事実に基づく「傾向」の発見が問題解決を加速する

仮説志向新刊『MBA 問題解決100の基本』の1章「問題解決の基礎技術」から、「Basic007 パターンを見出せ」を紹介します。

ビジネスに限らずどのような場面でも、ある一定範囲では、「○○するほど□□になりやすい」「△△が大きくなるほど◎◎も上がる」といったパターンが見られるものです。「年齢が上がるほど癌になりやすい」「不快指数が●●を超えるとクリエイティブな業務の効率が落ちる」などはその典型です。

こうした傾向は、問題個所の発見や問題解決の方法を考える上で大きな効果を発揮するのは容易に想像がつきます。たとえばある企業内で「エンパワメントの度合いが高い職場ほどモチベーションが高く生産性も高い」という事実が発見されれば、エンパワメントをうまく行っている部署のやり方をベンチマークにしながら社内で横展開するのは有効でしょう。

ここで注意すべきは、その傾向がファクトかどうかです。「○○なほど□□になるはずだ」は往々にして勝手な思い込みにすぎず、実は逆のことも多いからです。先入観にとらわれず、ファクトをベースに考える視点も同時に必須なのです。

(このシリーズは、グロービスの書籍から、東洋経済新報社了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

パターンを見出せ

パターンすなわち「傾向」には大きく2種類のものがあります。1つは時間とともに何かが変化するというもので、「トレンド」とも言います。「スマートフォンの浸透率が増える」「初婚年齢が上がる」などはトレンドの一種です。

特に一国の人口動態などは慣性の法則が強く、なかなか変化しないトレンドです。こうした長期的なトレンドを正しく押さえておくことは、未来に向けて生じるであろう問題を予測したり、それを解決する策を前倒しで検討する上での基本です。

もう1つの「傾向」は、2つ以上の物事の相関関係です。近年はAIやビッグデータの進化などもあって、人間がすぐには気がつかないような相関を含む複雑な重回帰分析(複数の相関関係から予測を行う分析手法)なども行えるようになっています。アマゾンなどeコマースのリコメンデーションメールなどはその典型です。冒頭の言葉はアメリカのライドシェア大手、ウーバーで用いられているものですが、彼らもビッグデータからさまざまな傾向を見出しビジネスに活用しようとしています。

ただ、この方法は、予測に関してはパワフルなのですが、経営的な論点が絡む場面において、人を納得させ動かすという面ではやや説得力が弱くなる傾向があります。

現実の問題解決では、やはり今でも納得感、説得力といった観点から重視されているのはシンプルな2変数間の相関関係です。

たとえば学習支援事業を例に考えてみます。いくつかの項目と習得レベルの相関をとったところ、復習時間と習得レベルに最も大きな相関があるのであれば、習得レベルを上げるために「しっかり復習するように」と言うことは容易ですし、聞いている方の納得感も高いでしょう。

もし2番目に大きな相関が見られたのが、学生の自己肯定感を高めるような講師からの発言だとしたら、学生を動機づけるよう促すのも有効でしょう(いずれも実際の効果は検証する必要があります)。

また製造業で、気温と不良品率の間に図のような相関関係があるのであれば、気温を24度以下に保つというのもわかりやすい対応方法と言えます。こうしたパターンを仮説を立てながら検証、確認していくのはやはり効果的なのです。

図

昨今では、先述した通り、テクノロジーの進化によって、人間が気がつきにくい(仮説思考をしにくい)パターンの発見などにITを使うシーンも増えました。「スーパーマーケットではビールと使い捨ておむつが同時に売れやすい」というのは、POSデータから発見された古典的な事例です。

今後は、「店内でこのパターンの動線を歩いた人は、他よりもAという商品を買いやすい」といった、より複雑な関係が見出される可能性もあります。

ただ、コンピュータが勝手にセンサーを設置することはありません。結局、データ収集、データ入力の段階で人間のセンスやスキルは必ず必要になってくるのです。

常日頃からさまざまな事柄の相関について仮説を持つこと、そして多くの事例をレファレンス(参考事例)として持つことが大切です。その上で、IoTなども費用対効果を考えながら導入するなど、人間の先入観にとらわれない発見の方法も同時に持つ必要があるのです。

コラム

人間の、「たぶん○○の方が△△だろう」は往々にしてあてにならないことがあります。そうした思い込みを事実でしっかり反証するという行為は非常に重要です。

たとえば、アメリカのプロバスケットボール(NBA)はアフリカン・アメリカンの選手がレギュラーの大半を占めていますが、昔から「ハングリーな環境下で育った選手ほど、上昇志向が高く成功しやすい」との認識がスカウトたちにありました。

しかし、実際に調べてみると、貧しい家庭出身の選手よりも、中流以上の家庭出身の選手の方が良いパフォーマンスを残していることが判明したのです。さらなる調査の結果が示唆したのは、

・家庭が貧しいと栄養状態が良くなく、(バスケットボールというスポーツにおいて特に重要な)身長が伸びにくい
・貧しい家庭ではチームスポーツに必要な規律が身につきにくい

といった理由でした。

言われてみればなるほどということでも、実際に調べてみないと分からないことは多いものです。

「□□ほど☆☆だろう」という根拠のない思い込みが社内に蔓延していないか一度確認してみるといいでしょう。

#キーワード
トレンド、人口動態、仮説思考、データ収集、IoT

(本項担当執筆者:嶋田毅 グロービス出版局長)

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