評判の毀損より怖いものはない

問題解決100新刊『MBA 問題解決100の基本』の11章「高度な問題解決の技術」から、「Basic098 周りからの評価を利用せよ」を紹介します。

他人の行動を好ましい方向に作用させようと制度を作った結果、むしろ好ましくない結果をもたらすということはよくあることです。古くは、国民の健康を守ろうとしたアメリカの禁酒法が、粗悪なアングラ密造酒の製造を促し、かえって国民の健康を損ねてしまったなどです(マフィアの資金源になるというおまけまでつきました)。罰金制度も、その額によっては、むしろ抑止効果ではなく、かえって好ましくない行動を増加させることは少なくありません。それを避ける1つの方法は、ルールを破った人間に、罰金ではなく、「評判の毀損」のペナルティを与えるような設計にすることです。人間の根源的な心理を洞察することが、こうした制度の効果を高めます。

(このシリーズは、グロービスの書籍から、東洋経済新報社了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

周りからの評価を利用せよ

経済学を活用した問題解決でよく知られた事象に「託児所の遅刻に罰金を課す」というものがあります。これはイスラエルで、託児所のお迎えの時間に10分以上遅刻した親に3ドル程度の罰金を課すというものでした。

普通に考えれば、親はこの罰金が嫌で遅刻しないように努力しそうなものです。しかし結果は全く逆で、親は「遅刻してもお金を払えば済む」というお墨付きを得たことで、かえって堂々と遅刻するようになり、罰金を課す前より遅刻件数が激増したそうです。

これを避けるための1つの方法は罰金をもっと高額にすることですが、それでは若干スマートさに欠けます。

『ヤル気の科学』(文藝春秋)の著者、イアン・エアーズは、そこで周りからの評価を利用することを提案しています。たとえば、親が10分以上遅刻したら、職員(特にその中でも最も貧しい職員)が託児所に3ドルの罰金を払うようにするといいという提案です。

親の立場から見れば自分の懐は痛みませんが、おそらく周りからの評判はかなり下がってしまうでしょう。「あの人は月に3回も遅刻して…」などという噂が立ったり、そのような評判が確立することは誰も好みません。「良心の呵責」という痛みと「評判の毀損」という痛みに直面することで、人の行動を大きく変えうるのです。

より身近な例では、連帯責任も似たような構造になっています。筆者は個人的には連帯責任(特に罰則系のもの)は好みませんが、自分の評判を落とすような鞭を準備することは、他人からの評判や信頼がより重みを持つこのIT時代において(ブロックチェーンや、シェアリングエコノミーにおけるレーティングなども評判重視の文脈で説明することができます)、非常に強力な問題解決の手法となりうるのです。

#キーワード
評判、連帯責任、ブロックチェーン、レーティング

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