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VCに「溝越え」挑戦機運、時間・資金かけ大きく育てる

投稿日:2015/03/26更新日:2019/04/09

(2014年7月24日付け日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

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日本の新興市場のユニークさは何といっても時価総額が20億円程度の小粒な企業でも新規株式公開(IPO)できる点だろう。これは世界にほぼ類を見ない。日本のベンチャーキャピタル(VC)の投資戦略は、この特徴を最大限に生かし、上場できそうな企業に幅広く分散投資して、利益確定を優先し、小粒で未熟な企業でもIPOさせてリターンを得るのが典型。リスクを抑えた安全志向型だった。

一方、株式市場の中心的役割を担う機関投資家は時価総額が少なくとも100億円以上、基本は300億円以上の企業でなければ投資しないと言われている。日本の新興市場は小さくIPOを生めるのはよいが、その後、機関投資家の眼鏡にかなう規模に成長するまで経営陣が株価を気にするあまり、大胆な成長戦略を遂行できずに失速し、IPO後に投資家が続けず、VCも売却に苦労する図式も散見される。

いかにこのキャズム(溝)を越えるか。これがVC業界の課題だったが、そのための新たな取り組みが始まった。IPOはいつでも可能だが、あえて時間と資金をかけて大きく育て、利益もがっちり大きく取るという投資スタイルだ。

最近、2件の大型ベンチャー投資が発表された。スマートフォン(スマホ)向けゲーム開発のgumi(東京・新宿)は4日、ベンチャー投資・育成会社のWiLやセガネットワークス(東京・港)を中心に50億円の調達を発表。弁当宅配サイト「ごちクル」のスターフェスティバル(東京・港)も同日、アスクルとの総計28億円規模の資本・業務提携を発表した。

これらの企業は未公開ながら100億円超の企業価値での資金調達だった。今年に入り10億円以上の資金調達を発表したベンチャーは10社近くあり、新興VCや大企業が資金の出し手の中心だ。

VCは大きな資金で、じっくり伴走期間をとるほどリスクは高まるが、それをヘッジするために投資手法を進化させてきた。優先株を利用した投資契約で、高いバリュエーションを付けて投資を行うVCの権利保護が強化されている。

例えば、経営の重要事項に対する事前確認や承認、取締役会への社外取締役やオブザーバーの派遣、清算やM&A(合併・買収)時における投資額の優先回収の権利などだ。これらの条項は大きく投資したにもかかわらず、投資後の経営が順調ではないケースでも、投資回収のリスクを減らす役割を果たす。

大きく育てる観点では、社外取締役の選任や外部識者の経営参画なども活発化させている。スターフェスティバルはアスクルからの増資と同じくして、社外取締役として元楽天最高財務責任者(CFO)の高山健氏を招聘(しょうへい)し、経営体制を強化した。

グロービス・キャピタル・パートナーズも経営陣組成のためのヘッドハンティング活動や採用セミナー、大企業との資本・事業提携の斡旋(あっせん)、PRやIRなどのブランディング活動支援といった経営支援を拡充させている。日本のVCとしても「大きくリスクを取って、じっくり大きく育てる」成功事例を創り出し、起業大国ナンバーワンを目指して、ベンチャーエコシステムを進化させるキャズムを越えていきたい。

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