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地球を休ませる灯り――それは風力で光るファイア

投稿日:2008/12/18更新日:2019/04/09

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以前、記事で紹介した風の力で発電して点灯する「ファイアーウィンダー」。遂に発売されたということで、筆者も手に入れて、実際に使ってみた。(このコラムは、アイティメディア「Business Media 誠」に2008年12月18日に掲載された内容をGLOBIS.JPの読者向けに再掲載したものです)

いよいよクリスマス。街角も住宅地もキラキラのイルミネーションでいっぱい。金融危機の到来でパッとしない年になったが、「せめて、電飾の灯りでほっとしたいね」という街の表情がある。

私の手元に、電飾とはひと味ちがう灯りがある。恐らく日本にまだ1つしかない“風任せな”灯りだ。英国のFirewinder(ファイアウィンダー)社が開発し、先頃出荷を開始した風力LEDライト「Firewinder(ファイアーウィンダー)」だ(会社名そのまんま)。

以前、英国の発明家トム・ロートン氏のインタビューをこの連載で取り上げた。彼のアイデアが遂に製品となったので、初回生産出荷分からいち早く入手したのだ。これが世紀の大発明なのか、それとも大失敗なのか気になるところ。風任せな灯りを同社ホームページでみてほしい。

風力LEDライト、ファイアーウィンダーとはいったい何なのか? そしてトム・ロートンさんは、さまざまな灯りに満ちたこの世界でなぜ“風任せの灯り”を開発したのだろうか?

ファイアーウィンダーとは何なのだろうか?

英国からの空輸便で着いたファイアーウィンダー、筒状の梱包(こんぽう)ボックスに本体とブラケット(金具)、留め具、説明書だけという簡素さ。パッケージングもエコである。本体価格は99.95ポンド(円高の恩恵で約1万4000円)。

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ファイアーウィンダー一式(上)、複雑な羽の形状(下)

特徴は次の通りだ。

・本体に発電器を内蔵するエコな風力発電

・らせん状の羽根に14個のLEDランプを搭載

・風速が秒速約2~3メートル以上になると羽根が時計回りで回る

・ブラケットで門柱、屋上、壁面などに設置する

・雨天使用可だが、台風時などは取り外す(秒速約17メートル以上の時は不適)

LEDライトを縁に内蔵する羽根の形状は複雑だ。羽根の直径は約15センチメートル、全長は約64センチメートル。本体の上下を留めるブラケットは、板きれや家の壁などに自分で取り付ける(木ネジなどを利用)。金具からの着脱は容易だ。

同社マーケティング担当のジョー・ワズワースさんの書く「Firewinderblog(ファイアーウィンダーブログ)」には、ユーザーたちの設置例が掲載されている。

設置しているのは家の壁、屋上、庭など。風の通り道を探すことが大切だ。回り出す目安の秒速3メートルとは葉が揺れる程度の風速で、ちなみに強風の春一番では秒速20メートルくらい。商品が届いて以来、穏やかな日が多く、なかなか“目視実験”の日が来なかったが、ようやく動画に収めることができた。

しかし……これは果たしてライトなのだろうか?

風任せだから、無風だと何の役にも立たない。スイッチもないのでON/OFFも風次第。しかも屋外に出ないとその灯りを観ることもできない(当たり前だ)。いつ灯りがつくか計算できないので、事業所で利用することは難しい。

例えば温泉地、農道、山道に設置はできるだろう。装飾として美術館や博物館の庭なども似合いそうだ。だが、照明として照度や発光効率はカウントできない。エコではあるが“モノの役に立たない”灯りである。

だが、その回るサマにはいつまでも見入ってしまう。輝きが強まったり弱まったりして動く様子をじっと眺めてしまう。回るLEDランプがこんなに美しいとは意外だ。この回転灯の無用な美しさが何なのかを探るため、照明の機能を図で整理してよう。

灯りは空間を照らし、心を照らす

照明は灯りゆえにその実用性が問われる。街灯なら安全や安心を確保し、事業所や住民の活動を保証しなければならない。イルミネーションを兼ねていても、基本的には場所やモノを照らす機能を持たねばならない。会社や工場などの“事業所照明”は仕事の能率を上げ、お店なら“店舗照明”で販売効率を上げることが求められる。家庭なら“室内照明”で暮らしを明るくしたい。用具として機能を発揮するのが照明だ。

だが灯りは明るさだけが実用価値ではない。プラスαの要素がある。±0の卓上ランプ『お皿つきライト』は、スタンドの下にモノを置けるお皿が付く。

仕事から帰宅すると灯りをつける。そして時計や鍵や携帯、身に着けたネックレスやiPodをじゃらっと外して受け皿に置く。出かける時には灯りを消すため、忘れものをすることはないだろう。生活動線とライトを一体化させた灯りである。

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±0の卓上ランプ『お皿つきライト』

Philipsの『LivingColors(リビングカラーズ)』は、好きな灯りの色を気分で自在に“調色”できる。「落ち着け」ブルーの部屋も、「燃えろよ」レッドな部屋も自在。部屋をムードを明るくできる。

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Philipsの『LivingColors(リビングカラーズ)』

このように灯りは空間を照らすばかりではなく、人の生活を照らしムードも作る。照明を次の図でポジショニングしてみた。タテ軸には実用性の高低、ヨコ軸は照らす対象の大きさで、街→仕事→家→自分とだんだん小さくした。

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照明ポジショニング図

ファイアーウィンダーは、最も実用的でなく、最も狭い空間しか照らさないから右下だ。だが、眺めて人を無心にさせる効用がある。どこか東洋的な神秘さがあり、モノクロ美がある。それは人の“心の中を照らすライト”なのかもしれない。

地球を少し休ませてもいいじゃないか

華麗なクリスマスイルミネーションを観れば「まぁキレイ!」とため息をつき、見物する相方とおしゃべりが弾む。クリスマスシーズンならずとも、夜、大気圏外の人工衛星から世界中の大都市を眺めれば、たくさんの光があふれていることだろう。夜半まで消えないネオンサイン、24時間営業の物販店や飲食店、走り続ける自動車。眠らない都市の灯り、それは石油や石炭、ウランをたくさん費やして維持している。

そろそろ地球を少し休ませてもいいじゃないか。ファイアーウィンダーにはそんなメッセージを感じる。

▼「Business Media 誠」とは

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