11月4日「お好み焼課」って何だ?オタフクソースに学ぶ集中戦略
「お好み焼きソース」は当然、お好み焼きが食べられなければ消費されない。メーカーの売上げはお好み焼きそのものの需要に左右されることになる。徹底した集中化で需要拡大を図るオタフクソースの戦略を見てみたい。
筆者を含む関東人のお好み焼き摂食頻度はかなり低い。また、そこにかけるソースに対するこだわりも非常に希薄で、平気でとんかつソースをかけて食べたりしてしまうのだ。関西方面や広島方面の人から言わせると、アンビリーバボー!な行動だそうだ。
あるとき勧められるままに、「オタフクソース」を使って食べてみた。……うまい。「今まで他のソースを使って食べとったワイは、なんちゅうアホやったんや!」と言葉まで怪しくなるくらい衝撃的に世界が変わった。以来、ソースは同社の製品がお気に入りだ。
しかし、調べてみるとオタフクソースの商品ラインアップは驚くほどソース一本だ。多少、酢やサプリなども製造しているが、ほとんどがソース。それもメインはお好みソースなのだ。恐ろしいまでのニッチャーである。しかし、ソース業界ではブルドックソースと戦う第二位のソースメーカーなのだ。
マイケル・ポーターのフレームワークで考えれば、リーダーに戦いを挑む「差別化戦略」をとっているといえるが、一方で徹底的にお好み焼きにこだわる「集中戦略」という戦い方であると解釈した方がいいのかもしれない。同社の戦略は徹底した「需要拡大策」にある。そして、集中戦略の要諦は、特定のセグメントに特化して強みを発揮しつつ、そのセグメントを拡大していくことだからだ。
同社のお好み焼き普及・拡大策の努力は徹底している。まずは量がさばける飲食店を増やすために、お好み焼き店開業予定のプロを養成する「お好み焼研修センター」を全国7カ所に設け、年間約300人が受講しているという。
その運営を担うのが営業本部マーケティング部に属する、その名も「お好み焼課」だ。同課の活動はプロ養成だけでなく、家庭での需要促進を図るため「お好み焼教室」を開催し、ホットプレートで作るおいしい焼き方を伝授しているという。
そして自社社員のお好み焼きに対する知識・技術錬成にも力を入れている。2006年から社内資格「お好み焼士マイスター制度」も導入した。
たゆまぬ需要拡大の努力をしている同社であるが、昨今の外部環境が凄まじい逆風となって襲ってきている。肝心の「粉」の原料高は需要の低下をもたらすことになる。集中戦略の弱みは、集中したセグメント自体が縮小すると大きなダメージを受けることになることになるのだ。
マーケットの縮小に手をこまねいていては事態の打開はできない。そうしたときには、マーケットのセグメントをもっと細分化して、成長や拡大の可能性があるところを見つけ出すことが肝要だ。まさに、同社はその展開を行った。
同社が2008年9月1日に発表したリリースのタイトルは、「離乳食が終わったお子さまに…『1歳からのお好みソース』」
リリースによると、3歳くらいまでは、塩分の高いもの、濃い味、刺激の強い味はできるだけ避けた方が望ましい、として塩分を30%カットし、さらに、アレルギー特定原材料25品目不使用、という配慮もしているという。
そもそもなぜ、1歳児にお好み焼き?と考えてしまう人も多いかもしれない。
・野菜をたっぷりとることができ、栄養バランスが良い
・苦手な食材を細かく刻んで入れることができる
・一口サイズのプチオコ(プチお好み焼き)なら食べやすく、チーズやコーンなどのトッピング楽しめる
どうだろう。理論武装も素晴らしい。
徹底した集中化を行い、そのセグメントでの需要拡大を図る。さらに、セグメントを細分化して、伸びシロのあるところを探す。オタフクソースの戦略から学ぶところは多い。