3月31日特保茶飲料・伊藤園の力業
特定保健用食品、略して特保。「特別用途食品のうち、食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取により、当該保健の目的が期待出来る旨の表示をする食品」として厚生労働省が認可。その中でもPET容器の茶飲料で熱い戦いが繰り広げられている。
高濃度カテキンで体脂肪の低下を促進するという特徴で爆発的ヒットを記録した、花王の「ヘルシア緑茶」。350mlで189円という強気の価格。独特の渋みと苦みは効果をなんとなく体感させるものの、さすがに飲みにくいという声に対し、「ヘルシア緑茶まろやか」も投入。
それを追うのがサントリーの「黒烏龍茶」だろうか。ウーロン茶重合ポリフェノールが食事の脂肪吸収を抑え、食後の中性脂肪の上昇を抑えるという。食中・食後にすかさず飲用すれば、なんとなく脂っこいものを食べちゃった罪を帳消しにしてくれそうで頼もしい。価格も170円とヘルシアより気持ち、買いやすい。さらにサントリーは血圧が気になる人もターゲットとしてしっかり商品を投入している。「胡麻麦茶」。胡麻ペプチドの働きで血圧低下が期待できるという。168円。
上記がコンビニエンスストアなどで、だいたい店頭に並んでいるラインナップなのだが、少々チャネル支配で劣後しているとはいえ、それ以外の各社も戦いに参戦している。
アサヒ飲料のおなじみ十六茶は、食物繊維(難消化性デキストリン)が糖の吸収をおだやかにし、食後の血糖値上昇を防ぐという「食事と一緒に十六茶」を250mlで140円という買いやすい価格で投入している。
血糖値対策では、カルピスがウーロン茶タイプの「健茶王」を240ml入り124円。緑茶タイプの「健茶王緑茶」を400ml入り170円で参戦している。
体脂肪、中性脂肪、血圧、血糖値と健康が気になるお年頃としては全部飲みたくなってしまうのだが、自ずと人間が摂れる水分量には限界がある。お茶ばかりガブガブ飲んでもいられない。つまり、特保茶飲料の戦いは、健康が気になる人々の、1日に摂取できる水分の中にいかに自社製品を潜り込ませられるかの勝負といってもいいだろう。
その意味からすると、ものすごい力業を挑んできたのが、茶飲料の老舗、伊藤園だろう。特保飲料では上記の「食事と一緒に十六茶」「健茶王」と同じ難消化性デキストリンによる血糖値対策になる「緑茶習慣」を持っている同社だが、イマイチその商品認知度は低く、同じカテゴリーに複数の競合が存在するという状況にあった。それが、「コレステロール」、特に「悪玉コレステロール」を退治できるという、気になる人には、天の助けのような商品を投入してきた。
「カテキン緑茶」。「カテキンの中でも強力なガレート型カテキンを伊藤園独自の製法で高含有」という、何ともありがたいコピーが飲まずにはいられなくなる。350mlで168円。しかし、伊藤園の力業は推奨する飲み方にある。何と1日2本。今までの特保飲料は1日1本で、「多く飲んでも効果が出るわけではない」というのが半ばお約束だったと言えるだろう。それが2本だ。168円×2本。決して安くはない。また、筆者のように既に「ヘルシア緑茶」と「黒烏龍茶」を併用しているようなユーザーもいるだろう。さすがに1日4本は飲めない。
さて、その伊藤園の力業である「2倍戦略」が吉と出るか凶と出るか。ただ、今までどの企業も実現できなかった「コレステロール対策」という、オトナの大きな関心事に道を開いているのがポイントではないだろうか。他が誰もできなかったソリューションを高い価格で提供しして支持されるというのは、BtoBの世界では一つの成功法則だ。それが飲料というコモデティーの世界でどこまで通用するか、しばらくウォッチしてみたい。(とりあえず今日、2本飲みながら)。