3月末の本決算を控えて、業績不振等により固定資産の減損損失を発表する3月決算会社が目につきます。
減損損失とは?
減損損失とは、固定資産の価値が大きく低下していると判断される場合に、将来に損失を繰り延べないために、その固定資産の帳簿価額を切り下げることです。切り下げられた金額をP/Lに減損損失として計上します(詳しくは、「減損損失とは?減損会計の概要を解説」を参照ください)。
固定資産の減損は、稼働率の低下などによる工場の製造設備等の収益力が低下している事実が認められ、将来もその状況が継続するだろうと見込まれる場合に行います。では、将来において固定資産の収益力が改善する場合には過去に計上した減損損失はどうなるのでしょうか?一度計上した減損損失を取り消すことは可能なのでしょうか?今回は減損損失の取消(戻し入れ)について説明します。
減損損失戻し入れの会計ルール:日本とIFRSの違い
減損損失の戻し入れは、会計ルールにより異なります。日本の会計ルールでは、減損対象となった固定資産の収益力が回復する場合においても、一度計上した減損損失を将来において戻し入れることは認めていません。一方、IFRS(国際財務報告基準)では、減損損失の戻し入れをルール上認めています。
これは日本の会計ルールとIFRSの減損損失に対する考え方によると言えるでしょう。日本の会計ルールでは減損の戻入をルール上認めていない分、減損すべきかどうかの判断がより慎重になります。
IFRSでは現時点での固定資産の評価に重きを置きます。そのため、固定資産の価値が帳簿価額を維持しているという積極的な根拠がない限り積極的に減損損失を認識します。一方で、将来の状況の変化により固定資産の価値の回復が認められれば減損損失の戻し入れも可能となります。
なお、日本の会計ルールでは減損損失はP/L上特別損失として計上されるのが通常ですが、IFRSでは減損損失を営業費用として営業利益へ反映します。したがって、減損損失の戻し入れによる利益(減損損失戻入益)も営業利益に反映されます(IFRSでは特別損益の使用は禁止されています)。
いくらの減損損失を戻し入れることができる?
減損の戻し入れはどこまで可能なのでしょうか?減損前の帳簿価額まで戻し入れることができない場合がありますので注意が必要です。
製造設備を例にとって説明します。例えば、帳簿価額100の固定資産を40まで減損し、2年後に固定資産の収益力が回復したため減損の戻し入れを行うとします。この場合、帳簿価額100まで減損損失を戻し入れるのではなく、減損をしなかった状況から2年間減価償却が進行した場合の帳簿価額まで減損損失を戻し入れます。年間の減価償却費を20とすれば、帳簿価額(100)は2年後には60(100‐20*2年)になっていますから、20(60-40)の減損損失を戻し入れることになります。
全ての減損損失を戻し入れることができる?
IFRSでは減損損失の戻し入れが可能です。しかし、IFRSにおいてものれんの減損損失の戻し入れは認められていません。
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