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Uberは4.8兆円の価値があるのか?

投稿日:2015/05/21更新日:2021/11/30

 

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Uberのホームページ

お騒がせスタートアップのUberが昨年12月に$41bn(約4.8兆円)の評価額で$1.2bnを調達しました。それだけでも十分に驚きなのですが、その1カ月後にさらに$600 mn(エクイティ)と$1.6 bn(転換社債)を調達したと聞き、もう完全に異次元の領域に入っています。

Uberは2009年の創業以来、エクイティで$3.3bn、デッドも含めると$4.9bnを調達しており、その調達規模はFacebook(上場前に$2.4bn調達)やAlibaba(同$2.7bn)でさえ大きく上回っています。

また、4.8兆円という時価総額は、自動車メーカーでいうとすでに世界9位の地位で、テスラ(3兆円)はもちろん日産(4.7兆円)でさえ抜き去ってしまっています。(もちろんUberはメーカーとは異なるビジネスモデルですが)

Apple(78兆円)、google(42兆円)、Facebook(25兆円)といったインターネットの巨人にはまだ追いつかないものの、創業5年ちょっとでここまで伸びたのは驚異的です。
しかし、果たして本当にそんな価値があるのでしょうか?

4.8兆円の妥当性はあるのか?

公開情報のみでUberの価値を試算してみたいと思います。

まず、昨年11月にリークした(させた?)情報によると、Uberの総売上高(流通総額)は2015年末に$10bnに達しているだろうという予想が出ています。また、このときの成長率は年間300%と予想されています。

Uberは総売上高の20-25%を手数料としてドライバーから徴収しており、これがUberの売上高になります(2015年末には$2-2.5bn)。よって、$41bnの評価額は、Forward PSR(株価売上高倍率)の16-20倍です。FacebookのForward PSRが12.6倍、Twitterが11.2倍、Tencentが10.5倍なので、Uberの16-20倍は少し高めと言えます。しかし、年率300%成長しているのであれば、十分あり得る数字だと言えます。(財務データは全てSpeeda)

また、この推計の前提となっている総売上$10bnと成長率300%という数字ですが、これも現実的な数字だと思います。CEO Travis Kalanick氏によると、UberはSan Franciscoだけで既に$500 mnの総売上を叩き出しているようですので、すでに250都市に展開していることを踏まえると今年末までにその20倍の数字は十分に可能だと思います。また、成長率300%に関しても、San Franciscoが年率3X、New Yorkが4X、Londonが5-6Xで成長しているというデータがありますので、これも有り得る数字でしょう。

非常にざっくりした試算ですが、売上や成長率を踏まえると4.8兆円の時価総額には妥当性があると言えます。また、投資家は優先株式で投資しているでしょうから、リスクはある程度抑えられているはずです。

Uber CEOは将来は全て自動運転車に変えると公言

これほどの大型資金調達を支えるUberの成長ストーリーはどんなものでしょうか。

短期的にはUberのターゲットは世界のタクシー市場という巨大なものです。タクシー市場は、日本1.7兆円(Speeda)、アメリカ$11 bn(1.3兆円)、イギリス£9bn(1.6兆円)もあります。世界市場のデータが見つからなかったのですが、これら3カ国が世界に占めるGDPから推計すると、世界では約12兆円の規模になります。Uberはまさにこの市場を取るべく、すでに50カ国259都市に進出しています。

しかし、長期的にはUberの狙いはタクシー市場の置き換えに留まりません。本当の狙いは、都市部におけるヒトとモノの移動の全てを握ることだと思います。そしてそれを可能にするのが、現在開発が進められている自動運転技術です。

自動運転技術は今後5-6年で本格的に普及し始めるようになるはずです。TeslaのCEO Elon Musk氏は、Teslaは2015年には走行距離の90%を自動運転で走れるようになると発言しています。Google Carはすでに100万マイル以上を無事故で走行した実績を持っています。懸念されていた法律面でも進捗があり、昨年9月にはAudiがカリフォルニアの公道で自動運転車をテスト走行する許可を世界で初めて得ました。2020年には1000万台の完全自動運転車が販売されるというデータもあり、自動運転技術は遂に現実のものになりつつあります。

自動運転車が実用化された暁には、Uberを全て自動運転車に置き換える、とUber CEO Kalanik氏は公言しています。コロンビア大学の分析によると、マンハッタンのタクシー需要は9000台の自動運転車で全て賄うことができ(現在の1.3万台の約2/3)、そのときの平均待ち時間は現在の5分から36秒に、費用は現在の$4/mileから$0.5/mileになると予想されています。自動運転技術により、Uberは今よりも便利に安価に移動手段を提供することができるようになります。

圧倒的な利便性とコストメリットにより、ほとんど全ての移動はUberを使うことになるでしょう。Uber網が発達している都市部においては、自家用車が不要になり、公共機関のニーズも激減するはずです。また、Uberが香港で実験している宅配サービスを本格的に展開してくると、既存の宅配サービスも置き換えてしまうかもしれません。

ここまで来るとUberの破壊的イノベーションはタクシー業界に留まらず、完成車、自動車保険、公共機関、宅配市場、駐車場、オートローン、修理工場、中古車など多岐に及びます。もちろんすべてを置き換えるわけではないですが、寡占を築いたUberが利益の大半を持っていくというシナリオは有り得ると思います。

Uberが次々と大型調達を決めている背景にはそんな成長ストーリーがあるのだと考えています。

 

※  本記事は湯浅エムレ秀和の個人ブログから転載したものです(初出: 2015年1月28日)

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