衛星データ、昆虫、乗合サービス…伊藤忠商事のベンチャー投資の狙いをバリューチェーンから考える

バリューチェーン

ベンチャー企業への投資に積極的な伊藤忠商事。もともと事業投資は総合商社の代表的なビジネスの1つですが、近年同社が新たに投資や事業連携を強化している企業は、これまでの投資先企業と様子が異なります。

例えば、スパイア・グローバル社は衛星データ分析、ムスカ社は昆虫を活用したバイオマスリサイクルシステム、ビア・トランスポーテ―ション社はオンデマンド型乗合サービスを提供しています。一見すると、これまで総合商社が行ってきたビジネスと関連が少ないビジネス領域のように感じます。

伊藤忠商事の狙いはどこにあるのでしょうか。バリューチェーンをヒントに同社の投資戦略の狙いについて考えてみます。

バリューチェーンとは?

バリューチェーンは、事業活動を機能ごとに分類し、どの部分(機能)で付加価値が生み出されているかを分析する、マイケル・ポーター教授が提唱したフレームワークです。バリューチェーンは、事業戦略の有効性や改善の方向を探ったり、競合との差異を把握し差別化を図る等の場面で役立てることができます。

■バリューチェーンとは(視聴時間:45秒)

総合商社は、特定の業界において川上から川下までの各機能を担うそれぞれの企業に対して投資を行い、バリューチェーン全体の視点から付加価値を創り収益を生み出すビジネスを強みとしています。

伊藤忠商事は、「デジタル化・デジタル活用を通じた業界の構造変化を見越したビジネスモデルの進化」という戦略コンセプトを2019年6月に発表しており、ベンチャー投資もその動きを推進するための手段であると考えられます。

例えば、食料事業。これまでも原材料の生産から加工、流通などバリューチェーンの各機能を担う企業に投資を行い、グローバル規模での最適化を図ってきていますが、先述した衛星データ分析を行うスパイア・グローバル社への投資は、同社が提供する高性能な気象予報を活用した、より安価で安定的な原材料の生産の実現に狙いがあると考えられます。

またムスカ社への投資も同様に、同社のバイオマスリサイクルシステムにて生成される土壌改善効果や病原菌抑制効果、成長促進効果の高い有機肥料を用いた農作物の生産効率の向上を目指していることが考えられます。

ほかにも伊藤忠商事は、物流ビックデータを扱うTRAXENS社に投資をしています。これは、同社が持つ物流ビッグデータの収集・利活用技術と伊藤忠グループの食料事業・顧客基盤を組み合わせて、物流ビッグデータ領域での新たなビジネスモデルの創造を目指しているのでしょう。

このように、伊藤忠商事は自分たちがビジネスを行う領域のバリューチェーンにおける関与範囲を広げることで、全体としてより多くの付加価値を創出したり、デジタルを活用してビジネスそのものを進化させたりすることを狙いとして、自分たちが持っていない最新技術を持つベンチャー企業に対して積極的に投資を行っているのです。

環境変化が激しく自前の資産だけでは環境適応していくことが難しい現在、大企業によるベンチャー企業への投資や協業案件を目にする機会が多くなりました。自身が担当するビジネスをバリューチェーンの観点から俯瞰して捉え、今後の戦略の方向性を考えてみてはいかがでしょうか。

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