成長過程における難所と、その対応策とは?――設立9年で上場 i-plug取締役に聞く Vol.1

投稿日:2023/09/01更新日:2023/11/08

経営環境をとりまく変化の流れは速い。そんな変化に対応しようと各社は事業戦略を策定するものの、組織が対応できずに、計画が頓挫したり、延期(ディレイ)したりしてしまう。近年、そんな企業が少なくない。特に、変化や成長スピードが速いベンチャー企業はなおさらである。

今回は設立9年でマザーズ上場を果たした、急成長のベンチャー企業「株式会社i-plug」の取締役兼、グループ会社「株式会社イー・ファルコン」の代表取締役 田中伸明氏に、グロービス マネジング・ディレクターの板倉 義彦がインタビュー。激流の中でも成長を遂げる、その過程における組織に必要な能力や、事業と組織のバランスなどについて伺った。

問題が顕在化して、初めて経営のケイパビリティの欠如に気づく

板倉 創業メンバーとしてi-plugを2012年に立ち上げ、同社は2021年3月にはマザーズ市場に上場されました。企業が急成長していく中で、いろんな試練を乗り越えてこられたと思います。まずお聞きしたいのは、どのように組織として必要なケイパビリティ(能力)をキャッチアップしてきたのでしょうか

田中 非常に悩ましい問いですね。この11年間、経営そして組織としてのケイパビリティが見えない中で走ってきたので、組織が傷んだり、問題が顕在化したりして、ようやくそのケイパビリティが不足していることに気づく。そんなことの連続だったように思います。

その原因は実践に基づくケイパビリティがなかったことでした。当社の場合、私を含め創業メンバーはグロービス経営大学院の卒業生ですから、体系的に経営について学んできた。しかし、実務における0から1の立ち上げ、1を10や100にしていく組織作り、M&AやPMI、新規事業の経験は不足していたと思います。

ですから、問題に気づいてから都度自ら補い続けてきた、というのが私たちの歩みです。11年もやってきて、何回失敗したんだという感じですが、ようやく最近になって資金ができ、更にこの補強を積極的にやり始めるようになりました。

板倉 補強というと具体的には、どのような取り組みをされたのでしょうか。

田中 例えば、上場後にCHRO(最高人事責任者)を採用しました。それ以前は、役員間で役割分担して担当していましたが、従業員数が倍々に増えていく中では組織の課題について想定はできるものの、対処ができなくなってきました

上場後、会社を数百名から数千名にグロースさせた経験が必要だと思ったので、そういう人を探しCHROになってもらいました。最近は、こうした経験や知見を持った即戦力の人材を積極的に採用し、組織体制の整備を行うようにしています。

「事業への投資」と「人・組織への投資」の優先順位付けの難しさ

板倉 外部人材の手を借りたりせずに「自分たちで、なんとかしようとしていた」フェーズでは、一番何が難しかったですか。

田中 大きく2つあります。1つは資金(お金)の問題です。お金があれば、外部人材の力を借りることもできたかもしれません。ただ、事業の立ち上げには相当苦戦しまして、借り入れも難しい状況がありましたから、最初は自分たちで「(外部の力を借りずに)何とかするしかなかった」のが、本音です。

もう1つは、「人・組織の成長」と「事業の成長」の優先付けの問題です。事業の立ち上げ期を乗り越え、拡大期に入って従業員が増えると、いろいろと組織に関する問題が生じてきました。ただ、資金も限られていましたから、事業が200%成長と絶好調だったので、「人・組織への投資」よりも「事業への投資」を優先するという判断をしました。「事業成長がすべてを潤す」という考え方ですね。

板倉 恐らく多くのスタートアップで、事業サイドの力が強いことにより同じようなことは起こりがちなのだと思います。見方によっては「事業成長がすべてを潤す」ではなく「隠す」かもしれません。

田中 「隠す」という言葉はドキッとさせられますね。元々、グロービスの社員として営業をやっていた時には、クライアントと対話しながら、散々実務を学ばせてもらいました。それにもかかわらず、自身が創業に携わってみると、問題に気づいてはいたものの、自社では人・組織への投資を優先することができませんでした。今振り返ると、もっと良くできたのではないかと後悔があり、私自身の力不足を感じる点です。 

ビジネスモデルによっては、「事業」以上に「人・組織」への投資が重要になってくる

板倉 でも、上場企業として世の中で注目されるほど規模の企業になっているので、結果として良かったのではないでしょうか。お話を聞いていると、正しいかどうかはわからないものの、それも1つの解だという気もしますが……。

田中 経験則として、そういうやり方で会社を成長に導いてきているので、そうなのだと思います。ただ、私がグロービスで経験してきたことを考えれば、人・組織の成長も大事ではないかと思っていて、そこが悩み所です。

例えば、イー・ファルコンが提供している「適性検査」は、プロダクトだけで他社との違いを出すのが難しくなってきています。そのため、ソリューション力、営業力が非常に問われ、立ち上がりに時間を要します。こういう状況においては、組織としてソリューション力、営業力の強化に力を入れていかないと、事業としての成長は難しいと思います。

板倉 イー・ファルコンでは、これまで以上に組織力が必要になるわけですね。

田中 そうです。数カ月で成果を出せるようなビジネスもあれば、1〜2年かけて、組織を強化してからこそ結果がでてくるビジネスもあります。イー・ファルコンは後者だと考えています。

私は社長として、イー・ファルコンの事業を伸ばしていくためには、ベースとして人・組織の力を引き上げることがマストだと思っています。人・組織への投資は積極的に行っていきたいと考えています。

次回に続く

  • 田中 伸明

    グロービス経営大学院2010期生/大阪校 株式会社i-plug 取締役、株式会社イー・ファルコン代表取締役

  • 板倉 義彦

    グロービス・コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター

    アグリビジネスの大手企業で商品企画、および生産企画での経験を積んだ後、IT 業界に転じて製造業向けソフトウェアの営業・導入コンサルティング、および不採算営業部門の組織改革にリーダーとして携わる。

    グロービスにて様々な業種・業界のクライアントに対して、人材育成・組織開発の側面からのコンサルティング活動を行う。名古屋エリアの法人事業統括、新サービス開発、部門経営企画を歴任し、現在は、マネジング・ディレクターとして、人材・組織開発のコンサルティング部門の経営、およびグローバル事業の推進に携わる。

    同時に、経営戦略ファカルティにも所属し、以下業務にも従事。

    ・ 経営大学院、エグゼクティブスクールでの経営戦略のコンテンツ開発

    ・ 経営大学院/企業研修の戦略、リーダーシップ、自社課題の講師

    国立東京農工大学 農学部卒業

    豪州 ボンド大学経営大学院修了(MBA)

    米国 Aspen Institute Aspen Seminar 修了

    英国 ロンドンビジネススクール Senior Executive Seminar 修了

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