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クールな「ユニかぶり」。ユニクロのステキなCSR

投稿日:2009/07/10更新日:2019/04/09

下取りセールに感じる抵抗感

さすが日本経済新聞という流麗な文章だ。2009年6月22日付け朝刊のコラム「春秋」は、こう始まる。百貨店にしても、スーパーマーケットにしても、消費者にモノを「売る」のが本来の仕事。そんな大手小売各社が今年、世に放ったヒット企画は、消費者からモノを「買う」ことだった。下取りセールを「消費者からモノを買う」とは言い得て妙。

記事は2009年6月18日に発表された日経MJ2009年上期ヒット商品番付の内容を指している。西大関に列せられたのは「下取りセール」。春秋に、不用になった服や靴、かばんに傘、布団、食器、家電製品などを店まで持参すると、現金や値引き券に交換してくれる、と書かれているとおり、まさに何でもありの様相を呈している。

ヒット商品番付に挙げられているのは、各社のビジネスにとって大いに貢献しているからに他ならない。日本の家は狭く、モノであふれている。たんすの肥やしも多い。場所を空ければモノを買ってくれるはずとの読みとの指摘はまさにその通りで、各社ウハウハなのだ。

一方で批判の声も少なくない。需要喚起になるものの、まだ使える物をリサイクルの名の下に買い換えをさせるという、環境負荷に対してである。まだエコな家電、自動車への買い換えは長期的にはプラスにはなると言えるのかもしれないけれど、“モッタイナイ”的な観点からすると、どうもエコな感じはしなくて、少なくとも筆者は気がひける。

春秋は、買い取った物は再利用や途上国などへの寄付に回ると聞けば、まだ使えるものを捨てる後ろめたさも和らぐ。捨てるときにあれこれ分別する手間も省けるとのおまけ付きだという事例も紹介している。このパターンで出色なのがユニクロの「全商品リサイクル活動」なのだ。

エチオピアの男性と「ユニかぶり」

ユニクロのビジネスにおけるインパクトは、他社の「下取りセール」における意義と同じく、顧客にタンスの肥やしを整理させ、新しいものを購入させる効果だ。特にユニクロにおいては、とりわけこの要素は重要だ。なぜなら、昨今のユニクロは品質向上が著しく、めったに衣類が伸びたり縮んだり、色落ちしない。つまり、ずっと着られちゃう。そのあたりは基本的にワンシーズン使い捨てのファストファッションと一線を画している。

新しいのが欲しい。でも前のが着られちゃう。だから買えない。すっごいジレンマ。顧客にとってはジレンマからの開放。ユニクロにとってはセールスの道が開けるという、素晴らしいソリューション。ユニクロは数を売ってなんぼのビジネスモデルなのだから。

「でも、結局まだ着られるのに、リサイクルに出すって、家電やクルマに対する抵抗感と変わらないんじゃないのか?」という点も大丈夫なのだ。

リサイクルに出された衣料は、発電用燃料としてリサイクルされたり、断熱材や工業繊維としてリサイクルされたりもするが、90パーセントはタンザニア、ウガンダ、エチオピアなどの難民キャンプに寄贈しているという。つまり、9割は「リサイクル」ではなく、「リユース」である。環境負荷の元凶にはなっておらず、人助けができているのだ。

「あなたにとって不要な1枚が、誰かにとって必要な1枚となる」

「全商品リサイクル活動」のコピーである。考えてみれば、これってスゴイことではないだろうか。「誰か」って、地球の裏側にある難民キャンプで暮らしている人々なのだ。貧しく厳しい暮らしをしている人々に、自分たちができることは少ない。せいぜいポケットの中の小銭を募金するぐらいだろうか。それが、自分のお古の衣類を提供するという直接的な貢献ができるのだ。

いま、世界はますます「スモール化」「フラット化」が進んでいます。フラット化されたことによりグローバルに統合された世界では、遠く離れた地域で起きる事象も、私たちの日々の生活に大きく影響を及ぼします。つまり、経済的に、社会的に、技術的に、世の中は今、相互につながっているのです。

これは、IBMが新たに掲げたコーポレートビジョン「SMARTERPLANET」を説明するコピーの冒頭だ。

IBMが言いたいこととはちょっと違うけれど、世界のスモール化は我々の衣料を地球の裏側まで届けてくれることにつながり、難民キャンプの人々が我々と同じユニクロの服を着ているというフラットさが実現されている。

活動の様子を伝えるフォトリポートで紹介されているエチオピアの若い男性は、筆者が持っているのと同じ、赤いポロシャツを着ている。人とユニクロの服がかぶることを、最近では「ユニかぶり」というそうだが、こんなかぶり方はむしろうれしくなる。

グローバリズムの恩恵を受け、いい物を安く消費することが出来ている。その裏では、政治的、地政学的にシステムからこぼれ落ちる国々もあるのは周知のとおりだ。ユニクロが行っているCSR「全商品リサイクル活動」は、経済のシステムを回し、自社のビジネスを加速させながらも、こうした国々を支援する。無駄がない。

新橋の真ん中で思わず叫びたくなった。「こんなユニかぶり、ありじゃね!」。

  • 金森 努

    グロービス経営大学院 教員

    東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道四半世紀以上。コンサルティング事務所、広告を経て、2005年独立起業。 青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。著書「図解 よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)「”いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)。共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。監修「実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則」(TAC出版)。雑誌への連載、講演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。

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