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新刊「人生の座標軸」堀義人 —家族人 (3/6)

投稿日:2014/04/04更新日:2019/04/10

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では次に、家族人としてのお話をしたい。我が家にはファミリー理念というものがある。以前、YEO(YoungEntrepreneurs'Organization:青年起業家機構)アジア代表になって初めて参加したユニバーシティーで、ある起業家がこんな話をしていた。「私は起業家としては成功したが家族は崩壊した。家族人としては失敗した。それについて色々な人に相談して、ふと分かったことがある。ある人に、“お前は起業家として経営チームを集めて、経営理念、経営戦略、そして経営計画も懸命につくったじゃないか。同じことを家族でやったか?やらなくては駄目だ”と言われた」という話だった。

ファミリー理念と家族における目標管理

「あ、そうか」と思った。たしかに僕は会社ではビジョンや理念について語っている。その理念に従って、MBO(ManagementbyObjectives:目標管理制度)を設定し、採用を行い、チームをつくるということを懸命に行っている訳だ。しかし家族ではそれをしていなかった。そこで、きちんとした家族理念をつくろうと考えた。ファミリープランをつくるため、ファミリー理念もつくっていこうということだ。

そこで、「どのような教育を行うか」、「家族として何を大事にするか」といったことをパートナーと一緒に考え、明文化していった。堀家には家訓というものもなかったが、親や祖父母から貰った大切な言葉に自分たちが大切にしていきたいと考えていたことを加え、5つの理念とした。うちの場合、最も大切にしているのは「野生」というか、生命力だ。逞しく生きていく力を養わせたい。ではそのために何が一番大切かというと、試練だ。可能な限り多くの試練を与える必要がある。ただし、そこに愛情がないと苛めているだけのようになってしまう。従って、しっかりと愛情を持って、何故そういった試練を与えているかも伝えていかなければいけない。

教育において囲碁を重視する理由

そこで囲碁が最も有効になると思っている。小さい頃から同じスポーツ種目ばかりやらせてしまうと体が固まり過ぎてしまうけれども、囲碁ではそういうことがない。囲碁は頭のスポーツだ。集中力や論理性を養うことが出来るといった、色々な効果があるし、そして何より負けるという経験が出来る。囲碁を打っていれば半分は負ける。負けないことはあり得ない。で、負けると大人でも泣きたくなる。プロ棋士でも負けて悔しいから泣く。麻雀には運の要素があるから、負けても、「ああ、運が悪かった」と言い訳出来るが、囲碁には運の要素がほとんどない。だから負ければ辛い。

そこで僕は子供達に、「何故負けたんだと思う?」と聞く訳だ。すると、「うーん…、弱いから」と答える。で、「じゃあ、どうすればいいと思う?」と聞くと、「頑張る」という答えが返ってくる。これだ。負けてもなお頑張るという、不屈の精神を養う。子供がお稽古ごとで上達したら「上手だね」と褒める親もいるが、それでは意味がない。ぎりぎりのところで勝つか負けるかの真剣勝負を、テレビカメラも入る全国大会決勝の舞台で経験させる。小さい頃からそんな経験を積ませる。囲碁以外でも海外へ行かせたり体を鍛えさせたり、色々な形で可能な限り試練を与える必要があると僕は思っている。

会社でも同じだ。一番良くないのは甘やかすこと。子供が可愛くないのなら過保護に育てたらいい。そうすれば子供は弱くなる。会社でも一番悪いのは社員に対して過保護になることだ。そうでなく、子供のためにも試練を与え、生きる力を養っていくことが最も重要だと思う。それで堀家では囲碁と水泳と英語を必修科目として、小学生のうちからやらせている。5人もいるとあれこれとは出来ないから、「これは必修」ということで、3〜5人まとめて囲碁サロンやプールに連れていったりしている。そしてさらに中学生になったら何かスポーツをさせて、高校生になったら1年間留学をさせる。で、さらに「大学か大学院どちらかで海外に行きなさい」と言っている。そんな風に、「これだけはやりなさい」という方針を掲げ、そのうえで「あとはもう自分の考えるまま、好きなように生きていい」と言っている。それが堀家の教育方針だ。

そんな訳で家庭にもMBOを導入した。「自社でMBOを導入している」という方は(会場多数挙手)、…かなりいらっしゃる。それを家でもやっている。正月に家族全員が集まり、たとえば僕に何をして欲しいか、皆から自由な意見を出して貰う。子供たちについても、それぞれ「これが出来ている」「これが出来ていない」と、皆で話し合う。それを基に1年間頑張って、1年後にまた見直す。そういうことを毎年やっている。

次男の要望で経営者でありながら「週3日」家で食事をすることに

たとえば、僕はそのなかで次男に言われたのが、「もっと家で食事をして欲しい」ということだった。「分かった。じゃあ、どれぐらいすればいい?」と。MBOでは定量化が大変重要だ。すると「週3日」と言う。だから「週3日は家で食事をする」という目標設定を行って、それに従って1年間を過ごした。すると1年後にその目標が達成出来た。だからその翌年は上方修正を行って週4日とした。週4日は大変だ。たとえば1週間海外へ出張するとマイナス4になる。それをゼロにするには4週間に渡って週5日、家で食事をしなければいけない。しかも、グロービスは、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、そして上海とシンガポールにもある。僕はそこへ行かなくてはいけない。だから今日も家で食事をしてからこちらへ来た。とにかくそんな風にして今は週4日、家で食事をしながら家族と会話をしていくという努力をしている。

ただ、子供というのは中学生にもなれば「親父うざい」となるものだ。皆さんもご経験がおありだと思う。従って、小学校のときにどれだけ多くの時間を一緒に過ごしたかが大事になる。そこでしっかりと時間を共有すれば、反抗期があってもその後はまた元の関係に戻ることが出来るのではないかという気持ちがある。今は5男が小学2年生だ。小学校卒業まで4年しかないから、その時間は大事にしたい。それ以降は、恐らくそれほど時間を使わなくても育っていくのではないかと思う。今この時間の感覚を大事にしながら、家族人としての役割をしっかり果たしていくつもりだ。

写真撮影:東洋経済新報社・尾形文繁

講演者

  • 堀 義人

    グロービス経営大学院 学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

    京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事を経て、1992年株式会社グロービス、1996年グロービス・キャピタル設立。2006年グロービス経営大学院を開学。2008年に「G1サミット」を創設。2011年には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げる。2016年に茨城ロボッツ、2019年に茨城放送オーナー就任。2022年にLuckyFesを立ち上げ、現在総合プロデューサーを務める。2024年よりBARKSオーナー、世界最大のPR会社の米国エデルマン社 社外取締役。

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