売上総利益と限界利益の違い
「売上総利益と限界利益は同じなのか?」という質問もよく受けます。もともと売上総利益と限界利益は異なる利益概念であるため両者は一般的には異なると考えていただいて結構です。しかし、特定の場合には両者は一致します。今回は、売上総利益と限界利益の相違について説明します。
売上原価と限界利益の算式を見てみましょう。
売上総利益=売上高-売上原価
限界利益=売上高―変動費
『「損益分岐点売上高」は経営管理にどう役立つの?』で説明しましたが、限界利益を算定するには総費用を変動費と固定費に区分する必要があります。限界利益は製品や商品を1単位追加で売り上げた時に追加で得られる利益を表します。仮に全ての費用が固定費(限界費用ゼロの場合)であれば売上高が全額限界利益となりますが、変動費が存在する場合は売上高から変動費を差し引いた部分のみが追加で期待できる利益ということです。
限界利益は管理会計上の利益概念です。売上高の増減と利益の増減の関係を把握することで、自社の予算策定や販売する製商品の優先順位付け等の経営の意思決定のための情報ツールとして活用します。
一方、売上原価は財務会計の利益概念です。例えば製造業であれば、売上原価には製品を製造するために消費された原材料費、労務費、経費が固定費に区分することなく全て含まれます(*)。このように、通常は売上原価と変動費は一致しませんので、売上総利益と限界利益は不一致となります。
「売上総利益=限界利益」と、一致する場合
では、売上総利益=限界利益となる場合はないのでしょうか。
計算式からも明らかなように、売上原価=変動費となる場合は売上総利益=限界利益となります。例えば、仕入れた商品を顧客に販売する小売店を例にとります。この場合、売上に対する売上原価は商品の仕入原価となります。商品の仕入原価は販売されれば売上原価(P/ L)、販売されなければ棚卸資産(B/S)に据え置かれますので、売上原価は全額売上高に比例して発生するため変動費となります。外部から仕入れた商品等を販売している卸売業や商社も同様です。このような業種では売上総利益=限界利益となり、社内で売上総利益のことを限界利益と呼んでいる場合もあります。
ところが、製造業において発生する費用には原材料費のような変動費のみではなく、労務費や製造経費のような固定費も多いでしょう。この場合は売上原価には固定費が含まれるため売上総利益と限界利益は一致しません。
仮に同じ品物であっても外部から購入して販売する場合は売上総利益=限界利益となり、自社製造した場合は売上総利益≠限界利益となります。
(*)正確には、製造原価の内販売された分のみが売上原価となり、未販売分は棚卸資産となります。
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