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時代は細マッチョ?サントリーの戦略を読み解く

投稿日:2009/04/09更新日:2019/04/09

4月10日時代は細マッチョ?:サントリーの戦略を読み解く

2009年3月17日新発売の「プロテインウォーター」。CMは1970年代の大ヒット曲ヴァン・マッコイとソウル・シティ・シンフォニーの「ハッスル」に合わせて松田翔太と中村獅童が軽妙な動きで新しい「細マッチョ」の魅力を訴える。そのサントリーの戦略とは?

新商品「プロテインウォーター」はサントリーのソフトドリンクの中にある機能性飲料カテゴリーに属し、「LIFEPARTNER」ブランドを冠した戦略商品。同ブランドの旗艦商品はDAKARA」。2000年にスポーツ飲料カテゴリーに大塚製薬のポカリスエット、日本コカ・コーラのアクエリアスを追撃すべく市場に投入された商品だ。

DAKARAの戦略は、一橋大の野中郁次郎名誉教授の著書『イノベーションの本質』で一番目の事例として取り上げられているほど秀逸なものであった。

DAKARAの一番最初のCMを覚えているだろうか。小便小僧である。小便小僧は何をしているかといえば、オシッコをしている。つまり「排出」。

先行商品が「水分の体内への吸収の良さ」をセールスポイントとしており、後発商品では同じポジショニングでは勝てないと判断した。それゆえ、独自のポジショニングである「老廃物の排出」を訴求し、それまでの水分の「吸収」を訴求していた先行商品に対して明確な差別化を図ったのである。

さらにネーミングはカラダと引っかけてダカラとし、真っ白なボトル缶に赤いハートを記してメディカルなイメージを演出した。メディカルを訴求するため、街頭サンプリングにもナース姿のキャンペーンガールを用いて話題になった。

■「細マッチョ」が訴求するメッセージ

DAKARAの赤いハートの周りに書かれている言葉が「LIFEPARTNER」。現在、同じ名を冠している商品は「ビタミンウォーター」と「プロテインウォーター」がある。

LIFEPARTNERはサントリーのホームページなどには明確なブランド定義がなされていない。しかし、消費者は、LIFEPARTNERといえばDAKARAと認識している。商品を扱っている社外のECサイトや個人ブログでは、ビタミンウォーターとプロテインウォーターを「ダカラ・ビタミンウォーター」「ダカラ・プロテインウォーター」と表記していることが多い。正確にはDAKARA傘下の商品ではないので、ある意味、勘違いともいえるのだが、それこそがサントリーの戦略だといえる。

ビタミンウォーターはビタミンC、ビタミンB6、ローヤルゼリーの摂取ができることを訴求している。今回のプロテインウォーターはプロテインの摂取だ。DAKARAは「排出」を訴求する。そして同じLIFEPARTNERを冠した商品は、「余分なものを排出したら、欲しいものを取り込もう」というメッセージを発信しているのである。

今回のプロテインウォーターは、「“スタイルが気になる現代人”のための、プロテイン補給飲料」というポジショニングを掲げているが、むしろキーワードはCMで繰り返し表現されている「細マッチョ」ではないか。

プロテインは筋肉をつけたい人が摂取する栄養素。本来、粉や錠剤で筋トレの後に飲んだり、寝る前に飲んだりして理想の筋肉を育てるもの。それには、ムキムキのイメージ、マッチョなボディビルダー、水に沈むほどたくましくも重々しいイメージがつきまとう。今回のプロテインウォーターのCMでは「ゴリマッチョ」という表現をしている。

しかし、日本でゴリマッチョの居場所はあまりない。もてはやされるのも、宴会とか、話の種とかだ。世間一般女子に「わーっ、すごい!」と言われても「わーっ、かっこいい!」と言われた経験のあるゴリマッチョは少ないだろう。「ムキムキに抱かれたい!」「マッチョの動く大胸筋にそそられる」という女子はマイノリティ。ゴリマッチョは「日本女子規格」からはみ出てしまっている感が否めない。

いかにもやってる感たっぷりなゴリマッチョではなく、「意外とあいつ、いいカラダ」というちょっとしたサプライズは、男子には「あいつすげぇじゃん、やべえ」と焦燥感。女子には「あれ、結構かっこいいかも」と好印象を与える。「スリムなのに、脱ぐとそこそこいい筋肉がついてる」という細マッチョの潜在的な人気を見抜いてCMを仕立てたのだろう。

LIFEPARTNERの旗艦商品、DAKARAは現在のCMでは、脂肪、塩分、糖分の「余分三兄弟」を登場させ、健康的な生活のためによくないものを排出しようとメッセージを送っている。生活習慣を改善したら、次のステップ。「理想のカラダをつくりましょう」ということで「日本女子にもてはやされる、細マッチョなカラダづくり」を提案しているわけだ。

サントリーは潜在的なニーズを顕在化させ、男子を中心としたターゲットを拡大しつつある。……次の商品とターゲットは深田恭子が映画「ヤッターマン」のドロンジョで目指した、女子の「くびれ」か?

  • 金森 努

    グロービス経営大学院 教員

    東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道四半世紀以上。コンサルティング事務所、広告を経て、2005年独立起業。 青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。著書「図解 よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)「”いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)。共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。監修「実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則」(TAC出版)。雑誌への連載、講演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。

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