デジタル社会の「信頼」に亀裂―Amazonフェイクレビューの罪

どの商品を購入するか、レビューや口コミを参考にする方は多いのではないでしょうか。もしもレビューがフェイクだらけだったら、プラットフォームに対する信頼は失墜します。Amazonのフェイクレビューのブローカーに対する訴訟を例に、デジタル社会における「信頼」の重要性を解説します。

Amazonユーザーレビューが$25で販売

2月下旬、米アマゾン・ドッド・コムがフェイクレビュー(偽レビュー)のブローカー/仲介業者、AppSallyとRebatestの2社を訴えたというニュースがメディアを賑わせた。

実際に、Googleで「AppSally buy Amazon verified reviews」と検索すると、「Amazon Marketing Reviews, Votes, Verified | AppSally」という検索結果は出るものの、アクセスしても404エラーとなっていてサイトは見られない。訴訟の影響だろうか、すでにサイトからは訴訟の対象となったサービス自体が削除されているようだ。

とはいえ、そこはGoogle検索。検索結果から保存されているキャッシュ(2022/2/22時点)で削除前のサイトをみてみよう。

キャッシュからはAmazonの商品購入ユーザーのレビュー獲得がサービスとして$25から売られていたことがわかる。中身をみてみよう。具体的なサービスはまさに“仲介”の形をとっている。評価してくれるいわば偽ユーザーに対して商品を実際に提供して(ポジティブな)レビューを稼ぐサービスだ。

直接的に指示しないまでも、レビュワーが商品あるいはフィーをもらってレビューを書くのであれば、依頼側の意図を汲んでレビューがポジティブ(5段階のユーザーレビューで4か5)になるのは自明だろう。さらにレビューの分布に信憑性を持たせる意図だろうか、わざわざネガティブなレビューを購入することまでが可能になっている。

正直、ここまでのサービスがいとも簡単に購入できるようになっていたことに驚いた。

実際、執筆時点でもAppSallyではインスタグラム(IG)のフォロワーの販売($20~)など、SNSのフォロワーやビューの数、ECサイトの評価などを売るメニューが目白押しだ。実は日本語でも同様なサービスプロバイダーを見つけることができる。例えば、Twittersは“日本最大のフォロワー・アカウント販売サイト”を謳っている。

このようなサービスが存在すること自体、アマゾンをはじめとするプラットフォームビジネスにおいて、ユーザーの評価や“アテンション(注意)”が売り手や他のユーザーに与えるインパクトが極めて大きいことを物語っている。

フェイクレビューは、プラットフォームを縮小させる

アマゾンやウーバーをはじめとするプラットフォームビジネスではプラットフォームを介して、売り手と買い手、あるいはユーザーといった利用者間で①情報、②サービスや製品、③対価(通貨、あるいは”いいね”などのアテンション)の交換、やりとりが行われる。プラットフォームでは利用者の数が増えることで、利用者が交換される情報やサービスから得るメリット、効用が増える。そしてそれがさらに利用者が呼び込むことで成長するというポジティブなスパイラルが形作られ、劇的に成長していく。いわゆるネットワーク効果だ。

アマゾンで言えばネットワーク効果は具体的にはこんな感じだろうか。(ベゾス氏がナプキンに描いたとされる好循環の図にレビュー部分鈴木加筆)

一方で、フェイクレビューにより、プラットフォーム上でやりとりされる情報の質、価値が損なわれることがあれば、プラットフォーム自体の価値も損なわれる。顧客満足が下がり、顧客離れが進むことで、図のスパイラルはネガティブな方向に反転し、規模が一気に縮小することもありえる。

デジタル社会における「信頼」のつくり方

プラットフォームはいわば「信頼ビジネス」なのだ。

過去、信頼は国や立派な金融機関といった中央集権的な第三者の権威に依存していた。その信頼関係を水平に拡げたのがプラットフォームビジネスだし、その信頼を支える大事な仕組みの一つがユーザーレビューだ

そのため、プラットフォームの主催者、プラットフォーマーはプラットフォームの価値を毀損させないよう、例えばやり取りされる情報をキュレーション/フィルタリングして質を担保することになる。おすすめのレコメンデーションや、ユーザーレビュー評価点の計算アルゴリズムなどがそれだ。食べログのユーザー評価の訴訟問題(アルゴリズム「異例の開示」の食べログ訴訟、ユーザー評価をどう読み解くか)はまさにこのフィルタリングに関わるものだった。

今回のアマゾンの訴訟はレビューのフィルタリングだけではなく、そもそものフェイクレビューの発生源を断とう、というものだ。裏を返せば、フィルタリングなどのテクノロジーによる対応では偽物と判断できないほど完成度の高いフェイクレビューが巧妙かつ組織的に作成されるケースが多発していることを示唆している。

デジタル社会のインフラであるインターネットの利用率は日本でも2020年の時点ですでに50歳代で95%、60歳代で83%、70歳代でも60%に達している。このままいけば利用率が全世代で90%を超える日も遠くないだろう。デジタルでなければコトが進まない世の中に私たちは生きている。

信頼をいかに構築するか、という課題はプラットフォームに留まらずデジタル社会に共通の課題だ。例えば、ビットコイン(ビットコインの思想的インパクトー「信頼」をどうつくるのか)はブロックチェーンというテクノロジーを使っていかに信頼を作っていこうという画期的な試みだった。

改めてデジタルが駆動する社会でどのように信頼を作っていくのか、という極めてアナログ的(?)で人間臭い課題がますます重要になってきている。

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