準備又は停止のために直接要した費用、工場の操業を停止又は縮小したときの異常な操業度の低下による製造原価の上昇分は、特別損失に計上することを認めています。
高島屋など、既に四半期決算において販管費の一部を特別損失として処理している例も見られますが、今後も同様の例が増加しそうです。
これは、政府や地方自治体の要請というトリガーによって発生した営業停止、操業停止のように対象期間等が特定されることによって、当該期間に対応する固定費等を区分把握することが可能になるためと考えます。
なお、政府や地方自治体の要請や声明等には関連せずに、通常の事業活動の業績不振等による営業損失までもが特別損失として計上できることにはなりませんので、注意が必要です。