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リスクテイク型思考のすゝめ vol.2 リスクテイクで新規事業に挑む―メニコンのサブスクや三菱商事の戦略展開ー

投稿日:2020/07/17更新日:2020/09/26

VUCAの時代だからこそ、リスクテイクの企画に可能性あり

リスクテイク型思考のすゝめ vol.1」では、リスクを避けられない時代だからこそリスクを味方につけ、“仕事ができるビジネスパーソン”になるための視点や姿勢を考察した。本vol.2では、そのリスクテイク思考を仕事に活かし、様々なステークホールダーに報いることの重要さを考察したい。

日本国内の経済状況は1990年代にバブル経済が崩壊して以来、停滞した状況が続き、近年では変化が激しく(Volatile)、先行きの見通しが悪く(Uncertain)、複雑(Complex)、かつ、不明瞭な(Ambiguous)時代に突入した。いわゆる、VUCAの時代の到来である。日本銀行は経済の活性化を目指し、“異次元”の量的金融緩和政策を通じて世の中に出回るおカネの量を増やそうと試み続けたが、残念ながらその努力が結実したとは言い難い状況が継続している。

一方、少し見方を変えれば、先行きが不透明だからこそ、これまで注目されていなかったことや新しいことも脚光を浴びる可能性が広がったとも言える。個人レベルで言えば、ちょっとしたアプリの開発、スマートフォンを使ったコミュニティ作り、パラレルキャリア形成など、色々なことを提案し、実行できるのではないだろうか。結果が確実視されない企画や行動~リスクテイク型思考~が、寧ろ大きな飛躍をもたらすかもしれないのである。

また、企業にとってもリスクテイクする視点や戦略がますます重要になってくる。「企業がリスクを取る」と言うと、大規模な資源開発や宇宙開発事業、或いは、企業買収などを思い浮かべるかもしれない。が、例えば、最近注目が集まるサブスクリプションビジネス(利用者から定額を徴収し、モノ・サービスを原則として追加料金なしで提供する仕組み)も実はリスクテイク型ビジネス、つまり投資型事業に類別できるのである。

企業が提供するサブスクも、リスクテイクの1形態

トヨタ自動車の月額2万円代から車が使える“KINTO”、アマゾンの“Amazonプライム・ビデオ”、Oisixの食材の定期便“おいしっくすくらぶ”、楽天のコスメの定期便“RAXY”などのサービスを耳にしたことがあるのではないだろうか。

サービス利用者にとっては、定額であるため支出管理がしやすく、基本的には追加費用を払うことなく様々なモノ・サービスを利用し放題。従って、常に最新バージョンを利用可能であり、場合によっては契約期間途中であっても解約ができる。極めて「気軽な」サービスと言える。

一方、このビジネスモデルをサービス提供者側(=企業)から見ると、ビジネスの結果が分からないうちから大量の在庫を確保し、巨額のIT投資を行い、大々的に広告宣伝し、データサイエンティストや営業スタッフを雇用・増強するなどの準備をする必要がある。つまり、“先行投資”型ビジネスの典型例と言えよう。この様に、株式投資やM&A(企業の合併や買収)だけが投資ではないことが分かる。

もちろん、これらのサービス提供者がリスクテイクした結果、当初の事業計画通りの売上や収益が見込めず大幅な損失を出してしまう可能性はある。リスクとは「当初想定した結果や将来予測から、実際の結果が乖離してしまうこと、ばらつくこと」であるためだ。サブスク型ビジネスではサービスの利用者に対して定額をチャージするが、その課金水準を低めに抑える必要がある。課金額が高いと「モノ・サービスを買ってしまった方が得では」と利用者が感じ、サブスクサービス利用を控えてしまう可能性があるためだ。

このため、特にサブスク型サービスを新たにローンチ、或いは、現行の「売り切り型」サービスから転換した直後のタイミングでは売上が上がりにくく、場合によっては赤字に転落することも珍しくない。どのビジネスにも言えるが、サブスクビジネスも決して簡単に利益を稼げるビジネスモデルではない。

しかし、サブスクリプションモデルで成功している企業にはいくつかの共通項がある。例えば、「サブスク元年」と言われる2019年よりもはるか前の2001年からこのビジネスモデルを採用したメニコンは、それまでリーチできなかった顧客セグメントに裾野を広げる形で収益を伸ばしてきた(total addressable market“TAM”の拡大)。利用者が“メルスプラン”に加入すると、汚れやキズが付いたり、度があわなくなったコンタクトレンズを同社の店頭に持ち込むことで新品のものと無料で交換できる(月額1,800円から)。メニコンは利用者に対してメルスプランがもたらす「安心感・信頼感」を前面に押し出し、これまで目のトラブルを感じてもコンタクトレンズ利用を敬遠する顧客層、あるいは、定期的なメインテナンスを怠りがちだった顧客層を取り込むことに成功した。メルスプランを導入後、年率4-5%の成長率で順調に会員数を伸ばし、2019年3月期決算では連結売上高の半分以上をこのメルスプランで稼ぐ収益構造を構築した(現在の会員数130万人超)。

上記からもわかる通り、ビジネスの結果が悪い方(ダウンサイド)に出てしまっても、収益や損失を最小限に抑える工夫を施した上でリスクを取っているのである。

この様に、投資とは「リスクテイクの1形態」と言える。その本質は「おカネを回収に先立って投じること」、そして「最悪の事態に備えて、リスクをうまくコントロールすること」と整理できる。

リスクは大きいが、利益も大きくなるリスクテイク型事業

他の事例を見てみよう。三菱商事も投資型ビジネスに舵を切り、大きく戦略転換した格好の例である。同社は2000年初頭にエネルギー資源開発ビジネスに対して積極的に事業投資を推進する戦略を強く打ち出し、それまで500億円前後で推移していた当期純利益を5000億円レベルにまで引き上げたのである。会計基準の変更もあり単純比較は難しいが、以下のグラフが示す通り、事業投資戦略を発表した2000年初頭後、利益水準のバラツキ、つまりリスクは、それ以前と比べて大きくなったが、利益水準そのものも長期的に見ると増加傾向に転じたのは事実である。

ここで冷静に考えて欲しい。あなたは誰のおカネで日々仕事をしているのだろうか?業界、職種、勤務形態がどの様なものであれ、あなたが仕事にまい進しその対価を受け取ることができるのも、Day-1で株主や銀行からおカネを提供してもらい、広義の意味で仕事ができる環境を整えてもらったからではないだろうか。従って、株主や銀行(=資金提供者)にはその資金提供に見合った利益やリターンを返還する必要がある。そのためにも、リスクが高い投資型ビジネスにも積極的にチャレンジし、資金提供者に報いるべきではないだろうか。

こうした対資金提供者とのやり取り、或いは、おカネを通じたコミュニケーションをしっかりと行うために、まずはあなた自身がリスクの本質を理解し、そのリスクをコントロールする術を知る必要がある。VUCAの時代だからこそ、トレーディング型のビジネスモデルに加えて、リスクテイク型のビジネスを上手く組み合わせ、“仕事ができるビジネスパーソン”として会社でリーダーシップを発揮する良いタイミングなのではないだろうか。

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