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未来の食はパーソナライズ化に向かう#4 〜未来の食の提供モデルが実現する世界〜

投稿日:2022/09/14

DXにより革新された未来の食のあるべき姿や、関わるプレイヤーの動きについて研究する連載。今回は、前回提言した未来の食の提供モデルであるローカル・パーソナライゼーション・モデル(以降、LPM)が実現する世界について、より詳しく解説します。LPMが実現すると、体と地球の健康、そして人の心にも最適な食のパーソナライズを実現させることができます。具体的にはそれぞれにどういった影響があるのでしょうか。

※本稿は、グロービス経営大学院教員の垣岡淳の指導のもと、多様な業種で構成された5人の社会人大学院生(福野、宇田、北川、小林、吉田)が調査・研究を行った結果に基づいています。

体のための取り組み

寿命延伸による医療費の増大など、膨らんでいく社会保障コストを軽減していくために、疾病予防や健康増進という観点での食はますます注目されてきています。LPMではデジタル技術を活用し、その人の体がいま必要とする成分が導かれ、最適化された食材、栄養素、調理方法などを満たしたメニューを提供していきます。IoTやウェアラブルデバイスを通じ計測した個人の健康、運動、睡眠などのデータや分析されたゲノム情報、腸内細菌、健康診断結果データをパーソナル・ヘルス・レコード(PHR:病院や薬局ごとに保存・保管している個人の医療データ)に紐づけて活用することも可能です。こうして自分の健康状態が可視化されることで、総合的に判断されたサービス提供が実現されます。

地球のための取り組み

① 表面的な影響

表面的には地産地消が実現し、地元の農家や工業的に生産されたフードマイレージ(輸送に伴い排出されるCO2が与える環境負荷のこと。食料の重量×輸送距離で表す)が低い食材が利用され、よりサステナブルな食事が日常に提供されていきます。

② 水面下の影響

生産者、製造者、販売者、消費者の食を取り巻くデータが連携されることでデータの可視化・評価ができるようになります。するとCO₂排出量、水資源の枯渇可能性、フードロス、在庫の需給バランスなどをより高い精度で予測できるようになっていきます。予測精度が上がればより持続可能なシステムの構築がなされ、食を取り巻く環境問題の解決に結びついていくのです。
例えばフードロスにつながりやすいものとして、変動要素の多い農作物の収穫量が挙げられます。しかしLPMが実現すれば、在庫となった食材をマルシェでレコメンドしたり、他の食材の代替としてメニューに活用する方法を提案・実行されたりすることなどが考えられます。LPMはこのように需給バランスを調整し、フードロスを無くし、ロスの再利用を進めることが可能で、最適化されたサステナビリティな食を提供し、サーキュラー・エコノミーを実現していく循環社会を目指すことができます。

心のための取り組み

LPMによって個人への食の提供がパーソナライズ化されたシーンには、具体的には以下のようなものが考えられます。

  1. 多様な選択肢の中からいくつかの最適なレコメンドがされることで、自分の予測を超えた好みとなる新メニューや新しい味と出会うことができる。
  2.  地域コミュニティで出会って知り合いになった農家のおじちゃんが作った野菜をマルシェで見かけ、フォログラムで映し出された本人(またはそれを通じたAI)から直接レコメンドされることで購入する。
  3. 地域社会で共通した趣味を持つ人々がマッチングして、一緒に食事をする場が提供されることで、共通の話題を通じて盛り上がり、楽しい食事の時間を過ごすことができる。

このようにLPMは、食を通じた地域の人々とのつながりやコミュニケーションを生み出して楽しむサービスも提供します。こうしたつながりが心を豊かにし、個人や社会の幸福度や人間性価値の向上、つまりはウェルビーイングへと結びついていきます。

未来の食の提供モデルが成し遂げる未来とは

ここまで、ローカライズ・パーソナライゼーションモデル(LPM)による、人々の誰もが健康的な「体」を維持し、持続可能な「地球」を守りながら、それぞれの人にとって多様で豊かな「心」で自由な生活を過ごすことができる未来の食を示してきました。

最終回となる次回は、LPMを中心として目指す未来の食の姿を実現していくための「難所」の乗り越え方について考えます。

  • チームFDX(Food Digital Transformation)

    垣岡講師研究プロジェクトメンバー(吉田和樹、宇田のぞみ、北川真也、小林彩香、福野伸也)
  • 垣岡 淳

    グロービス経営大学院 教員

    関西学院大学商学部卒。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了(修士:経営学)、大阪産業大学大学院経営・流通学研究科博士後期課程修了(博士:経営学) 学部卒業後、大手食品メーカー入社。大手流通小売企業を対象とした営業部門のラインとスタッフを経験。その後大学院を経て株式会社日本総合研究所入社。コンサルティング部門にて消費財/生産財のメーカー及び商社、情報サービス/通信、流通小売、サービス等、幅広い顧客を対象に経営戦略・マーケティングを中心とした調査・コンサルティング活動に従事。 現在は複数の企業の経営アドバイザリーとして活動する傍ら、グロービスにおいてマネジメント・スクールや企業研修での講師を務める。複数の大学における非常勤講師、大阪産業大学客員教授(産学連携担当)などを歴任。各種セミナーにおける講演、雑誌等への寄稿も多数。

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