新刊『MBA 問題解決100の基本』の11章「高度な問題解決の技術」から、「Basic090 構造とメンタルモデルに働き掛けよ」を紹介します。
世の中の問題の構造は非常に複雑なものであることが少なくありません。それをダイナミックな視点から解き明かし、解決の糸口を探るのがシステム思考です。ただ、システム思考で問題の構造が明らかになったとしても、往々にして問題は容易には解決しません。人々の意識がその問題の構造に複雑に絡み合っているからです。人々の意識を変えるのは難しいことであり、リーダーからの強い働きかけや、仕組みをドラスチックに変えるなどの施策を同時並行的に行うことが必要になることが多いのです。
(このシリーズは、グロービスの書籍から、東洋経済新報社了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
構造とメンタルモデルに働き掛けよ
これはセンゲと並んでシステム思考を世に広めたドネラ・メドウズの言葉です。「構造に働き掛ける」とは、たとえば先の図(注:本稿には示していません)でいえば、自社の最低価格保証という制度を止め、また知恵を絞って何かしらの差別化要因を創り出すなどです。
もう1つ重要なのは、その構造の背景にあるメンタルモデルを変えることです。メンタルモデルとは、物事の見方や行動に大きく影響を与える固定観念や暗黙の前提を指します。下図の、緑の部分がメンタルモデルに相当します。
多くのケースでは、このメンタルモデルこそが問題が解決しなかったりこじらせたりする原因となっています。別の例でいえば、女性活躍をうたいながらも、「女性に負けるのは嫌だ」という男性が多ければ、結局、女性活躍は進みません。
メンタルモデルを変えるのはなかなか難しいことではありますが、企業レベルであれば、まずなぜそのようなメンタルモデルが出来上がったのかを関係者で議論してみます。そしてその前提を理解した上で、その思い込みに意味があるのか、競争上の邪魔になっていないかなどをさらに議論します。こうした議論や対話を繰り返すとともに、同時並行でそのメンタルモデルを変える施策を打つ(例:図の残業の例であれば、実績や生産性重視の評価に変えるなど)とメンタルモデルは変わりやすくなります。
先の女性活躍の問題であれば、ある程度強引にアファーマティブ・アクション(優先的にマイノリティを優遇する政策)を進め、女性管理職などを増やすと、中期的には「まあ、そんなものだ」とメンタルモデルが変わっていったりするのです(なお、アファーマティブ・アクションなどは、そこに大勢が納得する大義があることが必要です)。
#キーワード
固定観念、暗黙の前提、アファーマティブ・アクション、大義