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菅副総理への進言〜成長とは何か?

投稿日:2009/12/21更新日:2019/08/21

経済界の重鎮の1人から声がかかり、菅直人副総理を囲み成長戦略を議論する「日本の成長戦略を考える会」へ参加する光栄なる機会を頂いた。他の参加者は、総合商社のトップ、医薬品企業のトップなどの著名経営者ばかりである。年齢的にも、財界の立場でも僕は一番下。つまり「ペーペー」の僕が参加できるのは、とても名誉なことである。

せっかくの機会なので、数日前より「成長」に関して、何を申しあげようかと真剣に考え続けた。時間も限られているので、発言の機会は一回しかないであろう。従い、短く簡潔に伝えなければならない。しかもありきたりの提言ではなくて、インパクトが必要である。

そこで、週末に子供たちと遊びながら、頭の中で発言の論旨を考え続けた。

「成長とは、そもそも何だろうか?」「需要とか供給とかの議論があったけれど、成長には何が本当は重要なのだろうか?」「今、日本に欠けているものは何であろうか?」

週末は、長男は中学受験に向けての塾通いで、次男から五男までは囲碁スクール通いである。僕は、次男から五男までの送り迎えおよび付き添い担当である。4歳になったばかりの五男は、囲碁に長いこと集中できないから、スクールを早めに切り上げて、僕と一緒にプールに行ったり、公園に行ったりして、お兄ちゃん達が終わるまで、パパと一緒に遊ぶことになる。その間に、僕は、「成長」に関して考え続けるのである。

週明けの月曜日の朝、早めに会場であるホテルの一室に入ることにした。新聞社の主筆の方や主催の経済界の重鎮を含めてもたった7人の参加者である。参加者は偉い方ばかりなので、僕は、いち早く会場入りするよう心がけた。現職の副総理が一時間半も時間を割いてくれるのである。とても光栄である。

その日の新聞社の各紙の紙面では、「鳩山内閣への支持率が急落している」という見出しがトップページに躍っていた。8時ちょっと前に、管副総理が足早に入室された。思ったよりも朗らかな印象であった。

僕は、テーブルの一番端の末席に腰掛けた。主催者より趣旨の説明がされ、菅副総理より、今行っていることに関して15分程度お話を頂いた。

そして、参加者より意見が出され始めた。僕は、暫くしてから頃合いを見計らって手を上げて発言をする機会を得た。そして、以下話し始めた。

「大学院を経営し、ベンチャーキャピタルを運営する立場から、成長のことを良く考えます。先ずは、成長を定義しなければならないでしょう。エコノミストによると、成長とは、市場の成長であり、経済の成長ということになろう。しかし、そうなると僕にとってはわかりにくくなってしまう。僕にとっての成長は、企業の成長であり、家族の成長であり、個人の成長であると思います。そもそも市場も経済の成長も、企業、家族、個人の成長を無くしては、成り立ち得ないからです。

その成長のためには、何が一番重要なのか。需要なのか、供給なのか。僕は、成長に一番重要なのは、「成長したいという願望」だと思います。税金を投じるよりも何よりも、先ずは個人、家族、企業に成長したいという願望を喚起することが、成長にとっては最も重要なのだと思うからです」。

そして、続けた。

「そのためには、3つの方法があります。全て財源を必要としない施策です。

一つ目が、成長に寄与している人を称えることです。政府の最も大きな役割は、国民にメッセージを送ることです。成長に寄与している、起業家、財界人などを称えることにより、頑張っている人間に報い、多くの人にも成長したい願望を喚起することです。

二つ目が、成長の方法を教える、つまり人材育成することです。やる気が喚起されたら次は、成長する方法を教えればよいのです。

そして三つ目が、成長の足かせを取り払うことです。悪い規制をやめ、不必要な税的負担などを取り払えばよいのです。そうすることによって、願望が喚起され、方法論が共有化され、そして足かせが取り払うことになり、その結果、自然と企業、家族、個人は、成長することになりましょう」。

と早口で伝えた後に、次のとおり、要望した。

「最近、気になっているのが、弱者救済ばかりを論じているところです。弱者救済することはいいことなのですが、頑張った人間に報いないと、社会から活力が奪われていきます。その中でも子供手当ての所得制限は、特に気になります。

個人が成長をすると、必然的に所得も上がります。所得が上がると言う事は、税金を多く支払っていることになります。数十万、数百万から所得によっては数千万円払っている人もいると思います。そのうち、子供手当てで返って来るのはせいぜい数十万円です。経済的に大したことはないのですが、どうもこの成長に寄与した人を罰則的に差別的に対応する。つまり、努力に報いようとしない施策と言うのには、疑問を感じます。

しかも、所得制限をすることにより、頑張った人間は、子供は生まなくてもいいという間違ったメッセージを送ることになると思います。社会の成長のためには、『大いに成長し、大いに子供を生め』というメッセージが必要になります。頑張って働き、税金を多く納め、多くの子供を育てている人に報いる社会であって欲しいと思います」。

と言って、進言を締めくくった。菅副総理が、途中でメモを取っているのが目にとまった。「最後は、生々しい話が出てきましたね」とニコリと笑顔で答えられた。菅副総理も、所得制限を設けることには反対なのである。是非とも、個人にやる気を喚起するメッセージを発して欲しいと重ねてお願いした。

そうなのだ。僕は、日本に欠けているのは、成長が必要だという社会的なコンセンサスなのではないかと思う。「個人、家族、企業が大いに成長するためには、成長への願望を喚起させることである。そのためには、(1)成長に寄与している人を称え、(2)人材育成を促し、(3)足かせを外すことが肝要だ」と思っている。

その後、さまざまな議論が行われた。僕が印象に残ったのは、「政治は、もっとわかりやすい言葉を使うべきだ」であったり、「多くの人々を政治に参加させることが重要である」とかいう意見であった。

でも、やはり、日本の成長を願うならば、個人が成長する願望が重要であり、家族も成長し、企業も成長する必要がある。そのためには、成長することが楽しい、というように思わせることが重要なのであろうと思う。

今年も早12月の後半で、年の瀬を迎えている。子供たちは、皆今頑張っている。長男は受験である。次男、三男は、来年も囲碁の団体戦で優勝するとともに、個人戦でも結果を出したい、という願望を持って努力をしている。四男は、来年は小学校に入学である。五男も囲碁を始めた。

オフィスでは、ベンチャーキャピタリスト達が、産業の創出に関する議論をしていた。僕は、来年は個人として、もっと発信することを心がけていきたい。

来年も個人が成長し、家族も、企業が成長する年にしたいものである。その結果、社会全体の成長に寄与できるからである。

皆さん、良いお年をお迎えください。m(__)m

2009年12月21日
二番町のオフィスにて
堀義人

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