箱根駅伝の人気はいつまで続くのか?VRIO分析で考える 

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箱根駅伝はなぜ人気なのか?

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お正月の風物詩といえば、「箱根駅伝」はすっかり定着した感があります。今年のテレビ中継の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、2日は30.7%、3日は32.1%と、放送が始まった1987年以降の最高値を記録しました。

国民のテレビ視聴習慣が多様化し、高視聴率番組もすっかり少なくなった昨今、正月の昼間に5時間超にわたってこれだけの視聴率を叩き出すのですから、キー局である日本テレビにとってまさにドル箱のコンテンツと言えるでしょう。この箱根駅伝のテレビコンテンツとしての強さは、いつまで続くのでしょうか。

経営資源の強みを分析するフレームワークの一つに、「VRIO」があります。VRIOとは、経営資源を「経済価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Imitability)」「組織(Organization)」の4つの要素に分けて評価するというもので、「リソース・ベースド・ビュー」という経営戦略論を展開したジェイ・B・バーニー教授が提唱しました。

これを箱根駅伝に当てはめてみましょう。経済価値(V)という点では、長年にわたり高視聴率をマークし、広告価値は十分です。視聴者の満足度も高いと見なせます。もっとも、単に駅伝競争の中継なら、元旦のニューイヤー駅伝や、同じ大学駅伝でも全国規模の全日本大学駅伝もあります。なぜ、箱根駅伝だけが突出しているのでしょうか。

その辺りは希少性(R)で説明できそうです。東京都心、湘南海岸、箱根の山道と絵になる区間を網羅するコース、片道5時間を超える距離設定、1月2日、3日の午前という多くの家庭でテレビ視聴しそうな日程、強力な裏番組の不在等、さまざまな要素が絶妙に組み合わさって、テレビコンテンツとしてのユニークさを作っています。

次に検討すべきは、そのコンテンツを他局が真似する恐れはないのか、という模倣困難性(I)です。バーニーは、模倣されにくい資源の条件として、独自の歴史的条件、因果関係の不明性、社会的複雑性の3つを挙げました。

箱根駅伝の場合、何と言ってもその強みは「独自の歴史的条件」でしょう。第1回開催は1920年にさかのぼる、たいへん歴史のある大会です(全日本大学駅伝の初開催は1970年)。制作側もこれには自覚的と見え、昔の映像や高齢OBの回想インタビューなどを頻繁に差し込んでいます。

また、現行の日程・ルートで開催されることも完全に定着しています。そして、この伝統の積み重ねは単に視聴者の期待を高めるだけでなく、膨大な参加大学OBの存在、沿道の観戦者、警備を担当する都県の警察など、多様なステークホルダーを巻き込み、「社会的複雑性」にも寄与しています。

したがって、競合が既存の駅伝中継の質を高めるにしても似たようなイベントを立ち上げるにしても、箱根駅伝にいきなり対抗するのは相当困難と言えるでしょう。なお「因果関係の不明性」とは、これをすればこの資源が得られるという因果関係が客観的に分かりにくいほど模倣も難しいということを指しますが、本件ではこの点は比較的分かりやすく、模倣困難性への寄与度は小さそうです。

最後の要素が「組織(O)」、すなわち上述の3要素を使いこなす組織能力です。絶叫調で盛り上げる実況アナ、スムーズな生中継を可能にする技術力、順位変動を画面上で分かりやすく伝えるノウハウなど、長年の実績で培われた組織力はうかがえます。

果たして死角はあるのか?

箱根2

こうしてみると、特に「歴史的条件」に立脚したIと、それに適応したOが大いにモノを言って、競争優位性は強いように見えます。一方で、歴史的条件による付帯的要素の強さの陰で、「駅伝の中継」それ自体のVやRは、上述のように必ずしも盤石なわけではありません。

VRIOのフレームワークは4要素の順序にも意味があり、前の要素(VやR)が十分でないとそれ以降の要素がいかに強力でも結果として競争優位性にはつながりません。たとえば正月3が日の視聴習慣が変化したり、全く別ジャンルの面白い裏番組が現れたりしたら…。強いて挙げれば死角はこの辺りにありそうです。

もっと「VRIO」について知りたい方は動画をチェック>>

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