イノベーションに必要なのは儲けよりも点と点をつなぐための場づくり 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本経済の中枢を担う経営者が集い、熱い議論を交わした「第6回 G1経営者会議」。第4部分科会「新しいイノベーションを生み出す空間づくり」の内容をお届します。(全3回)

目先の儲けを考えずにプラットフォームを提供する

楠本修二郎氏(以下、敬称略):本セッションのテーマは「新しいイノベーションを生み出す空間づくり」ということで、このような素敵なスピーカーの皆さまにお集まりいただきました。まったくまとまりがつかなくなる可能性もありますが(会場笑)、そのぶんライブ感の高いお話が伺えるんじゃないかなと思います。

さて、午前中に行われた全体会では、竹中(平蔵氏:東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授)先生から「景色を変えよう」というお話がありました。これはG1のキーワードにもなっていると思います。弊社カフェ・カンパニーも「カフェで風景をつくろう」ということで2001年に創業しました。やはり目に見える「場」というのは、人をどのようにつなげ、共感からどういったものが産まれてくるのかということの基本ではないかと思います。壇上にいらっしゃるのはそうした景色をつくってきた第一人者の方々ばかりですから、今日はワクワクしています。また、景色をつくることと併せて、4名様は「混ぜる」という点でも達人ですから、その辺のレシピも伺えたらと思います。

というわけで、やはり亀山さんから(笑)。イノベーションを生み出す空間という意味で、亀山さんは「DMM.make」のほか、最近は猪子(寿之氏:チームラボ株式会社代表取締役)さんと「DMM PLANETS art by teamLab」等々、本当に素晴らしい場をいくつもつくっていらっしゃいます。亀山さんは何を目指してそうした場をつくってこられたんでしょうか。その成果も併せて伺えたらと思います。

亀山敬司氏(以下、敬称略):はい、どうもどうも。「DMM PLANETS」はフジテレビと組んでお台場でやったんだけど、最初にうちの担当者がこの話を持ってきたとき、「え? これって何の目的でやるの? 儲かるの?」って聞いたら、「利益は1銭も出ないです」と言うわけ。「じゃあ、何の効果があるの?」って聞いたら、「モテます!」って(会場笑)。

「何十億もCMを出したとしても、それでDMMの評価が上がるかっていうと、名前を覚えてもらえるだけです。でも、この施設に来てもらって、“ああ、DMM PLANETSは素晴らしかった”って言ってもらえたらモテモテですよ。モテることは大事です!」って言うから、「なんかよく分かんないけど、まあ、いいや」ってことでスタートしました。

結局、直接にはなんの利益もなくって。モテたことはモテたけど(会場笑)。かなり捨て金みたいな感じになってる。でも、インスタとかいろんなものでそれが広まって、会社の評判というか、女性票は取れたかな、みたいなところはある。

それが意外と人気だったから、「今度は常設で何かやろうか」っていう話が出たり、次は水族館をやろうっていう話にもなった。だから「そういう施設型のビジネスは意外と面白いね」って考えるきっかけになったかなっていうのはあります。

とにかく、そういう感じでうちは基本的にゆるい。この会場にいる人たちは、なんだかんだ言って真面目。立ってお辞儀したりしてたしね。だから「俺も立たなきゃ」ってなったけど(会場笑)、DMMだったら座ったまま「どうもー」って感じだから。

「(G1経営者会議の服装は)カジュアルでいいです」って言われてもきちんとした感じで来るしね。これがIVS(Infinity Ventures Summit)とかインターネット系のカンファレンスになると参加者はほとんどTシャツ姿だったりするわけ。俺もこう見えて50歳になるまではスーツ着てネクタイ締めてたんだけど、「これじゃいかんな」って。かたっ苦しいと、若いやつが離れちゃうっていうのがあった。

だから、今はいかにも「うちはゆるいよ」っていうところを見せてる。すると、「ちょっと行ってみようか」とか「会ってみようか」みたいな感じになるのかなと思いますね。とにかくゆるく、コメントも「◯◯です」じゃなくて、「◯◯だよ~ん」って(会場笑)。そういうのが若いやつらとやりやすい方法かなと思います。

楠本:予想通りの展開でした(会場笑)。「DMM.make」のほうはどうですか?

亀山:ああ、「DMM.make」もね、今は年間5億ほどの損失です。つくった当初はもっと大きな赤字だったけど、今も運営費で赤字なんですよ。「そのうち、あそこにいろんな人間が集まってきてビジネスになる」なんて思ってたけど、これがなかなか難しい。たとえば東大の研究者が集まったり、シャープみたいな大手メーカーさんが来たりして、スタートアップにとっては出会いの場にはなってる。投資家も来るようになったりしてるけど、施設としてはぜんぜん儲かんない(笑)。機械とか、いろいろな設備だけでもすごくお金がかかるから。

だから本当にやめたくてしょうがないんだけど、評判が良過ぎて。「いいことやってますね」なんていろんな人に喜ばれると、「もう、やめにくいなぁ」みたいな(会場笑)。だからそのぶんは他部門で稼いで支えよう、っていう感じですかね。FX、ゲーム、太陽光、エロ配信あたりは利益が出てるけど、「DMM.make」とか「DMMアカデミー」とか、そのほかにもいろいろやっているけど、そっちはだいたい赤字です。

でも、そういうものをつくっていくと、結局そこがプラットフォームになっていくというか、やっぱりエンジニアが集まってきたりする。AIにしてもIoTにしても、つながる場所はどうしても必要だから。そういう場所にはなりやすいのかな。だから勝手にやらせるというか、この年になると俺はどうせ分かんないから。それなら若いやつ同士でてきとうに会って話をして、その結果「ちょっとこれにお金出してもらえませんか?」って言われて、それで「おお、出す出す」みたいな感じでやるのが1番楽して稼げる方法かなと思います(笑)。

楠本:今は儲からなくても、それをベースに大きなプラットフォームが動いていく、と。

亀山:まぁ、「DMM.make」は5年10年かかるかな。「DMMアカデミー」も今はとにかく高卒のやつらに場を与えてる状態だから。教育は何もしてない。「とにかく会社で暴れていいから」って。「自分らで好きな職場を探せ」とか「仕事の場所を探せ」って言ってる状態で、これも結構時間がかかるんですよ。でも、そういうことをやってると、そのうち、ちょこちょこっと面白いのが出てくる。だから何も教えてない(笑)。道具だけ置いとく。子供たちにお遊戯のやり方を教えて、「はい、踊りましょう」ってやるよりは、原っぱにポーンって放っておく。そうすると勝手に遊びを見つける。その辺の草を刈ったり、何かモノをつくったりして暴れだすから。

そういうことを今の子供たちはあんまりできていないから、それなら社会人手前の高校生ぐらいからそれを体験させてみようかなって。今は勝手に動き出すってことができてないというか。だからそういう場を与えて、「お前ら今までお利口にしてたけど、ここに来たなら実際のビジネスで何か自由に学んでみろよ」みたいな感じでやってます。

アカデミー生はほとんど馬鹿です(会場笑)。でも勢いはあって、馬鹿なことを言いながらも「これやらしてください」とか言ってくる。うちのアカデミーは卒業すればいいっていうところじゃなくて、何もしないと卒業させられるところだから。実際、自由を与えると8割ぐらいの子は迷子になっちゃって「何をすればいいですか? ミッションをください」と言い出すわけ。

でも、なかには、たとえば英語もぜんぜんできないヤンキーがいたんだけど、そいつは「(自分を題材にして)ビフォーアフターをやってください」と言ってきた。ライザップみたいに、「最初は僕がいかに英語をできないかを知ってもらって、それからフィリピンで英会話をやらせてください」って。それで「DMM英会話でこれだけできるようになりました」っていう風に紹介する企画を持ってきて、それが通った。それで今はフィリピンとかカナダに行ってるやつがいる。

そういう風に売り込んでいくやつもいる。そういうやつらは、勢いで、頭もだんだん良くなってく。だから考える場を与える。やっぱり、みんな社会人になってからも考えないと馬鹿になってくんだよね。ミッションを与えられて「お前は営業だけやれ」とか「余計なことはするな」とか、そういうことを言われて。でも「何やってもいいよ」って言われると一応考える。そのあたり、起業家っていうのはゼロから考えるから、起業経験者はそういう面だけでもトレーニングを積んでるよね。

楠本:クリエイティブな場づくりはクレイジーな人づくりっていう…。

亀山:クレイジーで、ファンキーっていう感じかな(笑)。

予測できないけど面白そうなことが生まれる場を作る

楠本:では、続いてロフトワークの林さん。林さんとパナソニックさんとは、渋谷で「100BANCH」という、「新しい100年を生み出す若者たちを応援しよう」というインキュベーション施設を一緒にやらせていただいています。ロフトワークさんもイノベーションを起こす場づくりということを本当にいろいろなさっていますので、まずはその辺のご案内をお願いします。

林千晶氏(以下、敬称略):私、生の亀山さんにお会いできて嬉しくてドキドキしてるんですけど(会場笑)。私はパナソニックさんや楠本さんと一緒に「100BANCH」をやっていたり、「FabCafe (ファブカフェ)」という“デジタルものづくり”のカフェを5年前に世界で初めてつくったりしてます。「FabCafe」は今世界10カ所に広がっているんですけれども、それも含めて、スティーブ・ジョブズが言っていた”Connecting the dots”(点と点をつなげる)というコンセプトでやっています。

要は「線を前にひくことはできない」と。本能に従ってやっていけば、おのずと点と点が豊かにつながって弧を描くことになる。でも、「これをやると、こういう風に儲かって、それで次にこれをやると云々」という風に、「前に点を置いて線をひくことはできない」って、スティーブ・ジョブズは言っていました。

亀山さんが猪子さんたちとやっていることも、それ自体は儲からないけど、それで水族館のプランも出てきたりして、5年ぐらいしたらそういうエンターテイメント施設で世界に打って出る会社になるかもしれない。きっと、それも線を前にひいてるわけじゃないんですよね。

亀山:「僕の前に道はない」なんていう言葉もあるよね(笑)。

林:ありますね。結局、「儲かるからやる」とか「正しいからやる」とか、そういうルールで前に線を引こうとしても、クリエイティブな場は1つも生まれないんじゃないかなって。

実際、デジタルものづくりのカフェをつくったときも、まず「すべてのものをデジタルで置き換えることができる」という感覚があったんです。私たちの体のサイズも、体の中で動いているものの情報も、どんどんデジタルになる。で、それをスキャンするだけじゃなくて、血がどんな風に流れているかといった情報とか、遺伝子の情報とか、なんでもかんでもデジタルでビットが行き来するようになる。しかもデジタルになると、今この瞬間、ここで測ったものをコンマ数秒で地球の裏側に送ることもできる。そうなると、「サービスを設計する」「ものをつくって流通させる」といったことがどんどん変わって、今までのルールが成り立たなくなる。

じゃあ、それがどんなインパクトをもつのか。線を前にひくことはできないけれども、絶対に変わることは分かってる。それなら1人でも多くの人に体感してもらって、「つくるが勝ち」にしようと思ったんですよね。まずそういうカフェを東京につくって個人で活動する人たちをどんどん巻き込もう、と。ただ、デジタルになると世界と戦うことになるから、「FabCafe」2店舗目以降は絶対に世界とつなげようと思っていました。

でも、カフェのビジネス自体はやったことがなかったから、どうすればお金になるかはさっぱり分からなかった。今でも覚えてるんですけれども、「なんでFabCafeをつくるんですか?」「人はFabCafeで何をつくるんですか?」って、記者の方々が聞いてくるんですよ。だから「それが分からないからFabCafeをつくるんです」って言うんですけど、絶対に納得してくれない(笑)。「それでは銃をつくるんですか?」ってなっちゃうんですよ(会場笑)。あまり覚えていらっしゃらないかもしれないですけれども、3Dプリンターが出はじめた頃は「これは銃をつくっちゃう機械だ」なんて話によくなっていたんです。「いやいや、もっと楽しいものをつくるから」って。

それで今はどうかというと、オープンして5年経ってますけれども毎日予約でいっぱい。自分のお店の小道具をつくったり、卒業制作をしに来たり、個人の看板をつくりに来たり、企業がプロトタイプをつくりに来たり、いつもいろんな方々が、それぞれに何かをつくっています。だから、予測できないものだけど、やろうとしている人たちが「面白い!」と感じて実践できる場をつくっていくことがイノベーティブな場づくりなのかな、なんて思っています。

楠本:ありがとうございます。この会議には経営者の方が数多くお集まりですが、経営にはいろいろなKPIがあります。売り上げは1番分かりやすいKPIですし、効率化に関してもいろいろなKPIがあります。また、テクノロジーに関してもKPIは設定しやすいと思います。ただ、クリエイティビティや「会話の楽しさ」というものは、どうやって企業経営に入れていくのかな、と。今はそういうことがあまり定まっていないようにも感じます。でも、夢や希望とともに「世界へ打って出るんだ」というリーダーシップを発揮して起業した方々は数多くいらっしゃるわけで。そういうものを経営のなかにどう織り込んでいくのか。本セッションがはじまる前、そんなことも壇上の皆さまと議論をしていました。

場によって社会課題を解決するイノベーションを起こす

楠本:では、続いて村瀬さん。村瀬さんが経営するWILLERもさまざまなことを手掛けていらっしゃいますが、特に「地方を元気にしていく」という活動に関して、まさに旗頭でいらっしゃると思っていました。バスの予約システムを提供する一方、地方創生ということで、いわゆる二次交通のバスや鉄道を手掛けたりしていらっしゃいます。その辺の事業とともに、「こんなことができる」「こんな風にして地方を元気にできた」といった事例をぜひお聞かせいただければと思います。

村瀨茂高氏(以下、敬称略):僕らのWILLERという社名は、「志」を表す‘Will’に、‘er’を加えた造語で、「志ある人たちが集まっている」ということでやっています。今は移動に関わる事業を主に手掛けていますけれども、やっぱり移動というのは何においてもすごく大事だと思います。産業革命だって蒸気機関による交通革命が促進したということがありますし、北陸新幹線ができたことで金沢にはさらに多くの人が訪れるようになりました。そんな風に、交通というのはそれ自体が世の中のメインではないけれども、世の中を変えるうえではすごく重要な役割を果たすんじゃないかな、と。交通というより移動ですね、そこに大きな興味を持って仕事をしています。

僕らもイノベーションという言葉は大好きで、「移動イノベーションを起こす」なんて大それたことを言っています。ただ、僕らが起こせるイノベーションというのは、テクノロジーによる大きな革新というより、社会課題を解決することなんだろうな、と。実はすごく遠いところじゃなくて、すごく身近なところに、普段は諦めてしまっているような課題がたくさんあるんじゃないかなと考えていました。

特に交通に関しては、たとえば皆さんが今から東京駅に行こうとしたら、路線検索をしたうえで「どの交通を利用するか」という選択肢になりますよね。でも、僕らとしては、今皆さんが「こんな交通があったら」と考えていらっしゃるようなことを1to1ですべて実現したいと思っているんです。「実は今そこにある」というインサイトを実現したい。じゃあ、そのインサイトって何かというと、諦めてしまっていたもの。「本当はこんなのがあったらいいよね」と思っているけれども、諦めてしまっているものをきちんと集めて、それを社会課題として捉えたうえで解決できたらいいなあ、と。そういうことをやっています。

たとえば今は京都丹後鉄道という、京都の北部にある全長114キロの鉄道を運営しています。でも、こちらも先ほどのお話にあった通りで、「前に線をひいた」というわけじゃなくて、「これやったら、なんかできるんじゃないの?」みたいなところがあって、それではじめた事業です。

で、そのなかで「やっぱり鉄道を支えるには地域の方々と何かやっていかないと無理だよね」となりました。でも、僕らが外から来た人間ということもあって、当初はなかなか地域の方とコミュニケーションを取ることができませんでした。5年も10年もいれば別ですが、ある日ぱっと外からやって来た人間がいきなり「こんなことをやります」なんて言っても、なかなか地域の方とお話はできないという面がありますから。

ですから、最初の2~3年は「黒字だ」「赤字だ」という話はあまりしませんでした。本来はインターネットを活用しつつ、外からお客さんを呼んで鉄道事業を黒字化するということが僕らには期待されていたんですね。それもあって公募で選ばれたので。でも、「それはちょっと置いておこう」と。それで最初の2~3年は地元の方と一緒にいろいろ考えていこうということで、そのための場をたくさんつくっていきました。

それで徹底的に地域へ入り込んでいきました。僕自身も約2年間、その地域に住んでいましたし、そのなかで「これは自分だって車を選ぶよなぁ」なんて感じたりして(笑)。実際、マイカーで移動するようなところだったんですが、とにかくそんな風にして地域に自ら入って場をつくり、それで今年で2年半になります。その結果、最近は「WILLERさんって外からお客さんを呼んできて地域を豊かにしてくれるんじゃないの?」といったことを、地域の皆さんによく言ってもらえるようになりました。それが課題とされるようになってきたわけです。

これ、実は良いことなんですね。「じゃぁ皆さん一緒にやりましょうよ」と言える流れが直近2年間で出てきたということなので。結局、僕らは鉄道事業という人を運ぶだけに見える事業を手掛けつつ、実は地域でやる気のある方をつないでいきながら、地域一体化みたいなことを結果的にはしていた。DMO(Destination Management Organization)の観光地域づくりのようなことを鉄道会社がやっている、みたいな(笑)。そんなことを今はやっています。大事なのはこれからですが、今はそんな風にして地域の方々に一生懸命考えていただくということもできつつあるので、また今後何かやっていきたいと思っています。

楠本:地域を盛りあげるという観点でも、大事なのは企業の組織論とかではなくて、個人のワクワク感やクリエイティビティ、あるいはちょっとクレイジーな想いみたいなものを、どうやって増殖させるかということなのかなぁと、伺っていて思いました。
 

関連記事

名言

PAGE
TOP