タピオカで私たちはどこまで幸せになれるのか?「マズローの欲求5段階説」で明らかにする

タピオカブームは「再上陸」だった

タピオカが空前のブームです。

実は、日本でタピオカが流行するのは今回が初めてではありません。1992年、第一次タピオカブームが起こりました。白い小さな粒のタピオカを使った「タピオカココナッツミルク」を食べた方も多いのではないでしょうか。日本ではまだタピオカが珍しく、テレビなどでも紹介されてブームに火がついたと言われています。

その後、タピオカは2008年頃の小さなブームを経て、今年の爆発的ブームに至っています。そのため今回は「第三次タピオカブーム」と位置付けられているようです。

では、第一次と第三次タピオカブームとの違いは何なのでしょうか。そして、タピオカによって人はどこまで幸せな気持ちになれるのでしょうか。「マズローの欲求5段階説」をヒントに紐解いてみましょう。

■マズローの欲求5段階説とは?(視聴時間:52秒)

マズローの欲求5段階説は、人間の欲求を重要性に従って5段階に分類した、モチベーションに関する有名な理論です。マズローによると、人間は低次元の欲求が満たされると高次元の欲求を満たすべく行動するとされています。

第一次タピオカブームと今回では、満たされる欲求が異なる

第一次タピオカブームとなった1992年は、現在のようにSNSはなく、携帯電話の普及率はたったの1.4%でした(※1)。主にテレビや雑誌などのマスメディアによって流行が生み出され、流行に敏感な若者がブームに乗った行動を取る時代だったのです。

時代背景をふまえると、第一次タピオカブームは5段階の欲求のうち「所属と愛の欲求」を満たすためと言えるでしょう。「所属と愛の欲求」とは、自分が社会に求められていると感じることや、良い組織・コミュニティに属して心の安定を得たいという欲求です。多くの人がタピオカココナッツミルクを好んで食べていたのは、流行に乗ることで、良いコミュニティに属しているという心の安定を得るためであったと考えられます。

SNSは、この「所属と愛の欲求」に着目して開発されたサービスでした。様々なSNSで、趣味や出身校などの「コミュニティ機能」が開発され、皆さんもSNSを通して趣味の友人ができたり、旧友と再会したりしたのではないでしょうか。

多くの人の「所属と愛の欲求」がSNSによって満たされた現代において、第三次タピオカブームが到来しました。台湾の有名店が日本進出したことをきっかけとして、爆発的ブームに至ったようです。その背景には、皆さんお察しの通り「承認欲求」を満たしたい願望があると言えそうです(参考:インスタ人気の裏にある「承認欲求」って何?)。

今回のブームでは、多くの人がタピオカを使ったデザートを写真に撮ってSNSに発信し、より多くの人から「いいね」をもらう行動を取っています。Instagramのハッシュタグ「#タピオカ」を検索すると、181万件もの投稿がヒットします(2019年9月現在)。

また、タピオカを扱う各店舗とも見た目の華やかさに力を入れるのは、消費者の「承認欲求」を満たす手段として選ばれるためと考えられるでしょう。そもそもタピオカは、キャッサバ芋から製造したでんぷんで、白い色をしています。今年流行しているタピオカはデザートにした時に目立つよう、あえてカラメル色素で黒く着色されているのです。

タピオカは承認欲求を超えない

では、承認欲求を満たしてくれるタピオカは、人生をどこまで豊かなものにしてくれるのでしょうか。マズローの欲求5段階説で最上位にある「自己実現欲求」とは、自分の能力を最大限発揮し、なすべきことを成し遂げたいという欲求です。人間は自己実現欲求を満たすために、自分の人生観や価値観を認識しようとし、その世界観を実現するべく行動するとされています。

今回の第三次タピオカブームはあくまで外部の誰かがもたらした流行であり、写真をSNSに発信する行為は、他者の注目を集めるためのものです。つまり、ブームのきっかけや評価軸はすべて他者にあります。タピオカブームに乗り、SNSに写真を投稿しているだけでは、自己実現欲求が満たされることはないと言えそうです。

自己実現をして幸せになるには「自分のものさし」が必要

しかしながら「流行をきっかけに人生が変わった」というのはよく聞く話です。タピオカブームをきっかけに自己実現欲求の実現につながるとすれば、例えば、

・写真を撮ることが好きになり、技術を磨いてカメラマンになった
・デザートに強い興味を持つようになり、スイーツ店を開くことを目標に、店舗経営の勉強を始めた

といったことが挙げられるでしょう。ブームをきっかけとして自分の将来像や好きなことが明確になり、それらを目指すべく努力を重ねることは、自己実現欲求を満たすための行動と言えます。

このように見てくると、自己実現欲求は、他人の価値観とは必ずしも一致しない「自分のものさし」を持っていないと満たされないことがわかります。「自分のものさし」とは、自分の価値観や人生観、信念といったものです。マズローは、最上位の欲求である自己実現欲求を満たすことこそが、人間を幸せに導くと定義しました。

SNS全盛期の今、承認欲求に囚われすぎることで、逆に不幸せに感じることも増えているようです。「SNS疲れ」という言葉も耳にするようになりました。マズローの5段階欲求説では、低次の欲求が完全に満たされなくても、高次の欲求を満たすことはできるとされています。SNSで「いいね」が欲しいと感じても承認欲求に囚われすぎることなく、「自分のものさし」を持ち、自己実現のための人生を歩むよう心がけることで人は幸福感を抱くのでしょう。

商品・サービスの企画や分析をする時、あるいは自分のキャリアを考える時に、マズローの5段階欲求説に照らし合わせて、「ユーザーの満たされていない欲求は何だろう?」「自分が満たしたい欲求は何だろう?」と考えてみると新たな発見があるかもしれません。

※1:NTTコムリサーチ「進化する携帯電話」より

 

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