「損益分岐点売上高」も、社内でよく耳にするけれど経営にどう役立つのかピンと来ない、と言われる用語の一つです。損益分岐点売上高は、簡単に言うと損益がトントンになる場合の売上高を指します。
例えば、1個100円の商品を200円で販売する小売業では、1個販売したときの利益は100円です。何個販売しようと利益率は50%で変わりませんので、いくら売上を上げたら目標の利益を達成できるかを簡単に把握することができます。
では、1個200円の販売価格に対して、材料費が1個当たり50円、諸経費が1か月150,000円かかる製造業の場合はどうでしょうか?
小売業の例では、商品1個当たりの販売金額と商品代金(費用)が比例関係にあります。このような、売上に比例して発生する費用を「変動費」と言い、売上に関わらず発生する費用は「固定費」と言います。月額で発生する家賃や固定給料なども固定費で、売上が0であっても発生します。よって、例に挙げた製造業の売上が0の場合、固定費である諸経費が150,000円発生するので赤字150,000円となります。
このように、費用に固定費が含まれる場合には、固定費が売上と比例関係にないため、いくら売上を上げれば黒字になるのか、ある売上高の時に利益がいくらになるのかが分かりにくくなります。そこで、販売単価、1個当たりの変動費、固定費から、損益がトントンとなる場合の売上高を把握します。
製品1個当たりの獲得利益=200円(販売単価)-50円(材料費)=150円
損益トントンとなる販売個数=150,000円(諸経費)÷150円=1,000個
したがって、損益トントンとなる売上高は、200円(販売単価)×1,000個=200,000円となります。これを応用すると、目標利益を達成するための売上高を把握することができます。例えば、目標利益を90,000円とすると、
目標利益達成のための販売個数={150,000円(諸経費)+90,000円(目標利益)}÷150円=1,600個
よって、目標利益達成のための売上高は、200円×1,600個=320,000円必要であることがわかります。
損益分岐点上高を活用することで、経営者は利益目標を達成するために売上高、費用をそれぞれ別々に管理しなくても、売上高(予算)の進捗管理をすることで利益も同時に管理することができます。また、アカウンティングや計数管理に精通していない従業員(例:店舗責任者)に対して個数や売上人数等のKPIをシンプルに設定することで、管理業務負担を軽減しつつ効果的に目標利益を達成することに役立てることができます。