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AfriMedico 町井恵理氏「グロービスと出会って『自分が動けば社会は変わる』と思えた」

投稿日:2020/01/29更新日:2020/03/10

MBAの真価は取得した学位ではなく、「社会の創造と変革」を目指した現場での活躍にある――。グロービス経営大学院では、合宿型勉強会「あすか会議」の場で年に1回、卒業生の努力・功績を顕彰するために「グロービス アルムナイ・アワード」を授与している(受賞式の様子はこちら)。アフリカに「置き薬」の仕組みを導入して医療を届け、2019年「創造部門」で受賞した認定NPO法人AfriMedico代表理事の町井恵理氏に、MBAの学びをどのように活かしたのか聞いた。

「人を動かす力」が足りなかった

知見録:受賞、おめでとうございます。早速ですが、そもそも海外の医療ボランティアに興味を持ったきっかけは?

町井:マザー・テレサのもとでボランティアを募集していたのでたまたまインドにバックパッカーをしていた際に興味本位で参加してみたんです。何者でもない自分でもできることがあるんだな、と実感して、ボランティアにのめり込むようになりました。

そして、青年海外協力隊に参加しようと決めたのですが、社会の仕組みをわかっていない状態で参加しても役に立てないと思いました。それで、製薬会社に入社したんです。でも、いざ就職してみたら仕事が楽しくなってしまい、結局6年間、そこで働かせてもらいました。その後、青年海外協力隊に参加し、2年間、アフリカでマラリアの啓発活動に取り組みました。

知見録:帰国後、グロービスに入学されたのは、なぜですか。

町井:現地に行ってみて、自分の能力の限界を感じたからです。自分なりに一生懸命、啓発活動をしたつもりでしたが、満足のいく結果が出なかった。「マラリアの原因はなんですか?」という問いに、「蚊」と住民答えることができたのは、当初は20%ほどでした。それを2年で、80%まで伸ばすことができた。そこまではいいんです。ところが、「蚊帳の中で寝ていますか?」といった行動の変化について尋ねると、まったく変わっていなかったんです。私には人を動かす力、マネジメント能力が足りないと痛感しました。

知見録:グロービスを選んだ決め手は?

町井:いろんな学校を見学したのですが、私、講義を聞いているとすぐ寝ちゃうんです(笑)。でも、グロービスの授業はディスカッション中心で、寝る暇なんてありませんでした。当時、医学部に入ることも考えていました。でも、医者になっても、今のアフリカの現状を変えることができるとは思えなかった。それより、仕組みを変えていくほうがインパクトを残せると思ったんです。

グロービスを選んで本当によかった

知見録:そうして、2011年に大阪校に入学されます。当時の町井さんを知る人たちにヒアリングしたところ、最初はもの静かな人だったと聞きました。それがどのように変わっていったのですか?

町井:いえ、変わっていないと思いますよ(笑)。今でも前に出るのは苦手ですし、「私についてこい」というタイプのリーダーではありません。よく言えば、サーバント型リーダーでしょうか。志も当時から変わっていません。「アフリカと医療をつなぎ、薬を通じて貢献する」ことが、グロービス入学当初の志でした。そして現在、AfriMedicoの経営理念は、「医療を通じて、アフリカと日本をつなぎ、健康と笑顔を届ける」です。

知見録:まったくブレていませんね。AfriMedicoは在学中に立ち上げたのですか?

町井:はい、前身となる団体を2014年に立ち上げました。きっかけは、山中礼二先生のビジネスプラン型「研究プロジェクト」に参加したことです。先ほどもお話ししたように、私は率先して前に出るタイプではありません。でもこの講座は、将来的に会社やNPOを立ち上げることが受講の条件だったんです。本当に自分にできるだろうか、と迷いながらの立ち上げでした。 

知見録:まずメンバーを集める必要がありますが、どうやって集めたのですか。

町井:最初は、全然集まりませんでした。SNSで募集しても、「いいね」もコメントもまったくつかない。もうやめようかなと思っていたとき、同期1人が「やってもいいよ」と言ってくれました。そして、あすか会議」に参加した際にいろんな人に声をかけたら、一気に10くらい集まりました。グロービスパワーですね(笑)。その中から、本当にミッションに共感してくれた4人で、前身の団体を立ち上げました。

知見録:その後は、順調に人が増えていった?

町井:人を集めるのはゼロイチが大変なんです。1人でも集まれば2馬力になるので、どんどん広がっていく。以降、人手に困ることはなくなりました。これが他の学校だったら、難しかったでしょうね。グロービスを選んでいなかったら、AfriMedicoは生まれていなかったと思います。

「パラレルワーク」のメリットとは

知見録:置き薬をアフリカに広めるというアイデアは、どのようにして生まれたのですか。

町井:研究プロジェクトで、100ビジネスモデルを考えたんです。その中で最終的にたどり着いたのが、置き薬のモデルでした。一番迷ったのは、株式会社にするか、NPOにするかでした。深夜、オンラインでミーティングしていたときに、あるメンバーから「町井さんは何がしたいんですか?10分あげるので、1人で考えてください」と聞かれました。考えた結果、アフリカに医療を届けるという課題解決からブレたくない、それならNPOのほうがいい、と判断したのを覚えています。 

[caption id="attachment_42098" align="aligncenter" width="4032"] タンザニアの現地スタッフが置き薬について説明している様子[/caption]

知見録:やはり株式会社とは違いますか?

町井:株式会社は当然、利益を追求していく必要があります。一方、NPOの目的は課題解決です。私は、課題解決にコミットしたいと思ったんです。結果的にミッションに共感してくれる人ばかりが集まってくれNPOを選んで本当によかったと思っています。もし株式会社にしていたら、アフリカは最後のフロンティアとも言われているので、投資目線の人ばかりが集まったでしょう。

知見録:町井さんは現在も、外資系製薬会社のMRとして、フルタイムで働いていらっしゃるそうですね。 

町井:学長の堀さんには「まだ辞めていないの?」と言われます(笑)。私だけでなく、AfriMedicoのメンバーは現在、約40人いるのですが、全員、別の仕事を持っています。これもひとつの現在の組織の形だと、私は考えています。 

知見録:パラレルワークは大変ではありませんか?

町井:発足当時は1人で仕事を抱え込んでしまい、血尿が出るくらい大変でした。これもグロービスで学んだことですが、組織が成長し、メンバーが増えたら、体制を変える必要があることを実感しました。自分だけで頑張るのではなく、組織を強くすることが大切です。

そこで、「チーム制」「リーダー制」を設けました。それぞれのチームにリーダーをつけて、リーダーがチームを回していくようにしたんです。その結果、代表としての仕事に集中することができるようになりました。人に頼れなかった自分が、壁をひとつ乗り越えることができたなと思っています。

知見録:とくに女性はパラレルワークをどう実現するか、悩んでいる人も多いと思います。

町井:でも、時間的な制約があるのも悪くありません。「自分が本当にやるべきことは何か?」という肝が見えてくるからです。逆に、自分がやらなくてもいいこと、苦手なことは他のメンバーに頼ればいい。

また、パラレルワークだと視野が広がります。コンサルタント、エンジニア、家電量販店に勤めている人など、さまざまな業種からメンバーが集まっているので、自分では考えつかないような意見が出てきたりする。いい相乗効果が生まれていますね。 

私だからつくれる家族の形がある

知見録:パラレルワークは、本業にも活きていますか。

町井:そうですね。私の場合、上の目線と下の目線、両方を理解できるようになりました。AfriMedicoではトップの立場ですから、会社の社長や上司の気持ちもわかるようになりましたし、会社では下の立場ですから、AfriMedicoのメンバーの気持ちがよくわかります。こうした「視点移動」ができるようになったのが強みですね。

また、AfriMedicoの代表として、プレゼンのスキルや、組織のマネジメント能力を磨くことができたので、それも会社の仕事につながっています。実際、AfriMedico本気である程度の期間コミットした人は、みんな会社で昇格していますね。

知見録:それはなぜだと思いますか。

町井:会社では与えられた仕事をこなすことが多いですが、AfriMedicoでは自分で課題を見つけて、自分で動かないといけない。正しいか、正しくないかも自分で判断しないといけないし、人を動かす必要もある。その経験が成長につながるのかもしれません。言われた仕事をやるだけでは、自分の身にならないと思うんですよ。自分で動いた仕事は、経験値も、仕事の重みもまったく違います。

知見録:町井さんはご結婚、ご出産もされていますが、家庭とはどう両立されているのですか。

町井:もともと結婚する気はなかったんです。立ち上げのときに当時の恋人に振られ、研究プロジェクトの仲間に「おめでとう、これで専念できるね!」と言われたのをよく覚えています(笑)。その後、今の夫と出会ったんです。プロポーズされて、初めは受けましたが、将来的にアフリカに住むかもしれないと考えると、やっぱり無理だなと思いました。それで結納も終わっていたにもかかわらず、「破棄させてください」と伝えたんです。

知見録:それでも結婚に至ったのは?

町井:彼が、「アフリカにいつでも飛び立ってくれて大丈夫」と言ってくれたんです。子どもも「産んでくれたら、あとは僕が育てる」って言ってくれて。そこまで思ってくれるならということで、結婚を決めました。

もちろん最初は悩みました。母親が何週間も家を空けることを、世間ではよく思わない人もいるし、私自身、子どもと離れることに対して寂しいと感じることもあります。でも、私だからつくれる家族の形があると思うし、私にしか伝えられないこともあると思う。今年は子どもを一緒にアフリカへ連れていこうと考えています。

自分が動けば社会は変わる

知見録:今後の展望をお聞かせください。

町井:まず、インパクトをしっかり残していきたいですね。現在、置き薬を届けているのは206世帯ですが、2030年までにこれを10万世帯まで増やすつもりです。地域もタンザニアだけでなく、アフリカ全土へ展開していきたいですね。

また、置き薬の設置した世帯、設置していない世帯を比較して、置き薬の有効性に関する研究を、現地の国立大学の薬学部と共同で行なっています。命に関わる分野だからこそ、きちんとエビデンスを取る必要があるんです。論文に書き残して、次の世代に伝えていくことも大切な仕事だと思っています。

知見録:最後に、読者のみなさんにメッセージをいただけますか。

町井:アフリカと日本を行き来して、日本は恵まれているなと思うことがあります。ニジェールという国では、文字を書けるのは5人に1人しかいません。MBAどころの話ではない。グロービスで勉強している学生は、それだけで恵まれているんです。学んだからには行動につなげないともったいない。勉強した人には、勉強した責任があると思うんです。

会社の中などでは、いろんなことに対してあきらめがちになります。でも、「自分が何かを感じて、何かを思ったなら、動け」と思うんです。疑問を持ったなら、小さな一歩でかまわないから動いてみる。そうすれば、世の中動くと思うんです。動かせられないなら、勉強したりやり方を変えてみる私自身、グロービスに入る前は、自分が世の中を動かすなんて片隅にも思っていませんでした。でも、実際に一歩踏み出してみて、「動けば変わるんだ」と実感しています。そうやって、みんな一人ひとりが行動を起こせば、社会は絶対によくなると思います。

(聞き手=橋田真弓子、文=石井晶穂)

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