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東京に東大発スタートアップエコシステムをつくる―「東大×GCP」起業家教育を協創(前編)

投稿日:2022/09/20

目次

2022年5月から2ヵ月、GCP(グロービス・キャピタル・パートナーズ)は東京大学アントレプレナーシップ教育寄付講座との共催で「アントレプレナーシップ教育デザイン寄付講座(全5回)」を開催した。起業・スタートアップに関心がある学生を対象に、「組織・事業・ファイナンス」の実践的フレームワークの講義、ユニコーン起業経営者・スタートアップ経営者を招いての対談、ベンチャーキャピタリストとのネットワークづくりの場を提供。この初めての試みについて、東京大学とGCPの担当者が集い、その経緯や効果を振り返った。(全2回、前編)

東大にはスタートアップのマグマが眠っている

―東京大学の教育には、全学部を貫く「3つの柱」がある。「アントレプレナーシップ・AI・サステナビリティ」だ。今回の寄付講座は、その柱に関わるプログラムである。「東大×起業」というテーマに対し、東大はどのような取り組みをし、課題を感じていたのだろうか。

坂田:本学内での起業熱は、かなり高まっています。起業家育成に関する講義もすでに約60種類の用意がある。ただ、中身を精査すると2点の課題が見えてきました。

1つは「本学が強みを持つディープテックに特化したプログラムがない」こと。事業化まで時間のかかる分野で、特有の手法や環境を用意する必要があるため、これに特化した内容の講義の開発が必要でしたた。

2つ目は、「ハイエンドの起業家教育が足りない」こと。既存のコースは「中級レベル」までのものが大半。すでにそのレベルにまで到達している学生も多くなり、次のステップとなるコースが必要でした。そこに、GCPさんのセミナーがハマったんです。

松尾:起業の先駆け領域であるAI・ディープラーニングは、数学的に難易度が高いので東大との相性がいい。実際、PKSHA Technologyなど、本学卒業生によるスタートアップが続々と出ている。背景として、産学協創推進本部の20年来の活動の実績が溜まっており、活動全体が厚みを帯び、「東大でさらなるスタートアップ育成を」という社会的要請も高まっている。もちろん、日本の経済成長のためにも益々力を入れるべき領域ですから、大きな潮流が生まれているとみています。

今野:「世界における東京大学」としたとき、こと起業はどんなポジションで何を目指すと考えておられますか?

坂田:先日、シュプリンガー・ネイチャー(世界的な学術出版社)で自然科学系研究機関ランキングが出ました。東京大学は今年、世界12位。これは論文評価のみですが、本学は物理・化学などの「ディープテック系起業」のベースになる領域では高い国際競争力を維持していると認識しています。情報系の起業家は増えた一方で、ディープテック系起業の数は、その立ち位置にしては少ないという印象。ポテンシャルが生かしきれていないのです。

また、我々は、2017年に「FUTURE SOCIETY INITIATIVE(未来社会協創推進本部)」という活動を創設しました。世界のウェルビーイングやサステナビリティに貢献する、と東京大学として謳ったわけです。このビジョンについては、東大総長自らが世界に向けて発信していますが、スタンフォード大学のようなトップ大学からもユニークなものとして認識いただいています。

今回のGCPさんとのセミナーで出雲さん(株式会社ユーグレナ代表)が「今の起業家は、自分の利益だけでなく社会への貢献=社会的起業を考えている。というより、そうでない人はいない」と仰っていましたよね。このように、起業を志すみなさんの活動は、大学全体が目指す大きなビジョンと軌を一にしていると思います。

松尾:私事ですが、2005年から2007年までスタンフォードにいまして、シリコンバレーのスタートアップエコシステムに感嘆していました。同時に、大学の周りにスタートアップがたくさんあるのは、当たり前だと思っています。現時点では「東京=スタートアップシティ」という認識はグローバルにはないとは思いますが、エコシステムの変化は指数関数と思っており、5年後10年後に大きくなっている可能性は十分ある。東京大学がその中心になれたらと思いますね。

講座を創るプロセスもスタートアップのように

―今回の寄付講座は松尾先生とGCP今野の旧知の関係性をキッカケに始まった。VC(ベンチャーキャピタル)が主催するハイエンドな起業家養成講座実施は初の試み。大学側はどのように考えていたのだろうか。

松尾:今野さんと話をするうちに、革新的な内容をリクエストすることも増え、結構大変なことをお願いしているかもしれないとは思っていました。結果、こちらの要望に応えていただき、学生のためになる素晴らしい講座となった。そもそもこの講座をつくるプロセスが、行動を起こしたら仲間が集まってきて、さらに良いものが生まれていく…とスタートアップ的でしたね。

坂田:「産学共創教育」が重要なキーワードだと考えています。研究に関しては、2010年代には「産学協同」「産学共創」が当たり前になっていましたが、教育に関してはつい最近まで全国的に見ても、本格的な産学協同に踏み込めていませんでした。ちょうど我々が現場の専門知や熱量を伝えるには「産学共同で教育をする必要がある」という考えに至り、その準備をしていた時にGCPさんの方から声をかけていただいた。

起業家をよく知るのは、規模が大きく、かつ相対的に比較的早いステージから資金を入れられているVCです。レイターステージのVCよりも起業家との関係も密だろうし。GCPさんに協力していただくことで、我々が考えていることが実現できるのではと思った次第です。

今野:プログラム内容は、半年ほどかけて何度もディスカッションさせていただきました。「ハイエンドに」というリクエストはありましたが、課題を踏まえた企画時のポイントがありましたか?

松尾:「ハイエンド」の意図は、「学生に自分のレベルを認識してほしい」ということでした。東大の学生は、講義を受けると頭で理解して「できる気」になってしまうんです。ところが実際に事業プランをつくると結構ひどかったりします。レベルの高い会話を聞かせてあげることが「もっとレベルを上げないと」「自分はまだまだだ」「やってみないと分からないんだ」という気づきに繋がると期待していました。 

坂田:これは、学術研究指導でも全く同じなんです。最高の研究成果を知り、それとのレベルの差異を認識し、激しく落ち込んで、「自分には何が足りないか」と考える機会がないと、人は上昇しない。私の研究室では、合宿時に『Nature』『Nature Physics』『サイエンス』『Nature Communications』クラス以上の論文を1日徹底的に読む会をやります。

非の打ち所のない研究を目の前にたくさん置くことで、自分たちがいかに足りないかを認識する、打ちひしがれる経験をしてほしくて。先にお話ししたように、東大には起業している学生や起業準備中の学生が増えてきた。だからこそ、ハイレベルの起業に触れるべき時なのです。

今野:ポテンシャルは高いがリテラシーや経験値が不足している学生の皆さんに、どのようなコンテンツを提供すると一番効果的か、我々も必死で考えました。特に今回、全5回のコースでしたが、意図的にGCP内の若手のキャピタリストを登壇させ、かつほぼ全員の資料をレビューして、全取り替えすることもしばしばでした。登壇1週間前に全変更することもあったほどです。我々としても勉強になり刺激になりましたし、弊社の若手も一皮二皮むけました。

松尾:内容も進め方も素晴らしいものでしたが、裏でそんなに大変だったとは。有り難うございます。

運営の視点から

―本講座の運営を担当した東京大学武田先生とGCP深川から見た、本講座の特徴や学生の様子を聞いてみた。

武田康宏先生(東京大学松尾研究室 学術専門職員)

どのような学生が参加したのか

177名が参加しましたが、学年は学部1年から博士3年まで、所属は最も多い工学部から、医学部、経済学部、法学部、教養学部など幅広かったのが特徴です。なかでも、教養学部の学部1~2年生の割合が2割を占めたことのインパクトは大きく、早期から起業というキャリアに関心を持っている学生の参加があったことは良かったと感じています。すでに起業しているという学生もいましたが、ファーストキャリアは就職するものの、将来起業する土台づくりのために参加する学生が多かった印象です。

本講座の特徴

毎回、スピーカーの“先輩”起業家に対して、コントリビューターの“後輩”起業家が質問していく形式をとりましたが、「起業家同士の会話がすごい」「熱量が伝わった」という学生が多かったです。アンケートでも、「(オンライン配信もあったが)教室に来てよかった」という声が聞かれました。

来年に向けて

東大で実施しているアントレプレナー系の講座でも最上位に位置付けています(参考:東京大学内のアントレプレナーシップ関連講座検索)。本セミナーでは、戦略的に、メインスピーカーにはグローバルで戦っていらっしゃる起業家の方々に登壇いただく設計にしているため、是非グローバルな視野と野心を持つ学生に来てほしいと思っています。また、今年は女性起業家が少なかったので、GCPさんともご協力の上、起業キャリアのロールモデルとして、また、ネットワークとしても、女性起業家のご登壇機会も増やしていきたいと考えています。

深川 康介 (グロービス・キャピタル・パートナーズ インベストメント・プロフェッショナル)

学生との関わり

点では無く面で、講師としてでは無く一人の人間として、学生と関わらせていただくことを意識していました。具体的には授業前後の交流、毎週のオフィスアワー実施、授業を離れての懇親会の開催などです。

講座終了後にも起業の相談をいただいたり、グロービスが主催するアクセラレーターに参加いただいたりと、学びを行動に移す学生が複数登場しています。勇気ある一歩を踏み出す学生の姿に我々も刺激を受けています。

来年以降に向けて

点を線へつなげるため、世代間の交流を促進していきたいと思っています。来年も同時期に開催予定ですが、それまでに勉強会・講演会の開催を行いたいという声を学生の方々からいただいています。講座のゼミ化など、継続的に学び・刺激し合う場を構築していくことも考えています。その先に「東京=スタートアップシティ=東京大学エコシステム」という状態を目指し、その1つのハブになれればと思っています。

2022カリキュラム・日程

後編につづく(明日9/21公開予定)

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