混乱の米国、繁栄のロシア・中国
日本の景気減速の一因は、米国への輸出減少にあるようだ。輸出統計によれば、米国への輸出額は昨年度に比べ11%以上落ち込んでいる。その背景には、昨今の米国住宅市場の急激な失速がある。住宅価格は昨年に比べ20%以上、下落しており、30%の落ち込みが報告されている地域もある。
New York Times紙の記事によれば、カリフォルニアの中央部に位置するメルセド市は、激しい盛衰を経験したようだ。過去2年間で、住宅価格の平均値が約37万5000ドルから約15万ドルへと半減し、今や、住宅所有者の85%以上が、住宅価値以上のローンを抱えている。この傾向は、カリフォルニア州で最も顕著であるものの、米国各地、似たり寄ったりの状況である。つまりは、米国において、日本製品に費やすことができる可処分所得が減少しているのだ。
米国発のこの経済不安が続く限りは、世界経済回復の手立てはないようにも思われるが、日本に関していえば、貿易面で数多くの好材料が存在する。ロシアや中国への輸出は依然、飛躍的に伸長し続けており、例えば、ロシア向け輸出は、昨年46%拡大した。 Wall Street Journal紙は、ロシアとの貿易により、島根県といった地方都市がその恩恵を享受していることを紹介している。記事によれば、島根県の浜田港では、2007年輸出額は04年の3倍に増加している。06年には、ロシアの輸入額の5.6%は日本が占め、ドイツ・中国に次ぐ主要輸入相手国となっており、こうした輸出の拡大は、島根県のように、経済が停滞しがちな地域に予期せぬ繁栄をもたらしている。
ロシアの新富裕層は、レクサスや薄型パネルTVと同様に、「1kg当たり485ルーブル・1ポンド当たり9ドルという価格の、大きな、甘い日本産りんご」など、良質の日本製品に価値を見出している。ロシア等、購買力を増している国への製品輸出は、日本にとって、大きな収益源となる可能性がある。
また、日本から中国への輸出も伸び続けており、昨年は17%上昇した。今や、中国は、日本にとって、米国以上に重要な最大輸出相手国となっている。中国経済が今年少々失速したとしても、東アジアとの貿易の重要性はますます高まり、日本経済を活性化するだろう。日本のアジア諸国向け輸出額は、8年前は輸出総額の42%だったが、現在は50%以上を占めるまでになった。アジア諸国の生活水準は上昇を続けており、将来的には、輸出全体におけるアジアの構成比は更に拡大するとみられる。
景気を下支えするのは、アジア諸国からの観光客
しかし、日本経済を支えているのは、アジア諸国への輸出のみではない。アジア諸国は、日本の観光産業の収入源でもある。 New York Times紙の記事によれば、アジア諸国から観光客が大勢来日し、代表的なショッピングエリア・銀座から、自然溢れる知床国立公園まで、日本各地を訪れている。実際に、有名百貨店は、中国語を話せる店員を雇い、レジには中国通貨を常備し始めた。
アジア諸国からの観光客数は飛躍的に増加しており、韓国、台湾、中国、香港から日本への昨年度の訪問者数は、5年前の約2倍の536万人に達した。訪問者総数に占める割合は3分の2以上であり、アジア諸国の生活水準上昇が続けば、日本は今後も数多くのアジア人にとって、魅力的な観光地であり続けるだろう。
便利でニーズのある製品開発に向けた革新を続けること、ロシアや中国といった成長国への輸出を着実に拡大すること、観光地としての魅力を維持すること−こうしたことが、米国のような大国の経済的混乱を交わす手立てになるはずだ。(英文対訳:岩田あさみ)