イノベーションに必要なKPIは何か? 

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日本経済の中枢を担う経営者が集い、熱い議論を交わした「第6回 G1経営者会議」。前々回前回に続き、第4部分科会「新しいイノベーションを生み出す空間づくり」の内容をお届します。(全3回)

イノベーションを促すKPIとは?

カフェ・カンパニー楠本氏楠本:では、そろそろ会場の皆さんからもご質問をお受けしたいと思います。

会場:短期リターンを求める株主やB/Sをばっちり見てくる銀行さんを前に、「ゆるくやる」「線を前に引こうとしない」という勇気を持ちづらい環境があると感じます。そういう状態の経営者に、イノベーションを生み出す空間づくりにあたって1つだけやるべきことを伝えるとすると、どういったアドバイスなるでしょうか。

梅澤:私はそこだけ完全に別枠管理で「予算も人もマネジメントプロセスも別にしてください」とお話しします。平たく言うと、そういう部門に関しては「KPIは捨てましょう」と。

楠本:先ほど(事前にお話ししていたとき)は梅澤さんももう少し厳しい口調でね、「そんなもん○○くらえだ」みたいな勢いで(会場笑)。

亀山:「KPIなんか設定できるわけねーよ!」ってね(笑)。

うちも今は会社を結構分割して権限を渡してるけど、法務と財務だけはホールディングスが引き受けてる。なぜかというと、YouTubeもGoogleもAirbnbもそうだけど、あんなのほとんど法律グレーからはじまってるからね。若い奴らは、勢いがあっていいんだけど、法律違反だってことを全く知らずに突っ込んで行ってしまう可能性だってある。だからこそ、そこはちゃんと見張ってる。ITはグレーゾーンだらけなのよ。

まぁ、特に上場会社なんて大変だよね。なんでもKPIとかごちゃごちゃ色々言われる。「子会社化で何億投資」みたいな形で、財務と法律はきちんとして、で、その中で後は好きにやらせた方がやりやすいんじゃないかな(笑)。

林:私は「新しいKPIをつくりましょう」だと思う。従来のKPIが現状に合ってないだけで、その価値は必ず数字にもKPIにもなると思っています。アメリカが強いのは、そこで新しい価値を表すKPIを常につくるからだと思うんですよ。

たとえば先ほど「会社に共創空間なんてつくっちゃダメ」っていうお話がありましたけど、大企業って1つの社会だと思うんですよ。で、1つの社会なのにいろんな事業部がある。それで(セキュリティもあって)「ピッピピッピ」やらないとどこの部屋にも行けない。でも、そこで社内に共創空間があれば、社外の人は来なくても社内でコネクテッドインダストリーズになるんです。逆に言えば、「社内でコネクトしないで、どうしてコネクテッドインダストリーズのソリューションを人に提供できるの?」と。社内だけでつながることにも意味があると思う。

じゃあ、その新しいKPIは何か。たとえば、アメリカではスマートセンサーを持たせて「他部門の人間とどれだけ話をしているか」をKPIにしているところもあります。それが、何かトラブルが起きたとき、トラブルシューティングや解決の早さにもつながるから。逆に、部門と部門が離れていれば離れているほど商品開発のスピードも落ちるわけで。そういうのを全部測定するんです。そうやって新しいKPIをつくる。

水野さんもそれをやっているんですよね。投資パフォーマンスだけじゃなく「ESG(Environmental, Social and Governance)」、つまり環境に優しく、社会的責任を果たしていて、企業統治も効いているという指標でコミットする。それが価値になる、と。「ゆるく」というのは社長にはできるけど、コンサルにはできないから、やっぱりそういう指標をきちんとつくるのがこれからの強さになると思います。

梅澤:亀山さんと「DMM.make」を立ち上げた小笠原(治氏:さくらインターネット株式会社フェロー)さんがやっているawabarというお店では「笑顔の数」を測っていますよね。クリエイティブなタレントをやる気にさせるということは、「どれだけ笑顔にするか」といった代替指標になると、言えなくはないから。そんなKPIを新たにつくるかという話ですよね。

楠本:クールジャパンについて議論している政府の委員会でも「クリエイティブのKPIをどうするか」といった議論になるじゃないですか。これ、せっかくなのでG1でも、「G1クリエイティブ」とか、KPI設定委員会みたいなものをつくるのはどうかな、と。これだけ素晴らしい経営者やコンサルタントの方々がいらっしゃるから、そういうのも面白いかなと思いました。

梅澤:今日はまず皆さんからアイディア募集しますか。

亀山:そういう話を社長が聞くかな。「よく分かんない。“笑顏の数がKPI”って何?」って言わない?(会場笑) それ伝えるのが大変なんじゃないかなって。言ってることは分かるんだけどね。

林:でも、人間だから感じてはいると思う。だから感じてもらったうえで、もっともらしくハンコを押すためのKPIというセットがあれば、ハンコも絶対押してくれると思います。

人の価値観は変わるから、まず投資する

会場:新しいことをはじめるうえで、「いくらまで使っていい」「最初にいくら使う」といったことは、皆さんは決めていらっしゃるんでしょうか。

亀山:予算的な話をすると、うちはその年に稼いだぶんはほぼほぼその年に使っちゃうっていう投資の仕方で(会場笑)。「宵越しの金は持たない」じゃないけど、「年度は越さないで」って。資金ショートしない程度には残すけど、それ以外は投資に向ける。それが一時期まではできていなかったんだけど、俺が50になったぐらいの頃から逆に金が余りだしたから。だから、そこから片桐(孝憲氏:株式会社DMM.com 代表取締役社長)とか、いろんな人間を入れて「言うこと聞くから投資しろよ」みたいな話をしてる。

たぶん、どこの会社も黒字である限りは来年度もだいたい同じような利益が見込めると思うし、それで社員は食わしていける。それなら、稼いだあとの税引き後のお金を残すのか、使うのか。本当は税引き前、広告費や人件費に使ったりするほうが得なんだけど、とにかく、その部分をストックする必要があるかっていうとね。たとえば俺がトヨタさんだったら…1兆円稼いだら電気自動車に1兆円全部突っ込んじゃったりすると思う。

結果として突っ込んだぶんが返ってこなくてもいいじゃない。その時代が来なきゃ来ないで大丈夫だし、来たら来たで、「うまく次の時代に乗り切れたね」っていう感じ。だから、とにかく乗り遅れたら自分たちが脅かされるようなものには全部投資する。流行りだったらAIでもアフリカでもいいから、とにかくそこにお金を入れておくっていうことをやっておけば、とりあえずその後もやっていけるから。

たぶん株主は怒るよ。 「配当どうなってんだ!?」とか言ってくると思うけど、「いやあ、もう使っちゃいました」とか言ってさ(会場笑)。「我々は未来を見てるんです。未来を見ないでどうするんですか」って。「アマゾンだって利益は出してないけど、株価どれだけ上がってると思ってるんですか?」って言えばいいわけ。「そういう考え方について来れないなら株主をやめてもらって結構です。他の株を買ってください」と。

これからは社会貢献してる会社や未来に投資してる会社の株が上がるような時代になって、目先の利益だけ追ってる株主ばっかりじゃなくなるから。そうなったとき、今話したようなポリシーを訴えればやりようはあると思う。そういうことを訴えつつ、アフリカとかに投資したりして「利益はないよ?」と言えばいい。結果的には、そのほうがよっぽど社員たちを食わしていけることになるから。で、それはね…。

楠本:「リーダーシップと覚悟」みたいなことですかね。

亀山:そんな感じかな(笑)、まとめちゃうと(会場笑)。

楠本:村瀬さんはいかがですか?

村瀬:たとえばメルセデス・ベンツは、10年前はステータスを持った人が乗る車だったけれども、今は「1番大事な人を守る車」という風になったりして、人の価値観って5年ぐらいで変わるように思います。じゃあ、僕らがいる移動という産業はどうかというと10年ぐらいが1つのスパンだと思うんですが、僕らはその最初の2~3年に大きな投資をしています。それで当初はやっぱり利益が出ないんですが、10年間で投資をいかに取り返すかというような考え方をしています。

楠本:回収期間との兼ね合いのなかで考えていく、と。

村瀬:そうですね。1年で取り返そうと思っても難しいので10年で考えています。

エコシステム同士で健全な競争をしていく

会場:「イノベーションを生み出す空間づくり」を、私はまちづくりというか、都市空間づくりと捉えています。その意味では京丹後鉄道も「FabCafe」も「DMM.make」も独特のエコシステムをつくっていると思いますが、最終的にそれらエコシステム同士の関係はどうなるのが良いとお考えでしょうか。

梅澤:全部つながって欲しいというのがベースですが、1つひとつの場には独自進化もして欲しいです。渋谷はストリート文化とエンターテイメントの街で、秋葉原は電脳とIoTの街という風に、それぞれ違うエッジを立てていただきたい、と。そのなかで、場をつなげるために必要な機能と、その街だけのエッジを立てるような機能の両方が出てくると思います。

すべての街がミクスドユースで職住近接になるのがいいと思うんですけれども、その街だけが持っているような機能も進化して欲しい。それでテイストも全然違ってくるので。だから街並みのガイドラインみたいなのも、たとえば渋谷版と秋葉原版と銀座版ではまったく違うものにして欲しいんですよね。そういうなかで街同士がつながって1つの東京になれば、もう世界最強のメガシティになります。

で、すみません、ちょっといい機会をいただいちゃったので少しだけ宣伝させていただくと、こういう本(『NEXTOKYO 「ポスト2020」の東京が世界で最も輝く都市に変わるために』)があと2週間ぐらいしたら出ますので。

これは「NEXTOKYOプロジェクト」という東京の都市ビジョンを提案するチームがあり、その共同リーダーである楠本さんと僕で書きました。千晶さんも、12人のプロジェクトメンバーの1人です。そのチームで過去2年ほど議論してきた内容を書きました。東京のそれぞれの街にどうなって欲しいかっていう我々の思いも、そしてそれが全体としてどういうパワーを生み出していくのかっていうことも書いたつもりです。

亀山:俺、そのチームに混ぜてもらってないけど?(会場笑)。アキバだと俺が競合相手になるみたいなことが書いてあったりするんじゃないの!? (笑)

林:写真が必要なんです、写真が。

亀山:そこは漫画とかでさ(笑)。

楠本:そういえば全体会では世耕(弘成氏:参議院議員/経済産業大臣 兼 内閣府特命担当大臣)さんが「皆、国内で競争し過ぎ」といったお話もなさっていました。僕も本当にそう思います。海外だとそんなに競争しなくていいことも、国内でセ・リーグとパ・リーグに分かれるとすごく戦うようなことたくさんある。食の世界でもそういうケースが数多くあります。

健全な地域間競争はあっていいと思うんです。ただ、そこですべての街が同じことをするんじゃなくて、それぞれの街は違うから、違う街同士は互いにリスペクトしつつ、同質化せずにつながっていくというのが正しい場づくりのあり方なのかなと、僕も思っていました。そんな風にして日本全国でつながっていくようになれば、いろんなキャラクターが出てきていいんじゃないかと思ったりしています。

亀山:俺、今CICとバチバチ戦おうと思ってんだよ。大丈夫? 仲良くやりますか?(会場笑)

梅澤:お手柔らかにお願いします(笑)。

楠本:では、そろそろ時間になりましたので本セッションを終わりたいと思います。僕としては本当に”Connecting people is connecting industries.”じゃないかなと思っています。今後もG1という場でも皆さんとつながりながら未来を一緒につくっていけるよう頑張りたいと思います。今日はありがとうございました(会場拍手)。
 

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